よみタイ

二宮寿朗「1980年生まれ。戦い続けるアスリート」
不惑が間近に迫る年齢になりつつも、変わらず戦い続ける1980年生まれのアスリートたちに、スポーツライター二宮寿朗氏が迫るこの連載。
中村憲剛選手田臥勇太選手館山昌平投手大黒将志選手玉田圭司選手に続く6人目のアスリートは、木村昇吾選手です。
初回は、クリケット選手としてのいま、2回目はカープ時代までの歩み、3回目はFA宣言の真相、についてお伝えしまいた。最終回の今回は、野球でもクリケットでも、向上心を持ち続ける木村の思考法について――

大谷翔平の160kmを打った誇りと、“もう一人の自分”が、クリケット木村昇吾に「楽してないか?」と問い続ける

「本来は怠け者」だという。だがそうしてこなかったことは、この表情、その皺ひとつが雄弁に語る。(撮影/熊谷貫)
「本来は怠け者」だという。だがそうしてこなかったことは、この表情、その皺ひとつが雄弁に語る。(撮影/熊谷貫)

プロ野球時代もいまも、もう一人の自分が楽することを許してくれない

木村昇吾には、もう一人の自分がいる。

努力して、目いっぱい取り組んで、あきらめずに向上心を持ち続ける。
この“本当の自分”と“本来の自分”は違う。彼は苦笑い気味に言う。

「本来は、かなり怠け者だと思うんです。楽をしたいですよ、そりゃあ。プロ野球時代、そんなんじゃ活躍できないことは分かっていても、しんどいな、これ以上の練習は面倒くさいなって帰ろうとする自分がいました。するともう一人の自分が必ず出てくるんです。“楽をしようとしてるやろ。えーよ、でも、なりたい自分になられへんで。それでもええんやな”って。結局“しゃーない”となって室内練習場に入って、10分だけ打ってから帰ろってなる。やりはじめたら集中するようになって10分なんかじゃ終わらない。結局、4箱分のボールを打ってるわけです。一歩踏み出して、しんどいほうを選えばいいことが待っているんだと本当の自分は分かっている。

(クリケットの世界に飛び込んだ)今もそうですよ。家のソファーで寝転んでいたら、もう一人が耳もとでささやいてくる。“楽をしようとしてるな、えーよ、なりたい自分になられへんけど”って。嫁もそれを分かっているんで、“練習に行くんでしょ。いってらっしゃい”となる(笑)」

楽をしようとする自分のケツを叩き、怠けを追い出す。本来を追い出して本当の自分に戻してあげる。

練習はきつい。きついからうまくなる。うまくなるからもっと競技が好きになる。好きになるからもっと練習しなきゃいけないと思うようになる。練習はきつい、きついから……。このローテーションがルーティンとなり、15年間に及ぶプロ野球生活の土台となったことは言うまでもない。クリケットでもその姿勢は変わらない。

1 2 3

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Twitterアカウント
  • よみタイ公式Facebookアカウント

関連記事

よみタイ新着記事

新着をもっと見る

二宮寿朗

にのみや・としお●スポーツライター。1972年、愛媛県生まれ。日本大学卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社し、格闘技、ラグビー、ボクシング、サッカーなどを担当。退社後、文藝春秋「Number」の編集者を経て独立。様々な現場取材で培った観察眼と対象に迫る確かな筆致には定評がある。著書に「松田直樹を忘れない」(三栄書房)、「サッカー日本代表勝つ準備」(実業之日本社、北條聡氏との共著)、「中村俊輔 サッカー覚書」(文藝春秋、共著)など。現在、スポーツ報知にて「週刊文蹴」(毎週金曜日)、Number WEBにて「サムライブル―の原材料」(不定期)を好評連載中。

週間ランキング 今読まれているホットな記事