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なぜあの韓国アイウエアブランドの店頭には、巨大顔面ロボがあるのか?【韓国トレンドの裏事情vol.2 前編】

ニューヨークを拠点に、15年以上にもわたってファッション、ビューティーブランドのブランディングや広告キャンペーンのディレクションに携ってきたジョエル・キンベック氏。
日本人の母親とアメリカ生まれの韓国人の父親を持ち、日本、アメリカ、韓国を行き来しながら各国の文化に触れて育ったバックボーンと、仕事での経験をベースに、誰もが知っている韓国トレンドを深堀り解説します。

前回はK-POPアイドルとラグジュアリーブランドの関係性について。今回はラグジュアリーブランドとのコラボレーションで常に注目を浴びる、あのアイウエアブランドについて。前半では創業からの動きを振り返ります。

構成/藤田麗子

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2025年9月、ソウル・聖水洞にオープンしたHAUS NOWHERE SEOULが新たなランドマークとなって韓国内外からの人気を集めています。地上14階、地下5階から成るこの建物は、アイウェアブランドGENTLE MONSTERを手がけるIICOMBINED(アイアイコンバインド)の新社屋で、同社の5ブランドのショップがすべてそろった空間です。

昨年のプレオープン記念イベントの日、僕も俳優のティルダ・スウィントンさんと一緒にHAUS NOWHERE SEOULに行きました。GENTLE MONSTERが彼女とコラボした2025年の新作コレクション「BOLD」のビジュアルを作るプロジェクトに、彼女のコーディネーターとして携わったからです。ティルダ・スウィントンさんは、ポン・ジュノ監督の『オクジャ/okja』(2017年)への出演をきっかけにIICOMBINEDの創業者であるキム・ハンコック(Kim Hankook)さんと知り合ったそうです。

英語塾の社員からビジネスマンに転身した創業者

キム・ハンコックさんはGENTLE MONSTERを短期間で世界的なブランドに育て上げた創業者ですが、すごいのは畑違いの業界に飛び込んだというところ。もともとは小中学生の英語塾や英語キャンプを運営する会社の社員でしたが、「アイウェア事業をやりたい」というアイデアが社内ベンチャー制度で採択されて、2011年にIICOMBINED(アイアイコンバインド)を立ち上げることになったといいます。

いまや「GENTLE MONSTER=巨大なロボットやインスタレーション」というイメージが定着していますが、これはかなり昔から準備されていたものです。
僕がキム・ハンコックさんと出会ったのは、2015年頃。わが社の韓国スタッフの友人の夫が、KAIST(韓国科学技術院、Korea Advanced Institute of Science and Technology)というサイエンスに特化した国立大学の出身だったことがきっかけです。その人はロボット工学の博士で、教授を目指していたのですが、いきなりGENTLE MONSTERに入社することにしたというのです。当時はGENTLEMONSTERとロボットのイメージがまったく結びつかず、「なんで⁉」とすごく興味を惹かれました。

GENTLE MONSTERのアイコンにもなっている店頭の巨大顔面ロボット。写真は上海の店舗。 CFOTO/Future Publishing via Getty Images
GENTLE MONSTERのアイコンにもなっている店頭の巨大顔面ロボット。写真は上海の店舗。 CFOTO/Future Publishing via Getty Images

その博士が「GENTLE MONSTERは今後、海外にも広告展開をしていくだろうから」ということでハンコックさんと僕を引き合わせてくれて。ミーティングをするようになってから、ロボットを作って斬新なビジュアルや世界観を生み出していきたいと考えていることを知って、とても斬新だなと思いました。当時そんなことをしている会社は他にありませんでしたから。単にロボットを購入して展示するのではなく、自社で作るためにロボット工学の博士をスカウトしていたというわけです。

ハンコックさんに「なぜロボットなのか」と尋ねたことがありますが、超有名アーティストの作品をいきなり店に置くのではなく、これまでのアート作品とはまた違ったもので話題を作りたいと言っていました。ロボティクス分野で最先端のテクノロジーというわけではないかもしれませんが、これをファッションと融合させて、新しいものを作るということを考えていた。新しい時代の象徴として、ロボットの圧倒的なスケール感を見せたほうがインパクトは強いですから。そこであえてメガネやサングラスとはまったく関係のないことをする。これを実現するために社内にクリエイティブ集団を抱えるというスタイルです。

そういうわけで、僕はいくつかのプロジェクトに関わったことはありますが、GENTLE MONSTERのお仕事を中心となって手がけたことはありません。その理由は、僕のような外部のスタッフを大きなプロジェクトには起用しないから。何度もミーティングをしてすごく前向きに検討してくれましたが、ハンコックさんとしてはやはり社内ですべてを手がけたいというポリシーがあるのだとそのとき思いました。

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新刊紹介

ジョエル・キンベック(JOEL KIMBECK)

 英ゴールドスミス・カレッジの大学院でメディアを専攻。広告企画会社勤務を経て2010年に独立し、ブランディングエージェンシー「STUDIO HANSOME」を設立する。ニューヨークを拠点に、ソウル、東京、パリ、ミラノを行き来してファッション、ビューティー、ライフスタイルのブランディングを手がけるクリエイティブ・ディレクター。
 LVMHグループ傘下のブランドをはじめ、モスキーノ、VERA WANG、メゾンキツネ、ラフシモンズ、ロベルトカヴァリ、TUMI、カルバン・クラインなどのファッションブランド、ロレアルグループ傘下やアモーレパシフィック傘下のビューティーブランドにおいて、ブランディング全般を担ってきた。 
 韓国の『W』『VOGUE』『GQ』、『月刊デザイン』『東亜日報』『週刊東亜』など多くの媒体でコラムを執筆中。著書に『ファッションミューズ』(2016年)、『FRESHNESS CODE』(2021年)がある。韓国人デザイナーの海外進出を支援する韓国政府のプロジェクト「コンセプトコリア」のコンサルタントとしても活躍。
@studiohandsome
https://www.studiohandsome.com/


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