そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション＆カルチャーコラム。
2019.12.13
約20年前に買ったA.P.C.のジャケットが、今年のトレンドにぴったりだった
冬のトレンドはコーデュロイでしょ、ブラウンカラーでしょ、ボア素材でしょ……と考えていたら、それらを一手に引き受けているブツを、すでに持っていることを思い出した
毎年いろいろなものを買い込み、一度買ったらなかなか手放さないというまずい性格の僕は、家の中がゴチャゴチャだ。でもおかげで、クローゼットの奥底に仕舞い込んでいた服が、突如またトレンドに合うものになっていることもある。
僕はこれを“家庭内熟成”あるいは“自家ヴィンテージ”と呼んでいる。
確かここに仕舞っていたはず、とハウスダストと戦いながら探したら、見つかりました！
約20年前、ブランドの人気最高潮だった頃に買ったA.P.C.のボアジャケットだ。
さっそく羽織ってみると、非常に良い感じです。
今年の冬は久しぶりにコイツを着てみたいと思っている。
自家ヴィンテージが成功するのは、上品でシンプルな服なのだ
家庭内熟成（あるいは自家ヴィンテージ）と言っても、いざ勢い込んで発掘してみると、「あれれ？ なんか違う」と思うことも多い。
特にトレンド性を強く追求したものだと、当時はまったくおかしいと思っていなかったディテールがやけに悪目立ちしたりする。
そうすると「やっぱもう少し寝かそう」と、再びクローゼットの奥底に安置することになる。
しかしこのA.P.C.はバッチリだった。
A.P.C.のデザイナーはジャン・トゥイトゥ。チュニジアに生まれ、フランスに学び、パリのケンゾーでキャリアをスタートさせた人物だ。
1986年にパリで創業したA.P.C.の服は、ストリートを意識した味が加えられつつも、品のあるフレンチベーシックなデザイン。
日本では1990年代からブレイクしたが、個性派揃いだった当時のストリートブランド群の中で、良い意味で無機質・シンプルなデザインが逆に異彩を放ち、若者の中でも上品好みの人たちに支持されていた。
そんなブランドの服だから、20年経ってもまったく色あせないのかもしれない。
今やすっかり老舗ブランドのA.P.C.。
久しくお店にも行っていないけど、しばらくぶりにチェックしてみたくなった。
