2026.8.21
日本だけでなく世界的ビジネスに成長。韓国コスメ、そのブームの秘密【韓国トレンドの裏事情vol.3 前編】
日本人の母親とアメリカ生まれの韓国人の父親を持ち、日本、アメリカ、韓国を行き来しながら各国の文化に触れて育ったバックボーンと、仕事での経験をベースに、誰もが知っている韓国トレンドを深堀り解説します。
前回はラグジュアリーブランドとのコラボレーションで常に注目を浴びる、あのアイウエアブランドについての解説でした。今回は日本のみならず、アメリカでも大きな売り上げを占める、韓国美容についてです。
構成/藤田麗子
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最近、アメリカでもAmazonのビューティーランキングを見ると、K-Beautyブランドの存在感がかなり増していることに気づきます。とくにプライムデーやブラックフライデーのような大型セールでは、K-Beautyブランドが総合ランキングの上位に入ることもめずらしくありません。
アメリカでは「Amazonでこんなに売れている」ということが商品の人気を示す一つのバロメーターになっています。実際、韓国は2024年に初めて、これまでトップだったフランスを抜き米国市場で最大の化粧品輸出国となりました。今年1月には、韓国のCJ OLIVE YOUNGとLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン傘下の大手コスメストアSEPHORAの提携も発表。2026年8月20日からは全米の580以上のSEPHORA店舗とオンラインモールに「OLIVE YOUNG K-Beauty Edit(オリーブヤング Kビューティー エディット)」を公式にローンチしました。オリーブヤングが直接キュレーションするK-Beauty Editには、19ブランド、150点以上の製品が出店予定で、今後はアジア主要国やイギリス、オーストラリア、中東などのSEPHORA店舗へも拡大する計画だそうです。
韓国コスメはもはや一時的なブームではなく、世界の化粧品市場を動かす一つの大きな潮流になっています。
K-Beautyはなぜここまで世界に広がったのでしょうか。理由はいくつもありますが、僕が大きいと感じているポイントを大きく三つ、ピックアップしてみたいと思います。

ブランドより先に「カテゴリー」が広まった
まずは、手ごろな価格とカテゴリーの認知です。欧米で最初に知られたのは、個々のK-Beautyブランドの名前ではありませんでした。むしろ先に広まったのは、「韓国のシートマスク」や「韓国のスキンケア」といったカテゴリーだったのです。
これは、フランスのコスメブランドなどとは少し違う広がり方です。通常は「ブランドが有名になり、それがフランスのものだと知られる」という流れですが、K-Beautyの場合は「韓国のシートマスクがいいらしい」といったイメージが先に浸透しました。
韓国はキャッチーな言葉づくりもうまいと思います。ツヤのあるなめらかな肌を韓国では「陶器肌」といいますが、それを英語圏向けには「Glass Skin(グラススキン)」「Glass Hair(グラスヘア)」などの言葉に置き換えて広げていく。最初は少しおかしな英語に聞こえても、いつのまにか流行語として定着していきます。
ひと昔前、たとえばクレ・ド・ポー ボーテの広告では、俳優のアマンダ・サイフリッドのうぶ毛が見えるほど自然な肌が表現され、それが高級感のある美しさとされていました。一方、最近の韓国人モデルの肌は、まるでサイボーグみたいにツルツルです。欧米でも「あんなグラススキンになりたい」という憧れが生まれ、韓国のシートマスクが爆発的にヒットしたのです。
アメリカは人種が多様なこともあり、コスメ市場はスキンケアよりもメイクアップ商品が主流でした。パックといえば洗い流すタイプやピーリング系が中心でしたが、K-Beautyが入ってきたことで、シートマスクをはじめとしたスキンケア文化が広がっています。今とくに伸びているのはUVケアコスメ。ツヤ感やトーンアップ効果があり、バリエーションも豊富なところがアメリカでもウケています。
価格帯も人気の理由です。ビューティー商品は、必ずしも一つを使い切ってから次を買うものではありません。もちろん1000ドルもする高級コスメは簡単には買えませんが、20ドルや30ドル程度なら、欲しい商品が出るたびに気軽に買い足すことができます。コスメは「手が届く贅沢品(アフォーダブル・ラグジュアリー)」といわれ、憧れを満たしてくれるだけでなく、気分転換にもなる。ストレス解消として購入されることもあります。同じ価格帯で考えると、ファッションより満足感が高いといえるでしょう。
韓国が得意な「バイラルマーケティング」
二つ目のポイントは、インフルエンサーマーケティングです。韓国は日本やアメリカに比べると人口が少ないため、話題が一気に広がりやすく、バイラルマーケティングが機能しやすい面があります。ある商品を売りたいとき、マーケティング会社は1000万円ほどの予算をかけて、有名インフルエンサーだけでなくマイクロインフルエンサーまで含めた多くの人に一斉に紹介してもらいます。するとSNS上で同じ商品が何度も目に入るようになり、「今この商品が流行っている」という空気が生まれるのです。
この韓国のマーケティング手法が、市場規模の大きいアメリカ全土でそのまま通用するわけではありませんが、ニューヨークやロサンゼルスなどの大都市では一定の効果を発揮しました。
K-POPや韓国ドラマが作る“興味の入口”
三つ目は、やはりK-POPや韓国ドラマなどの影響です。今、欧米では韓国コンテンツの影響で韓国フードへの関心が急速に高まっています。アメリカでも「トッポッキ」「コチュジャン」などの韓国語がそのまま通じるようになり、辛ラーメンやプルダック炒め麺の売り上げが伸びるなど、韓国の食文化そのものが一つのブームになっています。
K-POPファンが韓国カルチャーに親しんでいく力はとても大きなものです。たとえばBTSの誰かがライブ配信をしながらフライドチキンやチャジャン麺を食べていると、「自分も食べてみたい」と思うようになる。推しているスターが好きなものを自分も好きになり、その流れでコスメにも関心が広がっていきます。
また、韓国ドラマや映画では、商品を劇中に登場させるPPL(プロダクトプレイスメント)という間接広告がさかんに行われています。海外の視聴者が「あのドラマで俳優が使っていたコスメは何だろう」と興味を持ち、ネット検索して購入するという流れが生まれています。
Netflixの影響も大きいでしょう。『イカゲーム』をはじめとする韓国コンテンツは、ハリウッド作品に比べると制作費が低いにもかかわらず、世界的なヒットになるケースが増えています。Netflixにとっては金の卵ですから、韓国コンテンツへの投資も年々拡大しています。Netflixのアルゴリズムによって、欧米でも韓国作品がおすすめに表示される機会が増えれば、それだけ韓国文化に触れる人も増える。K-Beautyのブームはその延長線上にあるといえます。
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