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やってはいけない!? 「トカゲの尻尾切り」に潜むリスク

世界初の「どうぶつ科学コミュニケーター」として、講演活動やフィールドワーク、執筆活動など幅広く活動中の大渕希郷さん(通称・ぶっちー)。
動物まみれのめまぐるしくも愉快な日常とは……!?  
生き物の知られざる生態についても、自筆のイラストとともに分かりやすく解説します。
動物の専門家によるお仕事&科学エッセイです。

前回は「どうぶつ科学コミュニケーター」の役割についてのお話でした。
今回は、トカゲ釣りが特技のぶっちーさんが、「トカゲの尻尾切り」の知られざる“その後”について解説します。

どうぶつ科学コミュニケーターとして動物全般について講義や執筆なども行っている私ですが、動物の中でも主に爬虫類を専門としています。
というか、一番好きなのが爬虫類や両生類です。

生物系の学者や学生の間では、何を研究対象にしているかによって、「イルカ屋」「カメ屋」などと呼ばれることがあります。
私の場合は、学生生活最後は爬虫類の「トカゲ屋」でした。

幼少期より一番好きなのは両生爬虫類で変わりはないのですが、研究対象としては紆余曲折がありました。大学・大学院では、ミドリムシなどの単細胞生物→琵琶湖の魚類→トカゲ類と対象が変わってきたのです。
その話は機会があればまた!

ともかく大学院の最後は、トカゲ類の進化について研究し、その後、上野動物園の就職試験に合格。さらにラッキーなことに両生爬虫類館の飼育展示係に配属されました。
余談ではありますが、上野動物園の両生爬虫類館で同僚となった一人が、大学院の先輩(トカゲ研究者)でした。
狭い世の中です。

トカゲ屋の私が気になって仕方がない「匂い」のヒミツ

ここで少し私の大学院時代の研究について紹介させてください。

もともと日本の本州には、ニホントカゲ1種類だけがいると考えられていました。
ところが、研究が進み、伊豆諸島にしかいないはずのオカダトカゲが本州の伊豆半島にもいることがわかってきます。

実は、かつて伊豆半島は島で、およそ50~70万年前に本州に衝突する形で半島となったのです。
つまり、島に乗って“どんぶらこ”と(?)やってきたのがオカダトカゲです。
まさに「ひょっこりひょうたん島」状態ですね。♪トカゲを乗せて本州へゆく~♬

おもしろいことに、この2種類のトカゲは出会ってからその分布の境界線が変わっていません
言い換えると、雑種をつくって混じったり、どちらかが駆逐されたりしていないということ。
これはおそらく、お互いに別種か同種か区別していて、雑種をつくるといったことが起きていないのだろうと考えられます。見た目はそっくりなのですが……。
そこで、そのヒミツをさぐる研究を大学院ではしていました。

ちなみに、ちょっとややこしいですが、さらにその後の研究でニホントカゲは琵琶湖を境に西のものがニホントカゲ、東のものがヒガシニホントカゲとなりました。
つまり、本州には3種類のトカゲ属がいることになります。
そのほかトカゲ類としては、ヤモリ類やニホンカナヘビなどがいます。

トカゲの分布。
トカゲの分布。

さて、トカゲがどうやってお互いを区別しているのか? それは、先輩らの研究で匂いであろうことはわかっていました。
では具体的にどんな匂いがどんなふうに効いているのか? それが私の研究テーマでした。

しかし、トカゲをはじめ野生動物を研究するときはその動物を自分で野外に探しに行く(採集する)ところから始めなければなりません。

そこで身につけた私の特技が「トカゲ釣り」。
竿にエサとなる昆虫などをつるして、釣り上げる方法です。

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大渕希郷

おおぶち・まさと●どうぶつ科学コミュニケーター
1982年神戸市生まれ。京都大学大学院博士課程動物学専攻、単位取得退学。その後、上野動物園・飼育展示スタッフ、日本科学未来館:科学コミュニケーター、京都大学野生動物研究センター・特定助教(日本モンキーセンター・学芸員 兼任)を経て、2018年1月に独立。生物にまつわる社会問題を科学分野と市民をつなげて解決に導く「どうぶつ科学コミュニケーター」として活動中。
夢は、今までにない科学的な動物園を造ること。特技はトカゲ釣り。
著書に『新ポケット版 学研の図鑑絶滅危機動物』『新ポケット版 学研の図鑑 爬虫類・両生類』(いずれも学研教育出版)、『絶滅危惧種 救出裁判ファイル』『動物進化ミステリーファイル』(いずれも実業之日本社)、『どうぶつ恋愛図鑑』『へんななまえのいきもの事典』(いずれも東京書店)など。最近は、「こども環境地球儀ハトホル」(渡辺教材教具)など教材開発にも関わる。愛称はぶっちー。
公式ホームページ: http://m-ohbuchi.com/

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