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“初期衝動”を保ち続ける男、ザ・スタークラブのHIKAGEが人生を捧げた「パンク」と憧れのヒーローたち

文字情報でしか知らなかったピストルズを初めて見聞きし受けた衝撃

 HIKAGEがセックス・ピストルズの『アナーキー・イン・ザ・UK』をラジオで聴いたのは、偶然ではなかったという。当時は情報が少なかったので、ラジオの放送予定をこまめにチェック。その日もおそらく、イギリスの最新音楽をかける番組があることを知り、ラジオをつけていたのだとか。

「ラモーンズが出たあと、ピストルズのことは『ミュージック・ライフ』のような雑誌の文字情報で知りました。すぐに喧嘩をするし、ライブは中止ばかりというとんでもないバンドだと。でも、ロンドンで何かがはじまっているらしいという認識は持ちました。
 写真は載ってなかったので、髪の毛がツンツンで服はビリビリに破れ、やたらと安全ピンを刺しているという言葉だけで、想像を膨らませました。そしてラジオで曲を聴き、のちに雑誌に載ったシド・ヴィシャスの写真を見て、『わー、来た! これしかない!』と」

 ニューヨークとロンドンの動きに呼応し、まさに衝き動かされるようにバンドをはじめたHIKAGE。彼が結成したザ・スタークラブは、今や日本最古級の現役パンクバンドと言っていいだろう。
 単純に結成年で並べると、さらに歴の長いパンク系のバンドはあるが、海外発のパンクムーブメントにリアルタイムで触発され、その衝動でスタートしたバンドを、日本の“純パンクバンド”と呼ぶなら、ザ・スタークラブが筆頭となる。

約半世紀前に出逢い、衝撃を受けたパンクの音やスタイルについて理路整然とわかりやすく語ってくれたHIKAGE。(撮影/木村琢也)
約半世紀前に出逢い、衝撃を受けたパンクの音やスタイルについて理路整然とわかりやすく語ってくれたHIKAGE。(撮影/木村琢也)

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 1959年生まれのHIKAGEは、バンド結成当時18歳の大学1年生。そうしたタイミングも、パンクに染まる要因の一つとなった。

「あんなに盛んだった学生運動が、自分のまわりでは完全に消えていた。しらけた世代なんです。個人的には学生運動に憧れる気持ちが強く、すごく勉強もしました。なんであんなに熱く燃え上がれたんだろうって。でも自分たちの世代にはもう、熱くなれるものがない。そう思っていた矢先に知ったのがパンクだったんですよ。
 今はパンクにもいろいろな考え方がありますが、1970年代当時は、ジョン・レノンの『イマジン』の世界、つまり“共産的な発想”というか、パンクも左寄りの考え方が美しかった。学生運動の反体制思想に近く、時代の流れで形は変わったけど、自分の世代はコレなんだなと直感的に思いました」

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『オフィシャル・サブカル・ハンドブック』『日本懐かしスニーカー大全』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

ツイッター@satoseijiro

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