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自分と人を信じ抜く力があるから、ソフトバンク和田毅は試練に強い!

取材は復帰を目指して調整中の8月1日。屋内練習場でも、自分の体と向き合い、ひとつひとつ集中してトレーニングにのぞむ。(撮影/熊谷貫)
取材は復帰を目指して調整中の8月1日。屋内練習場でも、自分の体と向き合い、ひとつひとつ集中してトレーニングにのぞむ。(撮影/熊谷貫)

プロでの活躍と長いキャリアを経ても、聞く耳を持つ大切さを忘れない。

あの投球フォーム改造から20年。

様々な栄光を手にしても、誰よりも努力しようとする姿は変わらない。土橋トレーナーとの出会いのように、誰よりも聞く耳を持とうとすることを忘れない。

昨年、春季キャンプで左肩に違和感を覚え、一軍から離れた。初めて痛める箇所、骨がぶつかるような感覚だった。チームのトレーナー、スタッフと相談しながらリハビリメニューをこなした。あらゆる治療も試した。それでもなかなかうまくいかない。秋からは血小板を使用して組織の修復、再生を促すPRP療法に踏み切った。一軍での登板はゼロに終わったものの、復帰を信じてやみくもに懸命に取り組む姿勢が快方に導いていく。いろんな人の意見や情報をもらいながら、彼は投手生命の危機を脱したのだった。

今年の6月23日、セパ交流戦天王山。和田は先発のマウンドに登った。巨人を5回1失点に抑える力投。伸びのあるストレートは健在だ。交流戦優勝が651日ぶりの勝ち星となった。

和田は言う。

「正直、何かのおかげで(肩が)治ったというよりはやってきた全部のおかげ。(メンタル的に)波はありましたけど、ケガの途中は“もう治らないな”とあきらめるんじゃなくて、“だったら次は何をやればいいだろう”っていう考え方でした。トレーナーさんにも『次は何をやればいいかな?』とかしょっちゅう聞いていたんで、すごく悩ませていたのかもしれない。一理あるなと思ったものは、すべて取り入れてやっていましたから」

立ち止まるのではなく、走る。閉ざすのではなく、開く。
ケガとの戦いでも彼は前向きに思考を走らせようとした。前向きに周りとコミュニケーションを取ろうとした。やるなら徹底的に――

和田毅は試練に強い。
自分を、人を、信じるから強い。

第2回に続く)

profile
わだ・つよし/1981年2月21日生まれ、島根県出身。福岡ソフトバンクホークス所属。
浜田高校から早稲田大学に進学。4年次にはエースとして52年ぶりの春秋連覇達成に貢献。2003年、福岡ダイエーホークスに入団するや14勝で新人王の活躍、日本シリーズでは新人ながら胴上げ投手に。12年海外FA権行使し、ボルチモア・オリオールズに移籍。16年より福岡ソフトバンクホークス復帰。6年ぶりの最多勝利と最高勝率を鮮烈な復帰を飾る。
日本での通算記録は、130勝69敗。防御率3.13。(2019年9月3日現在)
その他最新情報は球団公式サイトでチェック! ◆https://www.softbankhawks.co.jp/

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二宮寿朗

にのみや・としお●スポーツライター。1972年、愛媛県生まれ。日本大学卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社し、格闘技、ラグビー、ボクシング、サッカーなどを担当。退社後、文藝春秋「Number」の編集者を経て独立。様々な現場取材で培った観察眼と対象に迫る確かな筆致には定評がある。著書に「松田直樹を忘れない」(三栄書房)、「サッカー日本代表勝つ準備」(実業之日本社、北條聡氏との共著)、「中村俊輔 サッカー覚書」(文藝春秋、共著)など。現在、Number WEBにて「サムライブル―の原材料」(不定期)を好評連載中。

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