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キリンは鼻クソがほじれない? 動物番組の監修者が驚いた“残念”なガセネタ

ガセネタ2:キリンは首が長くなりすぎて鼻クソがほじれなくなった

次は、キリンはもともと前脚で鼻クソをほじっていたが、首が長くなりすぎたため、鼻掃除ができなくなったという説。

これも連絡をくれたスタッフさんはみじんも悪くないわけですが、どこからツッコミを入れたらいいのでしょうか!?

みなさん、キリンよりも首が長くないウシやウマが前脚で鼻クソをほじっているのを見たことがありますか? 私はありません。
仮に脚が鼻に届いたとしても、ひづめを中に突っ込むのは無理でしょう。

つまり、首の長さと脚をつかって鼻をほじれるのか否かはまったく無関係
キリンの場合、長い舌を使って鼻の中を掃除することはよくあります。

長い舌を使って鼻掃除をするキリン。(イラスト/大渕希郷)
長い舌を使って鼻掃除をするキリン。(イラスト/大渕希郷)

ガセネタ3:リスがエサの美味しさに感動して固まる

これはネットで拡散された動画にまつわる問い合わせでした。

その動画は、ある海外の男性が森の中でリスに種か何かのエサを与えるとこから始まります(野生動物にエサを与える行為は控えてください)。そして、そのエサを一心不乱に食べていたリスが急にピタッと固まって動かなくなるというもの。

「思わず体の動きが止まるほど美味しいのか! かわいい! と話題の動画です。美味しいエサに感動して動かなくなるといった解説がネットにあるのですが、真偽はどうなのでしょうか?」
と、某番組のスタッフさんから動画データとともに連絡がありました。

「んなことあるかい!」と思った私が早速動画を確認したところ、撮影者の声に混じって何やら飛行機か何かのエンジン音らしきものが……。
音量を上げて再確認して確信しました。このリスは撮影時に上空を飛んでいた飛行機あるいはヘリコプターの音に驚いて固まっていたのです。あるいはその機影自体に対してもでしょう。

リスはじめネズミの仲間は、強いストレスや衝撃を受けるとフリーズする習性があります
恐怖を感じた際に、下手に動かずに危険をやり過ごそうという一種の防御反応です。
ペットとしてよく飼われているシマリスやハムスターなので実際に観察されたことがある飼い主さんも多いのではないでしょうか。

連絡をくれたスタッフさんも、「美味しすぎて固まる」はあやしいと思っていたようで、ホッとされていました。

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大渕希郷

おおぶち・まさと●どうぶつ科学コミュニケーター
1982年神戸市生まれ。京都大学大学院博士課程動物学専攻、単位取得退学。その後、上野動物園・飼育展示スタッフ、日本科学未来館:科学コミュニケーター、京都大学野生動物研究センター・特定助教(日本モンキーセンター・学芸員 兼任)を経て、2018年1月に独立。生物にまつわる社会問題を科学分野と市民をつなげて解決に導く「どうぶつ科学コミュニケーター」として活動中。
夢は、今までにない科学的な動物園を造ること。特技はトカゲ釣り。
著書に『新ポケット版 学研の図鑑絶滅危機動物』『新ポケット版 学研の図鑑 爬虫類・両生類』(いずれも学研教育出版)、『絶滅危惧種 救出裁判ファイル』『動物進化ミステリーファイル』(いずれも実業之日本社)、『どうぶつ恋愛図鑑』『へんななまえのいきもの事典』(いずれも東京書店)など。最近は、「こども環境地球儀ハトホル」(渡辺教材教具)など教材開発にも関わる。愛称はぶっちー。
公式ホームページ: http://m-ohbuchi.com/

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