2023.7.9
こんにゃくスポンジが教えてくれた、美しく生きるために必要ないくつかのこと
ドラマ化もされた『死にたい夜にかぎって』で鮮烈デビュー。『クラスメイトの女子、全員好きでした』をふくむ3か月連続エッセイ刊行など、作家としての夢をかなえた著者が、いま思うのは「いい感じのおじさん」になりたいということ。これまでまったくその分野には興味がなかったのに、ひょんなことから健康と美容に目覚め……。
前回は苦手だったのに、美容と健康に興味を持ち始めてから好きに変化したドラッグストアにまつわるお話でした。
今回の「苦手」にまつわるエピソード。子供の頃からずっとずっと苦手だったという「こんにゃく」が美容生活にやってきた。
（イラスト／山田参助）
第24回 私の人生はいつだってこんにゃくと共にある
こんにゃくが苦手だ。子供の頃からずっと苦手である。味がどうとかそういう問題ではなく、こんにゃくの存在意義が私にはわからない。もはや〝苦手〟を通り越して〝恐怖〟でさえある。
何がダメかといえば、プルンとした弾力のある食感がどうにも気持ち悪い。それに加えて、こんにゃく特有の生臭いニオイも何とも堪えがたいものがある。なぜこれほどまでに食べにくいものをわざわざ食す必要があるのか。こういういらんでもいい「食欲」がいつか人間を滅ぼすのではないか。私は本気で心配している。
いろいろと御託を並べてきたが、結論を言えば、自分の頭で理解ができぬ食べ物を口にすることほど恐ろしいことはない、ということだ。そういうわけで、大人になった今でも、私はこんにゃくが大の苦手である。
まさか、そのこんにゃくが、私の生活に欠かせないものになるなんて。正しくは〝こんにゃくスポンジ〟ではあるのだが。
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こんにゃくスポンジとは、その名の通り、こんにゃくの繊維を使って作られたスポンジである。お肌の汚れの原因となる皮脂、角質、角栓は弱酸性の物質で、それを弱アルカリ性のこんにゃく繊維で洗うことで中和反応が起き、毛穴の奥に詰まった汚れが根こそぎ洗い流されるのだという。
おお、細かい仕組みはわからんがとにかくすごい自信だ！ こんにゃくが美容にいいというお噂はかねがね伺っていたが、こんにゃくへの苦手意識が邪魔をして、今まで意図的にスルーをしてきた。が、なあに、食べるわけではないのだ。ここらで覚悟を決めてこんにゃくスポンジとやらを購入してみよう。
いざ調べてみると、その種類のなんと多いことか。百円ショップで買えるようなお手軽なものから、東北の農場で手間暇かけて作ったという触れ込みの何千円もする高級品まで多種多様な品揃えである。
変に背伸びはしたくないが、せっかく買うのなら安物は避けたい。ということで1500円ぐらいの少し値の張るものを通販サイトで購入。天然こんにゃく成分百パーセントに加え、抗菌作用のある緑茶エキスまで含まれた逸品である。
それほど必要がないことがわかっていても、無駄に防水機能がついた時計を買ってしまうのが童貞特有の習性だと私は思う。それと同じく、化粧品やパックなどを購入するときは、米ぬかやら海藻エキスやら、何かしらの成分がプラスアルファされたものをついつい買ってしまう。美容に関しては、いまだ童貞の域を抜けきれぬ四十四歳のおっさんである。
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