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二宮寿朗「1980年生まれ。戦い続けるアスリート」
不惑が間近に迫る年齢になりつつも、変わらず戦い続ける1980年生まれのアスリートたちに、スポーツライター二宮寿朗氏が迫るこの連載。
中村憲剛選手田臥勇太選手館山昌平投手大黒将志選手に続く5人目のアスリートは、V・ファーレン長崎の玉田圭司選手。日本代表としてW杯に2回出場し、特にドイツW杯ブラジル戦の先制点は記憶と記録に残っている人も多いはず! 当時と変わらない端正なルックスのテクニシャンは今、長崎の地で新しい戦いに挑んでいる――

長崎FW玉田圭司の現在の哲学。「勝つために必要なのは、うまいヤツがまわりをカバーしてチームのために全力を尽くすこと」

4月に39歳になった。J1昇格を目指すチームのために「うるさいオッサンだなと思われたって全然いい」と語る。(撮影/熊谷貫)
4月に39歳になった。J1昇格を目指すチームのために「うるさいオッサンだなと思われたって全然いい」と語る。(撮影/熊谷貫)

長崎を語るとき、主語は“自分”ではなく“チーム”か“チームメイト”になる

ベテランになればなるほど、大きな変化を遠ざけがちだ。

決してネガティブな意味ではなく、それはむしろ常道。成功と失敗を重ねながら己のスタイルにたどり着いており、変化よりも深化を求めているとなればうなずける。ケガや年齢に合わせた柔軟性の変化ならまだしも、「こうありたい」と自らの理想が先にある強硬性の変化に向かうベテランがいると目を引いてしまう。

強硬性の変化とは、つまり自分が望む姿も変わっていくということ。未完成な部分を感じさせ、それが年齢不相応にも見えてくる。「若さっていいな」が、まったく過去形じゃない。それが39歳、玉田圭司の「現在」である――

緑が映える山々と、青が光る大村湾の海。

自然あふれる諫早の環境で、彼は黙々とピッチの外を走って汗を流していた。アルビレックス新潟戦(5月11日)で「ちょっと痛めたところがあって」後半早々に途中交代したため、全体トレーニングに合流せずに別調整となっていた。

契約満了で名古屋グランパスを退団して、今季からJ2のV・ファーレン長崎に完全移籍した。新潟戦までリーグ戦すべての試合に先発出場。疲労も溜まっているのかと思いきや、首を横に振って口元を緩める。

「すぐに(チームに)戻れると思うんで大丈夫ですよ。V・ファーレンのためにしっかり働かなきゃならないんで」

アラフォーにして、表情も言葉もさわやか極まりない。降り注ぐ太陽の日射しが、玉田にはよく似合う。

その新潟戦で、らしくないシーンがあった。

前半7分だった。玉田はトップの位置から降りてパスを引き出して、左サイドの香川勇気に展開。そこからクロスが送られて、ゴール前でフリーとなっていた2トップの相棒・呉屋大翔がヘディングで決めて先制した。

チャンスメークは、らしいプレーだ。しかしその後が、ちょっと意外だった。呉屋に抱きつき、「よくやったな」とばかりに背中をポンと叩く。その前には呉屋のガッツポーズより前に、両手を挙げて喜びを表現していた。

これまでのクールなイメージは消え、ホットな感情がのぞいた。そう感想を伝えると、照れ笑いを浮かべた。

「それまで2試合勝てていなくて、あの1点はチームにとって本当に大きかったんです。J1に昇格するためにはやっぱり勝ちを重ねていかなきゃいけないし、成績というものが何より大事になってくるので」

ストライカーはどこか独善的な雰囲気が漂うもの。そうでなければ、ゴールの結果で評価される仕事は務まらない。玉田もつい最近まではそちらに近かったはず。だが今はまわりを活かす役割にフォーカスを当てて意欲的に取り組んでいる。それも自らが望んで。長崎を語るときの彼は、自分を主語にしない。チームか、チームメイトばかりだ。

相棒の呉屋は25歳。玉田とはひと回り以上年齢が違う。
練習では後輩に対して思ったことを、ズバズバと言うそうだ。

「気がついたことは、ハッキリ言うようにしていますよ。それはアイツだけじゃないですけど。ハアッ?って思っているヤツも、中にはいるかもしれない(笑)。でも嫌われたって構わないし、うるさいオッサンだなと思われたって全然いい。ひと言が(心に)響いてくれたり、ムカついてでも残ってくれたら、それだけでいい」

自分の考えをぶつけてくる後輩もいるという。それなら大歓迎だ。活気なくして、チーム力は上がっていかない。そのために「うるさいオッサン」を喜んで買って出る。

ワールドカップに2大会続けて出場して、J1での優勝経験もある。もっと威厳を誇示してもいいのに、キャリアの浅い若手に目線を合わせて彼らを引き上げようとする。独善的なストライカー気質をだいぶ薄めているような印象を受ける。

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二宮寿朗

にのみや・としお●スポーツライター。1972年、愛媛県生まれ。日本大学卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社し、格闘技、ラグビー、ボクシング、サッカーなどを担当。退社後、文藝春秋「Number」の編集者を経て独立。様々な現場取材で培った観察眼と対象に迫る確かな筆致には定評がある。著書に「松田直樹を忘れない」(三栄書房)、「サッカー日本代表勝つ準備」(実業之日本社、北條聡氏との共著)、「中村俊輔 サッカー覚書」(文藝春秋、共著)など。現在、スポーツ報知にて「週刊文蹴」(毎週金曜日)、Number WEBにて「サムライブル―の原材料」(不定期)を好評連載中。

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