2026.7.8
和紙田大學や羽車の紙小物【群ようこ『今日も愛でたい』 第3回】
その一方、着物、和装小物、アクセサリー、はがき、封筒、便箋など、手放さずに愛用しているものたちも。
新連載のエッセイでは、モノをできるだけ増やさないという鉄則の中で、厳選して身の回りに置いている愛用品についてのエピソードを綴っていただきます。
前回は鉛筆をめぐるお話でした。今回は、物を増やさないと決めたのに、ついついポチっとしてしまうという紙小物について。
イラスト/ヨツモトユキ
記事が続きます
今日も愛でたい 第3回 和紙田大學や羽車の紙小物

本が電子書籍になり、小学校での勉強もタブレットが使われるようになっていると聞くが、やはり私は紙が好きだ。若い人は生まれたときからスマホやタブレットを手にしているから、特に疑問も持たないだろうけれど、中年になって突然、スマホというものが登場した私としては、機能的な問題は別にして、手触りがとても気になるのだ。
私の父親は当時、学習教材の絵を描いていたので、家には印刷所からもらってきた、はがきくらいの大きさの様々な紙を束ねた、厚さが七、八センチくらいある紙見本が、何冊もあった。私はそれを眺めるのがとても好きだった。透かしがあるもの、銀色、金色に光っているもの、様々な美しい柄が印刷されているもの、ふちから長い毛羽が出ている和紙など、いつ見ても飽きず、本を読む次に紙見本を眺めていた。和柄の紙見本もあったので、それが着物に興味を持った理由のひとつかもしれない。
物をいただくと、包装紙がいつも気になった。当時は和紙で凝ったものも多かったから、なるべく皺ができないように手で伸ばして、せんべいの大きな缶にためておき、そこから取り出して眺めるのが好きだった。三越の白地に深紅ともピンクとも違う、愛らしいそら豆みたいな柄の包装紙も好きだったし、テレビでは「バラのつつみのタカシマヤ」というコマーシャルも流れていた。ローズちゃんという洋風の人形もキャラクターとしてあったと思う。
デパートの包装紙を見ると高級品を見るようで胸が高鳴った。デパートの包装紙も中の品物を取り出すために、雑に破いて捨てるなんていうことはとてもじゃないけれどできず、そっとシールやテープを剥がし、こちらは皺にならないように、くるくると巻いて保管していた。何に使うというわけでもないのに、必ず押し入れを開けるとすぐ目につくところに立てて置いてあった。友だちのなかには、ブックカバーにして使っている人もいた。
三十歳のときに仕事で海外に行った際、外国の人たちが包装紙をびりびりと破り、そのままほったらかしにして帰るのを見て、
「日本人の感覚とは違うなあ」
と妙なところで感心したこともあった。
子どもの頃の習慣もあってか、とにかく紙類はなかなか捨てられない。裏が白い紙を捨てるなどとんでもなく、
「白いところに書けるじゃないか」
と思う。
「いったい何を書くのですか」
と問われると、ぐっと言葉に詰まるのだが、何かを書き留めるのに、若い人はスマホに入力するけれど、私は紙に書くので、日常生活に必要というのが正直なところである。
それは物を処分するときに問題になる考え方で、いつか使うというものは持っていてはいけない。今、使うものを手元に残す、というのが、物を減らす鉄則らしい。私もミニマリストの本、物を減らす本の類いをたくさん読んだが、いまだに自分が望むように物を減らせてはいない。物を整理するために、引っ越しの際に購入した、A3がすっぽり入る、高さ十三センチの箱に、溜めていた紙類を入れていたのだが、意を決して昔のノートなどを処分したために、二箱が空になったのだけれど、これくらいではまだまだすっきりとはいかない。紙は一枚一枚は薄いので溜めても罪悪感は薄い。しかしこれがたくさん溜まると重くなってしまい、ますます処分しづらくなるのだ。
いちばん多いのはネコ関係の紙物である。見開き方式で片方のページがネコの写真、もう片方が書き込み式のカレンダー。毎年売り出されるそのネコのカレンダーは必ず購入していて、用が済んでもすべて保管している。それも一冊あれば十分なのに、被写体のネコがかわいいので、様々な種類を三冊買ってしまう。また自作の素敵なカレンダーを贈ってくださるイラストレーターの方々がいらっしゃるので、それはリビングのテーブルの上に飾っている。日にちを見るというよりも、絵を飾っている感覚になる。
買いためておいたポストカードやレターセットも膨大な量になってきたので、年に一度、泣く泣くバザーに提供していた。在庫を徐々に減らしていくようにしてから、本当に必要なもののみを買おうと決めた。それでもかわいい紙ものをサイトで見ると、
「すぐなくなっちゃうんだよなあ」
とつぶやきながら、カートに入れるボタンをポチッと押してしまうのだ。
記事が続きます
![[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント](https://yomitai.jp/wp-content/themes/yomitai/common/images/content-social-title.png?v2)















