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“初期衝動”を保ち続ける男、ザ・スタークラブのHIKAGEが人生を捧げた「パンク」と憧れのヒーローたち

アラン・ドロン、ジェームズ・ディーンからビートルズへとつながった一本の線

 パンクに衝撃を受けてバンドをはじめたHIKAGEだが、ロックとの出会い自体はもう少し早く、中学生時代にさかのぼる。
 映画が大好きだった当時のHIKAGE少年はアラン・ドロンのファンで、「サムライ」(1967年公開)などフランスのギャング映画にスーツ姿で出演する名優に憧憬の念を抱いていた。アラン・ドロンに似ていると感じて次に好きになったのが、時代を少しさかのぼり、1950年代のアメリカで活躍した映画スター、ジェームズ・ディーンだった。
 そして彼らが持つ不良っぽいイメージが、初期ビートルズへと結びついていく。

「リアルタイムではすでに解散していて、『アビイ・ロード』(1969年リリース)や『レット・イット・ビー』(1970年リリース)といった後期のアルバムが話題になっていた時期です。でも過去を掘っていくうちに、ジェームズ・ディーンのイメージが初期ビートルズのジョン・レノンに重なりました。それで、革ジャンを着て髪をリーゼントにして演っていた、ハンブルク時代のビートルズがすごく好きになったんです」
 
 ザ・スタークラブというバンド名も実は、初期ビートルズに由来している。
 ザ・ビートルズは本国イギリスでレコードデビューする前の1960年代初頭、ドイツのハンブルク巡業を頻繁におこなっており、当地にあったスタークラブというライブハウスにおける演奏はレコード化もされた。スキッフルやロックンロールを演奏していた、初期ビートルズを聴ける貴重盤として、マニアの間では有名だ。
 ビートルズファンだったHIKAGEは自分のバンド名を決める際、そのライブハウスの名にあやかったのだ。

「パンクが来るまでは、革ジャンを着込んでロックンロールをやる初期ビートルズに夢中。日本のバンドでは、その延長線上にあるキャロルですね。
 ストーンズやイギー・ポップも好きだったけどビートルズには勝てず、次にやられたのはニューヨーク・ドールズでした。サウンド面だけですけどね。ルックスは嫌いでしたから」

「革ジャンを着て髪をリーゼントにして演っていた、ハンブルク時代のビートルズがすごく好きだった」(撮影/木村琢也)
「革ジャンを着て髪をリーゼントにして演っていた、ハンブルク時代のビートルズがすごく好きだった」(撮影/木村琢也)

 1971年から1976年にかけてアメリカ・ニューヨークを舞台に活躍したジョニー・サンダース率いるニューヨーク・ドールズは、そのアティテュードやサウンドがのちのパンクに多大な影響を与えたバンドとして知られるが、ファッションは中性的なグラムロックのものだった。
 後期ニューヨーク・ドールズのマネージャーは、のちにセックス・ピストルズをデビューさせたロンドンパンクの仕掛け人、マルコム・マクラーレンだったが、そうした今では有名な逸話もリアルタイムでは日本に伝わらず、HIKAGEの耳にも入っていなかったはずだ。
 だがHIKAGEは本能的に、パンクカルチャーの本流を嗅ぎ分けていたのだろう。

 のちの時代に整理された情報だけを見ると、ニューヨーク・ドールズは1970年代前半、セックス・ピストルズは1970年代後半に活躍したバンドというイメージだが、当時のHIKAGEが体感していた実情はやや違う。

「日本に来る情報は限られていたから、ニューヨーク・ドールズを聴きはじめたらすぐにパンクも来たっていうのが、当時のリアルな感じなんです。感覚としてはほんの1、2年のタイムラグ。ニューヨーク・ドールズからラモーンズ、そしてピストルズに次々と出会った1975年から1977年のことは今でもよく覚えています。それだけ、大きな衝撃だったということですね」

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『オフィシャル・サブカル・ハンドブック』『日本懐かしスニーカー大全』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

ツイッター@satoseijiro

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