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二宮寿朗「1980年生まれ。戦い続けるアスリート」
不惑が間近に迫る年齢になりつつも、変わらず戦い続ける1980年生まれのアスリートたちに、スポーツライター二宮寿朗氏が迫るこの連載。
中村憲剛選手田臥勇太選手館山昌平投手大黒将志選手玉田圭司選手木村昇吾選手に続く7人目のアスリートは、福岡ソフトバンクホークスの和田毅投手です。

初回は試練を乗り越えるための考え方についてお伝えしました。今回はどんなに結果を出しても変わらない、その客観性の源泉について――

ソフトバンク和田毅の「大したことない精神」が、成功への客観性を生む。

等身大の姿は、絶やさぬ笑顔にもよくあふれている。(撮影/熊谷貫)
等身大の姿は、絶やさぬ笑顔にもよくあふれている。(撮影/熊谷貫)

「結果が出ていない以上は(年俸を)下げられても何も文句は言えない」

和田毅は、等身大の人だ。

リーグ制覇、日本一、最多勝、リーグMVP……ホークスでいくらきらびやかな栄光を手にしても、虚栄心の欠片すら見当たらない。「ありのまま」という表現がしっくりくる。ゆえに自分を、またはケガや不調といった自分に起こる負の現実を客観的に受け止めることができるのかもしれない。

岡目八目。
岡(脇)から見る目は八目先を見越す、との囲碁用語。つまりは対局者よりも冷静に状況判断できるとの意味から「第三者目線に立つほうが客観的に物事を見つめること」を表わす。彼はまさに自分に起こる事象に対して第三者的観点を常に持ち合わせている。

ネガティブな事象を無理やりポジティブに転換するのではない。むしろ運命とばかりにそのまま受け入れる。

昨年末の契約交渉で4億円だった年俸は野球協約の減額制限を大幅に超える3億円減の1億円となった(プラス出来高払い、金額は推定)。3年契約の初年度こそ15勝を挙げたものの、左ひじのケガに苦しんだ一昨年は4勝、そして左肩痛に悩まされた昨季は1軍登板がなかった。とはいえ本人の予想を超えているかもしれない超大幅なダウンにショックを受けるかと思いきや、ニュース報道に映し出された彼はサバサバと時折、笑みを交えてメディアの質問に応じていた。

その話題を持ち出すと、彼は心静かに球団への感謝を口にするのだ。

「結果が出ていない以上は(年俸を)下げられても何も文句は言えないですし、それでも提示してもらえたっていうのは逆にありがたい。そういう気持ちのほうが強いですね。球団には感謝していますし、期待に応えなきゃいけないと思ってやっています。

この年齢になってくると投げたくとも投げられないピッチャーが増えてくる。体が元気でもクビを切られる選手も出てくる。そのなかで『(肩の)ケガが治ったら期待している』と言っていただいたし、絶対に治して頑張ろうってあらためて思うことができた。2、3年一つのケガで苦しむ人もいるのに、僕は1年もかかっていない。1、2年経っても治らなかったらさすがに自ら身を引かなきゃいけないだろうなってもちろん覚悟もしていました。ただ野球をやっている以上、ケガは起こりうること。ケガなく野球人生を終えれば最高ですけど、そんな人なかなかいないですからね」

サバサバと淡々と。冷静に凝視できるのも、広い視野と深い懐があるからだ。

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二宮寿朗

にのみや・としお●スポーツライター。1972年、愛媛県生まれ。日本大学卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社し、格闘技、ラグビー、ボクシング、サッカーなどを担当。退社後、文藝春秋「Number」の編集者を経て独立。様々な現場取材で培った観察眼と対象に迫る確かな筆致には定評がある。著書に「松田直樹を忘れない」(三栄書房)、「サッカー日本代表勝つ準備」(実業之日本社、北條聡氏との共著)、「中村俊輔 サッカー覚書」(文藝春秋、共著)など。現在、スポーツ報知にて「週刊文蹴」(毎週金曜日)、Number WEBにて「サムライブル―の原材料」(不定期)を好評連載中。

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