よみタイ

私は炭酸水と生きていく。疲労回復、整腸作用、血行促進……なんかすごいぞ、炭酸水!

ドラマ化もされた『死にたい夜にかぎって』で鮮烈デビュー。作家としての夢をかなえた爪切男が、いま思うのは「いい感じのおじさん」になりたいということ。これまでまったく興味がなかったのに、ひょんなことから美容と健康に目覚め……。中年男性が本気で挑む美容と健康にまつわるエッセイ連載です。

前回は人生初めて二重まぶたに挑戦してみた著者。
今回は、太る原因のひとつとしてやめていた炭酸飲料。でもやっぱりあのシュワシュワが忘れられない。ということで、同じ炭酸なら、美容や健康によいとされる「炭酸水」を飲んでみることに。

(イラスト/山田参助)

第44回 新しい恋の相手は炭酸水?

(イラスト/山田参助)
(イラスト/山田参助)

 もう潮時のようです。
 そろそろ私の犯した罪を告白せねばなりません。
 別れたはずのかつての恋人と、決して許されぬ逢瀬を繰り返してまいりました。
 そうです。私は炭酸飲料を隠れて飲んでいたのです。
「最近はルイボスティーを飲んでます」なんて洒落たことを公に言いながら、その裏でグビグビゴクゴクと炭酸飲料で喉を潤しておりました。
 日々の健康のためにと、過剰摂取気味だった炭酸飲料に別れを告げたはずなのに……でございます。本当に申し訳ありません。

 と反省しつつも、何もアスリートを目指しているわけでもないんだし、それに私、生粋のおじさんですもの、炭酸飲料に溺れたくなる夜のひとつやふたつぐらいあるんです。と逆ギレをしたくなるのも素直な気持ち。成功体験を読みたいのなら流行りの自己啓発本をおススメします。失敗と挫折があるからこそ輝く人生もあるのですよ。
 よし、もう開き直ってしまおう。やっぱり私は炭酸飲料とお別れできそうにない。それならそれでもう少し健康に配慮した炭酸飲料の嗜み方はないものかと思案した結果、私は「炭酸水」に行き着いた。

 「炭酸水」とは、水に炭酸ガス(CO2)が溶け込んだもので「ソーダ水」とも呼ばれている。コカ・コーラ、CCレモン、ドデカミンといった私が長年愛飲してきた「炭酸飲料」は、炭酸水に調味料と香料を混ぜ合わせたソフトドリンクの類である。それらは非常に飲みやすくかつ美味しい反面、糖分過多など健康に害を及ぼす可能性も捨てきれない。
 そこで今回は、無糖の炭酸水に挑戦してみることに。どうせ炭酸を飲むなら甘い方が美味しいし、「味がしない水は個性のない水だ」という偏見も手伝って、今まで見向きもしてこなかった炭酸水。コンビニ、スーパー、ドラッグストアにてその姿を見る機会が多くなってきたのは知っている。世の健康ブームに乗っかって炭酸水は結構幅を利かせているようだ。
 
 炭酸水は健康にも良いらしく、整腸作用と血行促進、さらに疲労回復やダイエットにも効果があるらしいという優れものだ。飲むだけでなく炭酸水でパックをしたり髪を洗う人もいるのだから驚いた。炭酸水っていったいなんなんだ。

炭酸水セレクション。
炭酸水セレクション。

 さて、今回購入したのはこちら。メジャーどころのウィルキンソンとサントリーの「天然水 THE STRONG」を抑え、西友やイオングループで販売されているプライベートブランドの炭酸水も購入。プライベートブランド物は安価なのでお財布に優しい。

 何はともあれ、まずは実飲だ。サントリーの天然水をゴクリゴクリ。うんうん、このシュワシュワがたまんねえんだよな。うんうん、……でも、なんだろう。甘~い炭酸飲料に毒された生活を送ってきた私には、シュワシュワだけじゃ物足りない。アーノルド・シュワルツェネッガーではなくてアーノルド・シュワで終わってしまうようなそんな感じだ。

 続けて、ほんのりとレモンやピンクグレープフルーツの味が足されているタイプの炭酸水を口にしてみる。ああ、確かにフルーツの味がする。炭酸との相性も抜群だ。しかし、まだまだ足りない。ポテトチップスのうすしお味、カールのうす味はあんなに美味しいのに、炭酸水のうす味には満足できないのは何故なんだ。

うすい! うすいよ。
うすい! うすいよ。

 何かいい方法はないものかと調べたところ、ジャムやシロップ、ビネガードリンクを炭酸水で割って、自分好みの炭酸水割りを作る方法があるらしい。ないものは自分で作る。人間はいつだってそうやって進化してきたのだ。

これで味を加えるぞ。
これで味を加えるぞ。

 というわけで急いで買ってきたものがこちら。カルディオリジナルのコーラシロップとバナナシロップ。ちょっとだけ高級そうなリンゴジャム、そしてミツカンが販売している「フルーティスRICH マンゴーピーチ」というビネガードリンクを購入してきた。

 まずはスタンダードなものがいいだろうと、コーラシロップを炭酸水で割ってみる。ラベルに書かれた説明文に従い、氷を入れたグラスに、よく冷えた炭酸水とコーラシロップを3:1の割合で配合する
 普段飲んでいるコーラと何が違うんだと言われたら、シロップの量を変えることで甘さを抑え、糖分過多にならないように調整できるということであろうか。

 くいっと飲んでみると、なんとも薬っぽい味がする。シナモン系があまり得意ではない私にはちょっと大人の味過ぎる。私は立派なおじさんだけど大人ではないのだ。のどごし爽やかなテイストも確かに感じるのだが、これならまだ普段飲んでいる養命酒の方が、自分の好みに近い気がする。

 ならばやってみればいいだけのこと。毎日朝夕飲んでいる養命酒の炭酸水割りを試してみる。うん、これならいける。慣れ親しんだ養命酒がシュワシュワしているだけでちょっと感動する。この感動はアレだ。子供の頃に初めてカルピスソーダを飲んだ時のアレに近い。カルピスがシュワシュワしただけでまるで別の飲み物になったかのような驚き、炭酸飲料は魔法の飲み物だと信じて疑わなかったあの気持ち。あの感動を私はいつの間に忘れてしまったんだろうか。私は今までなんて雑に炭酸飲料を飲んできたんだ。一番近くにいてくれる人に一番優しくしなきゃいけないのに……。なんだか悲しい気持ちになってくる。
 

コーラより普通に養命酒が好き。
コーラより普通に養命酒が好き。
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新刊紹介

爪切男

つめ・きりお●作家。1979年生まれ、香川県出身。
2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)にてデビュー。同作が賀来賢人主演でドラマ化されるなど話題を集める。21年2月から『もはや僕は人間じゃない』(中央公論新社)、『働きアリに花束を』(扶桑社)、『クラスメイトの女子、全員好きでした』(集英社)とデビュー2作目から3社横断3か月連続刊行され話題に。
最新エッセイ『きょうも延長ナリ』(扶桑社)発売中!

公式ツイッター@tsumekiriman
(撮影/江森丈晃)

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