よみタイ

こんにゃくスポンジが教えてくれた、美しく生きるために必要ないくつかのこと

 改めて言うことではないが、通販はいい。商品の到着を今か今かと待ち焦がれる胸のワクワクは、他ではなかなか味わえない。
 思い返せば、ひどいニキビに悩まされていた学生時代にも、怪しい美容品を通販でよく買っていた。その中でも群を抜いて怪しかったのが、「絶世の美女」として知られるエジプトの女王クレオパトラが愛用していたというかいこの繭で作った洗顔パフだった。クレオパトラと私の肌質が違い過ぎたのか、バッタもんを掴まされたのかは定かではないが、そのパフのせいで私のニキビはさらに悪化したのであった。青春時代の苦い思い出であるが、私は今、あの頃と同じ心持ちでこんにゃくスポンジの到着を首を長くして待っている。

 今回購入したのは、顔も体も洗える全身用のボディスポンジだ。実際に届いた商品は、従来のこんにゃくのイメージとは違い、カッチカチに固まった真っ白なスポンジだった。お湯につけてフニャフニャに柔らかくしてから使用せよと説明書には書いてある。子供の頃、お婆ちゃんに作ってもらったヘチマたわしを思い出す。お風呂だけでなく、食器洗いに掃除にと何から何まで、我が家ではとにかくヘチマたわしを使っていた。ヘチマに蚕にこんにゃくと、私はいろんなもので自分の体を洗って生きている。
 洗顔ネットを使った丁寧な洗顔は日頃から心がけているものの、体の方に関してはボディタオルでチャッチャッと洗って「はい、おしまい」という感じにお粗末にやってきた。人目に晒される顔だけでもツルツルのお肌でいられたら幸せだと思っていたが、「ここまできたら全身ツルツルになりたい!」という新たな欲望が私の中に芽生えてしまった。

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 こんにゃくスポンジの使い方としては、力を入れ過ぎずに優しく洗うことが何よりも大切だ。長時間洗う必要はなく、2、3分程度洗えばそれで充分らしい。
 洗浄力が高いこんにゃくスポンジは、ボディソープなどを使わなくても体の汚れをしっかりと落としてくれるが、心配性の私は、ちゃんと洗剤をつけて洗ってみる。
 体だけでなく、肘や膝の黒ずみにも効果があるとのことで、その辺りも丁寧にゴシゴシ。
湧き上がる探求心を抑え切れず、陰部周りも念入りにゴシゴシ。おじさんは体中全部スベスベになりたいのだ。

 さあ、ここからが肝心だ。風呂を上がったら、できるだけ早く身体中に化粧水を塗りたくるのだ。広がった毛穴を化粧水や保湿クリームでしっかりとケアしてあげることが、お肌の健康を保つ秘訣なのである。化粧水にパックに水分補給にと、風呂上がりのおじさんはとにかく忙しい。
 入浴後のスキンケアを一通り終えたあと、こんにゃくスポンジを数回に分けて丁寧に水洗い。しっかり水気を取ってからタッパーに入れ冷蔵庫にイン。このように正しく保存することで、こんにゃくスポンジの効果を保つことができるのだ。浴室に放置したままだと、カビが生えることもあるので要注意である。

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爪切男

つめ・きりお●作家。1979年生まれ、香川県出身。
2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)にてデビュー。同作が賀来賢人主演でドラマ化されるなど話題を集める。21年2月から『もはや僕は人間じゃない』(中央公論新社)、『働きアリに花束を』(扶桑社)、『クラスメイトの女子、全員好きでした』(集英社)とデビュー2作目から3社横断3か月連続刊行され話題に。
最新エッセイ『きょうも延長ナリ』(扶桑社)発売中!

公式ツイッター@tsumekiriman
(撮影/江森丈晃)

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