2023.10.25
銀行のお声かけ係と顔の認識
口には出さなかったが、
(何で、私が)
とむかついたのは事実である。男性には声をかけられなかったのに、どうして女性に代わったとたんに声をかけられるのか。そして前後に並んでいる人々をそっと見てみると、たしかにそのなかでは私がいちばん年長のようだった。それでも、
(なぜ私?)
と思ったのである。年長なのは間違いないが、
(私よりも、三人後ろに並んでいる、ぼーっとした若いお姉ちゃんのほうが、ずっと詐欺にひっかかりやすい気がする)
と、あっちに先に行けばいいのになどとむくれたのだった。
五十代でも特殊詐欺にひっかかってしまう人はいるので、ある程度の年齢枠に入る人には声をかけているのかもしれない。私と同年配の女性が来たら、同じように声をかけるのだろうかと見ていたが、残念ながら入ってくるのは二十代、三十代くらいの人ばかりで、私と同年配の女性は姿を見せなかった。
ところがそれ以降、タイミングが悪く、ATMに行くたびに、その女性のお声がけ係が立っている。そして必ず、私に近寄ってきて、
「特殊詐欺の電話がかかってきて、こちらに誘導されているのではありませんか」
と聞くのである。あまりにたびたび同じことを聞かれるので、
「前にもいわれました!」
といってやりたいのだが、私も相手の顔をはっきり覚えていない。背丈やヘアスタイルからして、いつも同じ人のような気もするのだが、もしも違う人にそんなことをいったら失礼なので、もごもごと口ごもりながら、同じ話をするしかなかった。男性には声をかけられなかったのに、どうして女性には声をかけられるのか。「この人は前期高齢者!」と、女性警察関係者の鋭い勘が働いているのかもしれないが、人前で声かけをされるほうは恥ずかしいし、私個人としてはとても迷惑なのだ。