2022.8.24
カフェイン抜きと雑草とのにらみ合い
愛猫を見送り、ひとり暮らしとなった群ようこさんの、ささやかながらも豊かな日常時間をめぐるエッセイです。
版画/岩渕俊彦
第6回 カフェイン抜きと雑草とのにらみ合い

先日、漢方薬局での体調チェックに行くと、先生から、
「体の調子がとてもいいけれど、何かしましたか?」
と聞かれた。実はその日は、自分では体調がいいとは感じず、やや睡眠不足気味だったのだが、自分の感覚と体内の状態は違うらしい。そういわれて私には、思い当たることがあった。
ひと月ほど前、インターネットでたまたま、海外の健康情報が翻訳されたものを目にした。そこには様々な食べ物が、体に「とてもよい」「よい」「普通」「やや悪い」「悪い」といった順番に並んでいた。こういった情報は巷にあふれているので、特に目新しいものではなかった。「とてもよい」から「普通」といわれているものは、精製されていない穀類、野菜、魚介、肉など、多くの人がふだん食べているもので、「やや悪い」「悪い」のは、ファストフードやトランス脂肪酸が含まれているものだった。外国人はほとんど海藻を食べないので、リストには入っていなかったが、日本人の食事だったら、食べてよいもののなかに、味噌や海藻なども入ってくるだろう。
「悪い」ものはなるべく避け、「普通」から上のものを食べていればいいのだろうとリストを見ていくと、「とてもよい」食べ物のなかで、ダークチョコレートだけを食べていなかった。含まれているカカオポリフェノールが体にいいらしい。たまに食べることはあったけれど、常食してはいないので、オーガニックのカカオ含有量が多いダークチョコレートを買い求め、一日に二・五センチ角の大きさのものをひとかけずつ、食べるようにした。そして一枚、食べ終わり、二枚目に入った。
そのあたりから、体調に変化があった。動悸を感じるようになってきたのである。今までそんなことがなかったのにと、これまでと何か違う行動をしただろうかと考えたときに気づいたのが、少量だが毎日食べ続けていたダークチョコレートだったのだ。