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二宮寿朗「1980年生まれ。戦い続けるアスリート」
不惑が間近に迫る年齢になりつつも、変わらず戦い続ける1980年生まれのアスリートたちに、スポーツライター二宮寿朗氏が迫るこの連載。
中村憲剛選手田臥勇太選手館山昌平投手大黒将志選手玉田圭司選手木村昇吾選手に続く7人目のアスリートは、福岡ソフトバンクホークスの和田毅投手です。

初回は、昨年までのケガを乗り越えて、今年、復活の勝利を挙げた和田選手の試練を乗り越える考え方についてのストーリー――

自分と人を信じ抜く力があるから、ソフトバンク和田毅は試練に強い!

「タマホーム スタジアム筑後」にて。ユニフォーム姿、グラウンド、マウンドが誰よりも似合う。(撮影/熊谷貫)
「タマホーム スタジアム筑後」にて。ユニフォーム姿、グラウンド、マウンドが誰よりも似合う。(撮影/熊谷貫)

同世代の松坂大輔、新垣渚らスターとは比べるまでもなかった高校時代

マウンドに戻ってくるたびに輝きを帯びる。

福岡ソフトバンクホークスの左腕、和田毅は待っていたファンの期待を裏切らない。
8月12日も、そうだった。ヤフオクドームでの北海道日本ハムファイターズ戦。右太もも裏痛から約3週間ぶりに復帰した彼は、立ち上がりを3者連続三振に抑えた。

コンパクトな腕の振りから繰り出す伸びのあるストレートは、バチンと乾いた音を立ててキャッチャーミットに収まる。左手をクルンと回した小さなガッツポーズは、心の躍動をも映していた。5回86球1失点での勝利投手。ホークスの「21番」にはヒーローインタビューのお立ち台がやっぱりよく似合う。

その10日ほど前、福岡・筑後市のファーム施設で復帰に向けて入念に調整する彼の姿があった。炎天下のグラウンドを黙々と走り、その後もフィジカルトレーニング、フォームのチェックとたっぷりと汗を流していた。

己に向き合いつつも、トレーニングの合間には何かを確認するようにコーチやトレーナーとコミュニケーションを密に取っていく。一分一秒を無駄にしない、妥協しないという姿勢は見ているほうにもビシビシと伝わってくる。
 
和田毅は言うまでもなくホークスの大看板だ。

早大のドクターKは03年に自由獲得枠でホークス入りを果たした。新人王を獲得した1年目から5年連続で2ケタ勝利を挙げ、7年ぶりのリーグ優勝を成し遂げた10年は17勝で最多勝タイトル、リーグMVPを獲得した。翌年、16勝を挙げてリーグ2連覇、そして日本一を果たした。メジャー挑戦を経て16年シーズンに復帰すると再び最多勝タイトルをもぎ取っている。

しかし高校時代の彼は、同世代の松坂大輔、新垣渚らのスターと比べるまでもなく、目立った存在ではなかった。島根・浜田高時代は2年生で夏の甲子園に出場も初戦敗退。翌年、ベスト8まで進んだものの、最速120㎞台のピッチャーにプロ志望などなかった。

だが早大進学後に野球人生が変わる。1年、秋のリーグ戦からスピードは140㎞台を計測するようになり、次第に頭角を現すようになっていく。このターニングポイントに、和田のアスリート哲学を知ることができるのかもしれない。

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二宮寿朗

にのみや・としお●スポーツライター。1972年、愛媛県生まれ。日本大学卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社し、格闘技、ラグビー、ボクシング、サッカーなどを担当。退社後、文藝春秋「Number」の編集者を経て独立。様々な現場取材で培った観察眼と対象に迫る確かな筆致には定評がある。著書に「松田直樹を忘れない」(三栄書房)、「サッカー日本代表勝つ準備」(実業之日本社、北條聡氏との共著)、「中村俊輔 サッカー覚書」(文藝春秋、共著)など。現在、スポーツ報知にて「週刊文蹴」(毎週金曜日)、Number WEBにて「サムライブル―の原材料」(不定期)を好評連載中。

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