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「いびき対策アプリ」で己のいびきを知る。そして人生について考える

爪切男、四十にして惑う?
ドラマ化もされた『死にたい夜にかぎって』で鮮烈デビュー。『クラスメイトの女子、全員好きでした』をふくむ3か月連続エッセイ刊行など、作家としての夢をかなえた著者が、いま思うのは「いい感じのおじさん」になりたいということ。これまでまったくその分野には興味がなかったのに、ひょんなことから健康と美容に目覚め……。

前回は祖父との思い出が詰まったお酒「養命酒」のエピソードでした。
今回は、「いびき」について。男性に限定すると41.5%にものぼり、とくに中高年男性では、毎日のようにいびきをかく人が多くみられるというもの。爪さんもそんないびきに悩まされ……。

(イラスト/山田参助)

第10回 「いびき対策アプリ」で己のいびきを知る。そして人生について考える

 古今東西、老若男女を問わず、いびきに悩まされている人は非常に多い。
 パートナーのいびきがうるさいという理由で家庭内別居、果ては離婚にまで発展するケースも珍しくないらしい。
 自身の体調面だけでなく、対人関係の面でも大きなトラブルを引き起こす。いびきとはげに恐ろしき社会問題なのである。

 無論、私とて例外ではない。
 先日、十年以上お世話になったアパートを引っ越すことになり、近所に住む大家の婆さんに挨拶に行ったところ「クマさんみたいに大きないびきが聞けなくなるのは寂しいわね」と思いもよらぬことを言われた。
 壁が薄いことも手伝ってか、夜な夜な響き渡る私のいびきは、このアパートのちょっとした名物だったらしい。
 隣の部屋のミュージシャン志望の男に「今まで私のいびきで迷惑をかけてすみませんでした」と頭を下げると、「いいですよ。おかげでこっちも何にも気にせずにギター弾きまくれたんで」と笑顔を返してくれた。
 まったく人生とは、自分の知らない所でだけドラマが起きている。

 しかし、私のいびきは本当にそこまでひどいのだろうか? ここは一度、自分のいびきと真剣に向き合ってみる必要がある。
 そこで私は、スマホの〝いびき対策アプリ〟なるものの力を借りることにした。
 使い方はいたって簡単、録音開始ボタンを押し、枕元にスマホを置いて眠るだけ。あとは朝になれば、自分のいびきが記録された音声ファイルと、時間帯によってのいびきの大きさを可視化したグラフまで作成されるという優れものだ。

 一晩ぐっすりと寝たあとで、さっそくデータを再生してみる。子供の頃、テープレコーダーに録音した自分の声を初めて聴くときの、あの胸の高鳴りを思い出す。さて、私のいびきはいったいどんな按配だろうか。

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爪切男

つめ・きりお●作家。1979年生まれ、香川県出身。
2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)にてデビュー。同作が賀来賢人主演でドラマ化されるなど話題を集める。21年2月から『もはや僕は人間じゃない』(中央公論新社)、『働きアリに花束を』(扶桑社)、『クラスメイトの女子、全員好きでした』(集英社)とデビュー2作目から3社横断3か月連続刊行され話題に。
最新エッセイ『きょうも延長ナリ』(扶桑社)発売中!

公式ツイッター@tsumekiriman
(撮影/江森丈晃)

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