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「早い、うまい、安い」で韓国バッグブランドは世界を席巻する日が来る!? 【韓国トレンドの裏事情vol.4 前編】

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コピーではなく“今っぽさ”を買う

韓国の強みは、とにかくスピードです。トレンドをキャッチしてデザインし、作って売るまでがとても早い。小規模ブランドでも生産できる環境が整っているので、流行の変化にすぐ対応できるのです。デザインがシンプルでうるさくないというのも、最近の韓国ブランドバッグの特徴のひとつ。素材や仕立ての質にこだわりつつも、ロゴを前面に出すことのない、いわゆる “クワイエット・ラグジュアリー”的なデザインです。

昔とは違い、今はトレンドの移り変わりも速くなりました。その流れにどれだけ早く、そしてどれだけうまく乗れるかという点が成功の秘訣ではないかと思います。
たとえばOSOIのサイトを見ると、今風じゃないバッグはひとつもありません。流行の最先端のデザインを取り入れていることがひと目でわかります。

ひと昔前の韓国では、バッグといえばLouis Vuitton、CHANEL、HERMÈSといった海外ラグジュアリーブランドが人気でした。ですが、今は国内のブランドを自然に選ぶ人が増えています。特に20~30代の「MZ世代」は、韓国のブランドだとは知らずに「かわいいから」「今風のデザインだから」という感覚で手に取っているのでしょう。

これは韓国人だけに当てはまる話ではありません。最近は韓国を訪れる観光客の間でも、韓国ブランドのバッグを目当てにショッピングを楽しむ人が増えています。SNSなどで情報収集しているのでしょうか。聖水洞をはじめ、梨泰院や漢南洞の路地裏にあるショップまで足を運ぶ姿をよく見かけます。

ポイントは、「ハイブランドのコピー品ではない」というところです。観光客の多い明洞などには今もコピー品を販売する店舗が存在しますが、MZ世代の若者たちはもはやそうしたものを選ばなくなっています。ロゴやモノグラム柄を真似したものではなく、トレンドを押さえつつ、クオリティも保障されたバッグを購入する。その一方で、「ブランド品が欲しければ正規品を買い、ステイタスを高める」という意識も強まっています。

ドラマと海外進出、韓国ブランドの広がり方

ファッションの作り手側にも変化が見られます。かつては「いい大学でファッションを学び、デザイナーを目指す」という人が多い傾向にありましたが、最近は「マーケティングの仕事に就きたい」という人も増えています。実際、10年前と比べると、日本やアメリカの展示会などに参加して、商品を積極的に売り込むブランドがずいぶん増えました。こうした動きが韓国バッグの海外進出を後押ししています。

ただし現在は、トップスターに“私物として”韓国ブランドのバッグを持ってもらうのは簡単なことではありません。K-POPアイドルを中心に、スターの多くが海外ラグジュアリーブランドとアンバサダー契約を結んでいるため、公の場や空港では契約ブランドのアイテムを身につける必要があるからです。
だからこそ重要になるのが、ドラマという場での見せ方です。たとえば「JOY GRYSON」(ジョイ グリソン)のように、作品の中で自然に商品を印象づける手法は今も有効です。Netflixでも配信された「梨泰院クラス」ではキム・ダミ、「夫婦の世界」ではキム・ヒエがそれぞれ役柄に合うデザインのバッグを持って登場し、JOY GRYSONのイメージを広げました。

ラグジュアリーか現実路線か? 韓国ブランドの分岐点

今後、韓国バッグブランドの方向性は大きく二つに分かれると思います。

一つは、ラグジュアリーを目指す道。韓国にはまだ、CHANELやGUCCIのような世界的なブランドがありません。時計やジュエリーを含め、マンハッタンの五番街やパリのシャンゼリゼ通りには、韓国ブランドの旗艦店はまだほとんどないのです。先人がいないため、ノウハウもない。今はさまざまなブランドがラグジュアリーへの挑戦を模索している段階と言えるでしょう。

そしてもう一つは、今の強みを伸ばす道です。これまでどおり手ごろな価格帯で、トレンドを素早く反映する。ラグジュアリーを目指すのではなく、ブランドの世界観を磨いていくという路線です。今回ご紹介したSTAND OILやOSOIも哲学やヘリテージを作り、ブランドの底力を上げていく取り組みを行っているところだと思います。

私としては、ラグジュアリー路線より、後者のブランドにがんばってほしいという思いがあります。ですが、ニューヨークでリーズナブルなブランドが消えていく過程を見てきた立場から言えば、この市場にはリスクもある。競争率がかなり高いため、トレンドを一度でも逃せば、ブランド自体が消えてしまう恐れもあるでしょう。そういう意味では、ラグジュアリー路線に力を入れていくほうが将来的には勝算が高いのではないかと思います。ラグジュリーブランドは一度ファンがつけば、長続きしますから。

それでも、いま韓国ブランドは確実に世界の若い世代に支持されています。この先、ラグジュアリーへと進むのか、それとも今の路線を極めるのか。世界に羽ばたきはじめた韓国のバッグブランドがどのように成長していくのか、引き続き注目していきたいと思います。

後編(9月19日12時半公開予定)へ続く

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ジョエル・キンベック(JOEL KIMBECK)

 英ゴールドスミス・カレッジの大学院でメディアを専攻。広告企画会社勤務を経て2010年に独立し、ブランディングエージェンシー「STUDIO HANSOME」を設立する。ニューヨークを拠点に、ソウル、東京、パリ、ミラノを行き来してファッション、ビューティー、ライフスタイルのブランディングを手がけるクリエイティブ・ディレクター。
 LVMHグループ傘下のブランドをはじめ、モスキーノ、VERA WANG、メゾンキツネ、ラフシモンズ、ロベルトカヴァリ、TUMI、カルバン・クラインなどのファッションブランド、ロレアルグループ傘下やアモーレパシフィック傘下のビューティーブランドにおいて、ブランディング全般を担ってきた。 
 韓国の『W』『VOGUE』『GQ』、『月刊デザイン』『東亜日報』『週刊東亜』など多くの媒体でコラムを執筆中。著書に『ファッションミューズ』(2016年)、『FRESHNESS CODE』(2021年)がある。韓国人デザイナーの海外進出を支援する韓国政府のプロジェクト「コンセプトコリア」のコンサルタントとしても活躍。
@studiohandsome
https://www.studiohandsome.com/


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