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KERAこそ日本初の“バズり男”。80年代ナゴムブームは「買エ! 買ワナイカライケナイゾ!」の一言から始まった!

今回からスタートする、元「smart」編集長・佐藤誠二朗によるカルチャー・ノンフィクション連載「Don't trust under fifty」。

本連載の初回に登場するのは、劇作家として紫綬褒章も受章しているケラリーノ・サンドロヴィッチ、通称KERAだ。
去る3月25日、恵比寿ザ・ガーデンホールにて、演奏陣を含む48名ものゲストが参加するなか、約5時間にわたって歌い続けるという、とんでもなくヘビーな“還暦ライブ”を成功させたばかり。その還暦ライブの興奮も冷めやらぬ4月某日、都内某所にておこなった2時間半にわたるロングインタビューをベースに、KERAの軌跡と奇跡を、3回にわたってお届けする。
(全3回の第1回 #1 #2 #3

「Don’t trust anyone over thirty」から「Don’t trust under fifty」へ

 1940年生まれの活動家、ジャック・ワインバーグ(Jack Weinberg)が考案したスローガン、『Don’t trust anyone over thirty(30歳以上のヤツらは誰も信用するな)』は、ヒッピームーブメント渦巻く1960年代、アメリカの若者の間に、口コミで急速に広まった。

 年寄りは信頼できない。
 ヤツらから、新しい発想は生まれない。
 権威や伝統、体制を打破し、次の時代を作るのは、我々20代以下の若者だ。
 そんなメッセージが込められている。

 ザ・フーは1965年発表のヒットシングル「マイ・ジェネレーション」で、“歳をとる前に死んじまいたい(I hope I die before I get old)”と歌った。ザ・ジャムも1977年発表のデビュー曲「イン・ザ・シティ」で、“顔が輝いているのはみんな25歳以下だ(And those golden faces are under25)”と叫んだ。
 
 30どころか50の壁もとっくに乗り越えている僕は昔から音楽が大好きで、今もライブ会場にしばしば足を運ぶ。もちろん、外タレを含むメジャーバンドの公演を、ホールやスタジアムなどの大きな会場で鑑賞することも多いが、とりわけ心弾むのは、都内の雑居ビルの地下にある、高校生時代から通い慣れた、薄汚れた小さなライブハウスに行くこと。そこで、僕が中高生だった1980年代から継続的に活動しているバンドの演奏を楽しんでいるのだ。

 あるとき、そんなライブハウスで汗を流し、拳を突き上げながらも不意に気づいてしまった。これって、なかなかすごい状況なんじゃないかと。

 まず客席を見渡してみよう。
 長く活動を続けるレジェンドバンドにはもちろん、若いファンも一定数ついているが、大半は僕と同様、うん10年に及ぶファン歴を持つ人たちだ。ということは、平均年齢は軽く50歳を超える。会社では部長職の中年男や、子育てが一段落したお母さんなんかが、客席で激しくモッシュしているわけだ。
 そしてステージ上の演者の多くは、50代後半から60代くらいになっているはずだ。アラカンながらいまだトンガリ続け、僕らに熱いメッセージを投げかけるロックスターたちなのである。

 まったく“Don’t trust anyone over thirty”どころの騒ぎじゃない。

 連載タイトルの“Don’t trust under 50”は、こうした状況を端的に表したもので、別に今の若い世代に敵意や悪意を抱いているわけではない。50代以上の人々を中心に織りなす、現在のインディヴィジュアルなエンタメ事情をレポートしていきたいと思っているのである。
 もちろんエンタメといっても人それそれなので、ここは僕個人がもっとも入れ込んでいる、ライブハウスを中心に、“何十年”という単位で継続的に活動するミュージシャンと、そのオーディエンスの今を追いたい。

 彼らはなぜ、プレイし続けるのか。
 そして僕らはなぜ、彼らを求め続けるのか。

 そんな本連載の第一回目ゲストとして、もっともふさわしいのは誰か。
 この人しか考えられなかった。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『オフィシャル・サブカル・ハンドブック』『日本懐かしスニーカー大全』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

ツイッター@satoseijiro

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