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軍隊コスメにSNSマーケ。韓国美容ビジネスの最前線【韓国トレンドの裏事情vol.3 後編】

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日韓比較から見る、J-Beautyの弱点

日本のコスメについて見ると、クレ・ド・ポー ボーテやコスメデコルテのように、昔から欧米で高い評価を受けてきたブランドは健在です。ただ、最近のSNSを中心に広がる若い世代のトレンドという意味では、日本ブランドはやや存在感が見えにくいといわれることもあります。

日本企業には「完成度の高いものを届けたい」という意識が強く、準備が整うまで海外展開を慎重に進める傾向があるように感じます。ですが、日本ブランドの製品力そのものは非常に高い。

たとえばロート製薬のように、機能性や品質で高く評価されている商品は多くあります。実際、アメリカの人々は日本を訪れると、ドラッグストアで化粧品をたくさん買って帰ります。

ただ、それらの商品がSEPHORAのような欧米でメジャーなでコスメセレクトショップで広く展開されているかというと、そうではありません。そうした意味では、日本ブランドにはまだ伸びしろがあるのではないかと感じます。

海外市場を考えるうえで、日本のブランドが意識していく必要があるのは、トレンドの移り変わりの速さかもしれません。今は誰もがSNSを持ち、自分でも情報を発信する時代です。かつてのように大手メディアや雑誌だけが流行を決めるわけではありません。若い世代は、自分が見ているSNSやクチコミを信頼します。海外市場に挑戦するのであれば、こうしたスピード感もこれまで以上に重要になっていくのだと思います。

韓国の強みは「人材」と「スピード感」

実は今回、僕がいちばんお話ししたかったのは、人材の豊富さがK-Beautyを盛り上げているということです。これまで韓国で人気の高い業界といえば、IT企業や芸能事務所でしたが、今はコスメ業界にも非常に優秀な人が集まっています。

大手化粧品メーカーに就職するのではなく、自分たちで会社を興してブランドを立ち上げるという新しい成功パターンも増えています。
たとえば、世界160カ国以上で展開するAnuaは、ソウル大学を卒業した男性2人が立ち上げたスキンケアブランドです。
低刺激・天然由来成分メインという商品コンセプトと、AmazonやQoo10などグローバルECを中心にしたデジタルマーケティングによって人気を拡大しました。SNSの口コミやインフルエンサー戦略も功を奏し、北米や日本市場でヒット。2017年の会社創業から、わずか数年で売上を数千億ウォン規模にまで伸ばした急成長ブランドとして注目されています。

人口減少と少子高齢化に直面している韓国は、国内市場だけの売り上げには限界があります。そのため海外進出が必須で、その中でもビューティーは大きな可能性を持つ分野です。だからこそ多くの企業や投資がこの業界に集まっているのでしょう。

もともと韓国にとっては、中国が地理的にも文化的にも近く、漢方的なコンセプトも理解されやすい市場でした。一方、アメリカは人種や社会階層が多様で、難しい市場とされてきたため、これまでは後回しにされてきました。

ところが、中国市場は政治などさまざまな理由で海外ブランドの進出が難しくなり、韓国の大手ブランドはアメリカ市場へと大きく舵を切ったのです。その結果、韓国の化粧品輸出額は2024年に102億ドルと史上最高値を記録し、フランスやアメリカに次ぐ世界3大化粧品輸出国に。さらに2025年は最高値を塗り替え、114億ドルを記録しました。
こうした方向転換のスピードは、日本企業より韓国企業のほうが速いと感じます。

韓国ブランドの特徴は、このスピード感です。「まずはやってみる」という形で挑戦し、現地で反応を見ながら修正していく。ブランディングにおいては課題となる部分もありますが、変化の速い今の時代には、その柔軟さが強みになることもあります。

ビューティー市場はまだ新しい成功が生まれる余地のある市場です。韓国では今も新しいブランドが次々と生まれ、ユニークな商品が誕生しています。K-Beautyの勢いは今後もしばらく続いていきそうです。

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次回(9月18日公開予定)へ続く

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ジョエル・キンベック(JOEL KIMBECK)

 英ゴールドスミス・カレッジの大学院でメディアを専攻。広告企画会社勤務を経て2010年に独立し、ブランディングエージェンシー「STUDIO HANSOME」を設立する。ニューヨークを拠点に、ソウル、東京、パリ、ミラノを行き来してファッション、ビューティー、ライフスタイルのブランディングを手がけるクリエイティブ・ディレクター。
 LVMHグループ傘下のブランドをはじめ、モスキーノ、VERA WANG、メゾンキツネ、ラフシモンズ、ロベルトカヴァリ、TUMI、カルバン・クラインなどのファッションブランド、ロレアルグループ傘下やアモーレパシフィック傘下のビューティーブランドにおいて、ブランディング全般を担ってきた。 
 韓国の『W』『VOGUE』『GQ』、『月刊デザイン』『東亜日報』『週刊東亜』など多くの媒体でコラムを執筆中。著書に『ファッションミューズ』(2016年)、『FRESHNESS CODE』(2021年)がある。韓国人デザイナーの海外進出を支援する韓国政府のプロジェクト「コンセプトコリア」のコンサルタントとしても活躍。
@studiohandsome
https://www.studiohandsome.com/


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