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大渕希郷「動物ふしぎ観察記」

ペットのイグアナを動物園に放置!? 元・飼育展示員が語る「動物園で絶対にやめてほしいこと」

世界初の「どうぶつ科学コミュニケーター」として、講演活動やフィールドワーク、執筆活動など幅広く活動中の大渕希郷さん(通称・ぶっちー)。動物まみれのめまぐるしくも愉快な日常とは……!?  生き物の知られざる生態についても、自筆のイラストとともに分かりやすく解説します。動物の専門家によるお仕事&科学エッセイです。

前回は、絶滅危惧種であるパンダの生態について解説しました。
今回はぶっちーさんが動物園職員時代に経験した仰天エピソードです。

「うちの子じゃない」イグアナがいる!

この連載でも何度かお話したことがある通り、私は以前、上野動物園・両生爬虫類館の飼育展示スタッフとして働いていました。
今回は、その時経験した忘れられない出来事からお話したいと思います。

ある日、同僚の一人が「イグアナが逃げている!」と騒いでいるのが耳に入りました。
私が驚いて駆けつけると、確かに飼育展示ケージの外、爬虫類館の外壁窓ガラスの内側サッシに、グリーンイグアナ(以下、イグアナ)が寝ているではありませんか!

グリーンイグアナは樹上性なので、窓枠までのぼって日光浴していたと思われます。(イラスト/大渕希郷)
グリーンイグアナは樹上性なので、窓枠までのぼって日光浴していたと思われます。(イラスト/大渕希郷)

ケージから脱出した時点で大問題ですが、このまま館外に出て、他の動物や人と接触するようなことになったら一大事です。
飼育動物の健康や安全保持といった理由はもちろん、その動物が人の生命、身体、財産などに害を与えたり、迷惑をかけたりしてはいけないという観点からも飼育動物の逃走は絶対にあってはならないこと。このことは、動物愛護管理法第七条にも明記されています。
両生爬虫類館のある西園の職員に一斉集合がかかり、集まったスタッフで大捕物となりました。

しかし、捕まえる前、双眼鏡で確認した際にふと、
「あれ? うちのイグアナにしては、見ない顔(若い個体)だな??」
と感じました。

いざ確保して、イグアナの担当者がひとこと
「うちの子じゃない。」

そしてイグアナの飼育ケースを確認すると、園内にいるべき頭数は揃っています。
捕まえた個体を加えると、「1頭多い」という状態なのです。

これは一体どういうことなのか。

当然ですが、閉園後は毎日個体数と健康状態を確認し、飼育場所の施錠をしますし、夜間、館内で不審な動きがあればセンサーが感知するようになっています。
夜間に警報は作動していませんし、開園前、朝の点検時にも異常はありませんでした。

こうした状況から考えて、午前中に外部から、つまり来園者によって持ち込まれたものだろうという結論になりました。

その“侵入”したイグアナは手入れされていることがわかる、きれいな個体でした。
色艶や形からみて、老齢ではなく、ちょうど成長期の頃で、全長70センチくらい。

おそらくペットとして飼われていたものが、予想外の成長など、なんらかの理由で飼えなくなり、動物園に持ち込まれ、放置されたのではないかと推察されました。

動物園に動物(おそらくペットだったもの)が放置されることは、ままあります
動物を飼育している場所だから、動物のプロが働いているから、なんとかなるだろうと思われるのでしょうか。
私が、上野動物園のスタッフ時代には、ビニール袋に入った金魚が職員通用口のドアノブにぶら下げてあったこともありました。

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大渕希郷

おおぶち・まさと●どうぶつ科学コミュニケーター
1982年神戸市生まれ。京都大学大学院博士課程動物学専攻、単位取得退学。その後、上野動物園・飼育展示スタッフ、日本科学未来館:科学コミュニケーター、京都大学野生動物研究センター・特定助教(日本モンキーセンター・学芸員 兼任)を経て、2018年1月に独立。生物にまつわる社会問題を科学分野と市民をつなげて解決に導く「どうぶつ科学コミュニケーター」として活動中。
夢は、今までにない科学的な動物園を造ること。特技はトカゲ釣り。
著書に『新ポケット版 学研の図鑑絶滅危機動物』『新ポケット版 学研の図鑑 爬虫類・両生類』(いずれも学研教育出版)、『絶滅危惧種 救出裁判ファイル』『動物進化ミステリーファイル』(いずれも実業之日本社)、『どうぶつ恋愛図鑑』『へんななまえのいきもの事典』(いずれも東京書店)など。最近は、「こども環境地球儀ハトホル」(渡辺教材教具)など教材開発にも関わる。愛称はぶっちー。
公式ホームページ: http://m-ohbuchi.com/

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