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“初期衝動”を保ち続ける男、ザ・スタークラブのHIKAGEが人生を捧げた「パンク」と憧れのヒーローたち

元「smart」編集長・佐藤誠二朗によるカルチャー・ノンフィクション連載「Don't trust under 50」。
有頂天のKERA、ラフィンノーズのチャーミー、ニューロティカのATSUSHIに続く4人目のゲストはザ・スタークラブのHIKAGE。1977年のバンド結成から、今年でなんと47年目! 名古屋、そして日本のパンクシーンのパイオニアとして現在も熱い活動を続けるHIKAGEの貴重なロングインタビューだ。全4回にわたって、HIKAGEの現在、過去、そして未来に迫る。

(全4回の1回目 #1 #2 #3 #4

「バンドをやる気になったのはラモーンズのおかげ」

 パンクのはじまりについては諸説あるが、ごくシンプルに述べると、1970年代中頃にアメリカ・ニューヨークで誕生し、少しのちにイギリス・ロンドンへ渡って爆発。その波動があっという間に世界中へ広がったというのが、ほぼ事実に近い経緯だろう。

 1976年2月、ニューヨークパンクの代表格であるラモーンズがシングル『ブリッツクリーグ・バップ』でデビュー。ロンドンでは同年10月にダムドが『ニュー・ローズ』で、そして11月に真打のセックス・ピストルズが『アナーキー・イン・ザ・UK』でデビューを果たし、パンクは一大ムーブメントへと発展していく。

 そうした海外の動きを受け、日本の各都市でも先鋭的なパンクバンドが活動を開始。
 HIKAGEが1977年4月に地元の名古屋で結成した、ザ・スタークラブもその一つである。当時のメディア状況を考えると、リアルタイムで伝わってくる海外の音楽情報は限定的だったはずだが、HIKAGEはどのようにして先鋭的な新しいロック=パンクと出逢ったのだろうか。

「バンドをやる気になったのは、ラモーンズのおかげです。1976年の末に日本で発売されたレコード(ファーストアルバム『RAMONES』。本国では1976年4月発売)を聴いてみたら、ラモーンズの曲はすごくいいのに、ギターソロがなかった。当時はハードロックの時代だったから、バンドをやるなら素晴らしいギターテクニックが必要だと考えていたんだけど、ラモーンズを聴いて思わず、『これならできる』となったんです。いま考えるとラモーンズの演奏ももちろんうまいんだけど。リズムの良さとかそういうことは、まだよく分かってなかったんでね」

1977年4月に名古屋で結成したザ・スタークラブ。結成47年目を迎える今もHIKAGEのパンク・スピリットは変わらない。(撮影/木村琢也)
1977年4月に名古屋で結成したザ・スタークラブ。結成47年目を迎える今もHIKAGEのパンク・スピリットは変わらない。(撮影/木村琢也)

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 ラモーンズに感化され、ザ・スタークラブを結成したHIKAGEだが、パンクの音源自体がまだあまり日本に入ってこない時代。右も左も分からずただ、「パンクをやる」という意気込みしかなかったという。
 そして間もなく、ラジオから流れてきたある曲を聴いて、HIKAGEはさらなる衝撃を受けた。

「1977年の夏です、ラジオで初めてピストルズの『アナーキー・イン・ザ・UK』を聴いたのは。サウンドはハードロックに近いように感じたけど、曲はラモーンズと同様、俺の好きなスリーコードがバーっときてる感じ。そして何より驚いたのはジョニー・ロットンの歌い方でした。ラモーンズは好きだったけど、淡々としたジョーイの歌は、俺としてはあまり面白くなかった。だから、ラモーンズの音にピストルズの歌というのが、自分にとっては本当に衝撃で、(パンクバンドを始める)初期衝動になったのかなと思います」

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新刊紹介

佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『オフィシャル・サブカル・ハンドブック』『日本懐かしスニーカー大全』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

ツイッター@satoseijiro

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