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群ようこ「六十路通過道中」

庭の落ち葉集めと編み物熱

27年ぶりの引っ越しにともなう不要品整理。溜まりに溜まったものを処分し厳選するなかで、残したもの、そばに置いておきたいものとは。そして、来るべき七十代へ向けて、すること、しないこととは。
愛猫を見送り、ひとり暮らしとなった群ようこさんの、ささやかながらも豊かな日常時間をめぐるエッセイです。

版画/岩渕俊彦

六十路通過道中 第1回 庭の落ち葉集めと編み物熱

 これまで住んできたのが、アパート、マンションといった集合住宅が多かったので、新しく引っ越した戸建ての一階の部屋はとても新鮮だった。年末に落ち葉掃きをしたのもはじめてだった。集合住宅では周囲に落ち葉が積もっても、大家さんがきれいに掃除をしてくれたからだった。目の前の隣家の庭には多くの木が植えてあり、年末にはこちらの庭にも落ち葉が増えてきていた。すると大家さんが、
「落ち葉がまってきたら、お庭に入ってお掃除してもいいですか」
 とおっしゃった。今の家は扉の鍵を開けないと、外から私の賃貸部分の庭には入れない。私は、
「それは申し訳ないので、こちらでやります」
 と返事をした。
 冬の暖かい日に、とりあえず手元にある庭掃除用のほうきで、落ち葉を掃いてみたのだけれど、一段高くなっているテラス以外のところには、防犯のために踏むと音がする砂利が敷いてあり、掃いていると落ち葉がその下にもぐってしまう。上から力を加えて掘り起こすよりも、水平に砂利の上を払ったほうがいいような気がしたので、今度はテーブルや棚の上などを払う手ぼうきを使ってみたら、エアコンの室外機の奥のほうなどの細かい部分の落ち葉も掃き出すことができて、とても具合がよかった。
 また落ち葉を掃き集めるのも、最初はちりとりを使っていたのだが、それよりもゴム手袋をして手で集めてゴミ袋に入れたほうが、効率がよかった。そしてそんな今までやったこともない作業を、しゃがみながらやっているうちに、とっても楽しくなってきたのである。ふだんはパソコンの前に座り、三十分に一度は席をはずして休憩するけれど、ほとんど座業なのは間違いない。日常のなかで外で陽を浴びながら体を使ってやる作業など、したことがなかったのでとても新鮮だった。
 庭のスペースだけではなく、玄関横に植えてある、モミジの落ち葉もついでに掃除しておいた。それほど量はないように見えたのに、集めた落ち葉が四十五リットルのゴミ袋にいっぱいになったのも達成感があった。次の冬はもっと効率的にできればと、インターネットで検索したら、穂の部分が密ではない、落ち葉掃き用の手ぼうきがあり、早速それを購入して、今年の冬のために準備している。

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群ようこ

むれ・ようこ●1954年東京都生まれ。日本大学藝術学部卒業。広告会社などを経て、78年「本の雑誌社」入社。84年にエッセイ『午前零時の玄米パン』で作家としてデビューし、同年に専業作家となる。小説に『無印結婚物語』などの<無印>シリーズ、『散歩するネコ れんげ荘物語』『おネコさま御一行 れんげ荘物語』などの<れんげ荘>シリーズ、『今日もお疲れさま パンとスープとネコ日和』などの<パンとスープとネコ日和>シリーズの他、『かもめ食堂』『また明日』、エッセイに『ゆるい生活』『欲と収納』『よれよれ肉体百科』『還暦着物日記』『この先には、何がある?』『じじばばのるつぼ』『きものが着たい』『たべる生活』『これで暮らす』『小福ときどき災難』『今日は、これをしました』、評伝に『贅沢貧乏のマリア』『妖精と妖怪のあいだ 評伝・平林たい子』など著書多数。

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