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二宮寿朗「1980年生まれ。戦い続けるアスリート」
不惑が間近に迫る年齢になりつつも、変わらず戦い続ける1980年生まれのアスリートたちに、スポーツライター二宮寿朗氏が迫るこの連載。
サッカーの中村憲剛選手、バスケットボールの田臥勇太選手、野球の館山昌平投手に続く、4人目のアスリートは、サッカーの大黒将志選手。
かつて日本代表をワールドカップに導いた“大黒様”は、日本と世界を渡り歩き、12チーム目となるJ2の栃木SCのフォワードとして、いまもゴールを決め続けている。“流浪のストライカー”といわれる男の真実に迫る――

J2史上初の100ゴール! 大黒将志はバリバリの理論派だからこそ、38歳でも点を取り続ける。

染め直したばかりのアッシュの髪とイエローのユニフォームが青空に映える(撮影/熊谷貫)
染め直したばかりのアッシュの髪とイエローのユニフォームが青空に映える(撮影/熊谷貫)

ゴールにこだわり続け、史上初となるJ2通算100ゴールを達成!

トレードマークの金髪が、アッシュに落ち着いていた。
「いや、色が落ちてくるといつもの(金髪の)ような感じになっていくんです」

小春日和の栃木・河内総合運動公園力上競技場。居残りのシュート練習を終えた後、サラサラの髪を手でほぐす仕草をする大黒将志はそう言って屈託のない笑顔を向けた。
金髪が揺れれば、ゴールネットも揺れる。それはライオンのたてがみのように、敵を震え上がらせる。

日本を、世界を渡り歩いてきて、このJ2栃木SCで12クラブ目になる。昨シーズン、流浪のストライカーは移籍1年目で得点ランキング6位の12ゴールをマークするとともに、史上初となるJ2通算100ゴールを達成した。

39歳を迎える今シーズンも好調だ。開幕から5戦目のアウェー、レノファ山口戦(3月24日)でPKをきっちり決めて初ゴールを奪っている。

今もバリバリのストライカーであることに変わりない。だが、“献身な”という言葉がふさわしいほどの守備は、かつて敢えて装備してこなかったものだとも思える。

「フォワードの仕事はとにかくゴールすること」

ことあるごとに彼は言ってきた。守備はストライカーの評価対象外とばかりに、ゴールにがっついてきた。そんな“ゴール職人”にどのような心境の変化があったというのだろうか。そこには栃木SCとの出合いが、深く関係していた。

2年前、大黒は決断に迫られていた。

2017年シーズン、モンテディオ山形からレンタル元の京都サンガに復帰したものの、与えられた役割はスーパーサブ。チームは前年から順位を大幅に落とし、大黒自身もJ2では自己最小の6ゴールにとどまった。しかしながら出場時間(855分)におけるゴール率は、142.5分に1ゴール。これは9ゴールをあげた前年よりも上になる。しかしクラブの評価は、大黒を満足させるものではなかった。

栃木からレンタル移籍のオファーが届いたものの第一印象は良いものではなかったようだ。

「J3から昇格したことを僕、知らなかったんですよ。だから代理人に『申し訳ないけどJ3には行かない』と断ったんです。そうしたら『J2昇格を決めて、大黒を欲しいと言ってくれている』と。じゃあ、1回お話を聞きましょうかとなったんです。

あのとき36歳で、(京都から)評価されてへんなって感じていたし、ほかにいい話がなかったら、別に(現役を)やらんでいいかなとも思ったんです。得点のところの仕事はやっているつもりなのに、年齢がどうとか言われてしまう」

もし栃木に魅力を感じず、ほかにもオファーがないなら現役引退という選択肢も頭には、ちらついていた。だがそんな考えは、吹き飛ぶことになる。

「実際に話を聞いて、僕のことを必要としてくれているんだと伝わってきました。すごく求めてくれた。栃木のために頑張ろうって思ったんです」

ストライカーの心に、火がついた瞬間だった。

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二宮寿朗

にのみや・としお●スポーツライター。1972年、愛媛県生まれ。日本大学卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社し、格闘技、ラグビー、ボクシング、サッカーなどを担当。退社後、文藝春秋「Number」の編集者を経て独立。様々な現場取材で培った観察眼と対象に迫る確かな筆致には定評がある。著書に「松田直樹を忘れない」(三栄書房)、「サッカー日本代表勝つ準備」(実業之日本社、北條聡氏との共著)、「中村俊輔 サッカー覚書」(文藝春秋、共著)など。現在、スポーツ報知にて「週刊文蹴」(毎週金曜日)、Number WEBにて「サムライブル―の原材料」(不定期)を好評連載中。

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