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1年間で30キロ痩せた男が夢見る、ちょっと素敵な未来のお話

爪切男、四十にして惑う?
ドラマ化もされた『死にたい夜にかぎって』で鮮烈デビュー。『クラスメイトの女子、全員好きでした』をふくむ3か月連続エッセイ刊行など、作家としての夢をかなえた著者が、いま思うのは「いい感じのおじさん」になりたいということ。これまでまったくその分野には興味がなかったのに、ひょんなことから健康と美容に目覚め……。

前回は最大80デシベルを記録したという地獄のような「いびき」の改善について。
今回は今年最後の更新ということで、実際にこの1年、どれだけの変化があったのかを証拠写真つきでお伝えします。クリスマスにふさわしい、素敵な話もありますよ。

(イラスト/山田参助)

第11回 恋する太っちょゴブリン、新しい冒険の旅に出る

 痩せた。
 とにかく痩せた。
 この1年とちょっとで30キロ近く体重が減った。
 これはなかなかに劇的な変化である。人間に換算すると小学校低学年の子供一人分ぐらいは痩せたことになる。
 
 一時期は130キロに迫る勢いだった体重も、現在では95キロ近辺をゆるやかに上下している。身長168センチの成人男性の適正体重は約62キロ。データ上はまだまだ〝肥満〟の域を脱していないが、まるで背中に羽根が生えたかのように、普段の生活が軽やかになった。
 
「もはや別人じゃないですか!」と大袈裟に驚く人、「隠さずに言ってくれ。悪い病気にかかってるんだろ?」と真剣に心配してくれる友人、「お金に困ってるなら仕事振りますよ」と変な気を利かす編集者。「それ以上痩せないでください……」と目をウルウルさせて訴えてくるファンの方。
 会う人会う人が何かひとこと言わずにはいられないぐらいに、私の見た目は大きな変貌を遂げている。
 
「どうやって痩せたのか教えてください」と聞かれることも増えたが、これが申し訳ないぐらいに何もしていない。運動らしい運動といえば毎日の散歩ぐらいだし、「糖質制限ダイエット」のような流行のものにも一切手を出していない。唯一やったことといえば、愛する炭酸飲料に別れを告げ、ルイボスティーを愛飲し始めたことぐらいだろうか。
 
 炭酸飲料を飲むのをやめただけで30キロ? 待て待て、お前はいったいどれだけ炭酸飲料を飲んでいたんだと問われれば、1日に3~5リットルのシュワシュワを胃の腑に収めていたわけである。砂糖の量に換算すると世にも恐ろしい数値になるだろう。
 
 飲み物が変われば食の嗜好も変わるのかといえば、それが意外とそうでもない。「バカが食べるメニュー」として有名な富士そばのカレーかつ丼や、やよい軒のミックスとじ定食(ご飯のおかわり無料)、ローソンのからあげクン、深夜のラーメンなど、今までと何ら変わりなく、食べたいものを食べたいときに食べたいだけ口にする毎日を送っている。それなのに体重はみるみる落ちていく。
 どうやら私の場合は、食事量を減らすことよりも砂糖の摂取量を減らすことの方が効果的だったみたいだ。
 
 文章だけでなく写真で比較していただくのがわかりやすいかと思うので、私のビフォーアフターも掲載しておこう。

【Before(左)】130キロに迫る勢いだったころ。【Afterアフター】いまは95キロ前後をキープしている。
【Before(左)】130キロに迫る勢いだったころ。【Afterアフター】いまは95キロ前後をキープしている。

 見た目の質感はもちろんのこと、明らかに肌ツヤに雲泥の差が見受けられるのがお分かりいただけるだろうか。だからと言って太っているときの自分が嫌いかと言われればそうではない。これはこれで丸っこくて可愛いじゃないかと自画自賛しておこう。昔があるから今がある。私はいかなるときも過去の自分を否定したくない。

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新刊紹介

爪切男

つめ・きりお●作家。1979年生まれ、香川県出身。
2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)にてデビュー。同作が賀来賢人主演でドラマ化されるなど話題を集める。21年2月から『もはや僕は人間じゃない』(中央公論新社)、『働きアリに花束を』(扶桑社)、『クラスメイトの女子、全員好きでした』(集英社)とデビュー2作目から3社横断3か月連続刊行され話題に。
最新エッセイ『きょうも延長ナリ』(扶桑社)発売中!

公式ツイッター@tsumekiriman
(撮影/江森丈晃)

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