よみタイ

群ようこ「六十路通過道中」

カフェイン抜きと雑草とのにらみ合い

27年ぶりの引っ越しにともなう不要品整理。溜まりに溜まったものを処分し厳選するなかで、残したもの、そばに置いておきたいものとは。そして、来るべき七十代へ向けて、すること、しないこととは。
愛猫を見送り、ひとり暮らしとなった群ようこさんの、ささやかながらも豊かな日常時間をめぐるエッセイです。

版画/岩渕俊彦

第6回 カフェイン抜きと雑草とのにらみ合い

版画:岩渕俊彦
版画:岩渕俊彦

 先日、漢方薬局での体調チェックに行くと、先生から、
「体の調子がとてもいいけれど、何かしましたか?」
 と聞かれた。実はその日は、自分では体調がいいとは感じず、やや睡眠不足気味だったのだが、自分の感覚と体内の状態は違うらしい。そういわれて私には、思い当たることがあった。
 ひと月ほど前、インターネットでたまたま、海外の健康情報が翻訳されたものを目にした。そこには様々な食べ物が、体に「とてもよい」「よい」「普通」「やや悪い」「悪い」といった順番に並んでいた。こういった情報はちまたにあふれているので、特に目新しいものではなかった。「とてもよい」から「普通」といわれているものは、精製されていない穀類、野菜、魚介、肉など、多くの人がふだん食べているもので、「やや悪い」「悪い」のは、ファストフードやトランス脂肪酸が含まれているものだった。外国人はほとんど海藻を食べないので、リストには入っていなかったが、日本人の食事だったら、食べてよいもののなかに、味噌みそや海藻なども入ってくるだろう。
「悪い」ものはなるべく避け、「普通」から上のものを食べていればいいのだろうとリストを見ていくと、「とてもよい」食べ物のなかで、ダークチョコレートだけを食べていなかった。含まれているカカオポリフェノールが体にいいらしい。たまに食べることはあったけれど、常食してはいないので、オーガニックのカカオ含有量が多いダークチョコレートを買い求め、一日に二・五センチ角の大きさのものをひとかけずつ、食べるようにした。そして一枚、食べ終わり、二枚目に入った。
 そのあたりから、体調に変化があった。動悸どうきを感じるようになってきたのである。今までそんなことがなかったのにと、これまでと何か違う行動をしただろうかと考えたときに気づいたのが、少量だが毎日食べ続けていたダークチョコレートだったのだ。

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群ようこ

むれ・ようこ●1954年東京都生まれ。日本大学藝術学部卒業。広告会社などを経て、78年「本の雑誌社」入社。84年にエッセイ『午前零時の玄米パン』で作家としてデビューし、同年に専業作家となる。小説に『無印結婚物語』などの<無印>シリーズ、『散歩するネコ れんげ荘物語』『おネコさま御一行 れんげ荘物語』などの<れんげ荘>シリーズ、『今日もお疲れさま パンとスープとネコ日和』などの<パンとスープとネコ日和>シリーズの他、『かもめ食堂』『また明日』、エッセイに『ゆるい生活』『欲と収納』『よれよれ肉体百科』『還暦着物日記』『この先には、何がある?』『じじばばのるつぼ』『きものが着たい』『たべる生活』『これで暮らす』『小福ときどき災難』『今日は、これをしました』、評伝に『贅沢貧乏のマリア』『妖精と妖怪のあいだ 評伝・平林たい子』など著書多数。
最新刊は、エッセイ『スマホになじんでおりません』。

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