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「推せないしんどさ」はASDなどの発達特性? グレーゾーン自認の「推せない者」が先送りにしていた課題に向き合ってみた

『貧困と脳 「働かない」のではなく「働けない」』(幻冬舎新書)『ネット右翼になった父』(講談社現代新書)など、実体験ベースに問題提起を続け支持を集める文筆家の鈴木大介さんによる新連載! 生まれてこのかた「推し」の対象がいたことがないという鈴木さん。「推し活」ブームのいま、あえて「推せない者のしんどさ」を言語化します。

前回「『流行りに乗れない』と進学・就職も詰んでいた日本社会? 『推し無き者』がしんどすぎた自身の進学と就職を振り返る」では、「推せない者」当事者である鈴木さんが「敷かれたレールに乗りたくても乗れない」ことで進学・就職活動で苦労したものの、それが結果的に現在の仕事に繋がった過程を振り返りました。

今回は「流行に乗れない」感覚=心理的リアクタンスと、発達特性との関連性について考察を深めていきます。

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「推せないしんどさ」=発達特性当事者の「何重苦」かのひとつの可能性?

連載を進めるにあたり、少々先送りにしてきた課題に正面から向き合いたい。それが、「流行りに乗れる心理が分からない」「他者を熱狂的に応援するファン心理そのもの分からない」「流行りを知っているのが常識・当たり前といった押しつけの圧に強い抵抗感を感じる」(これが心理的リアクタンス)といった感覚と、ASD(自閉スペクトラム症)などの発達特性の関わりについてだ。

今ではずいぶん表現も変わってきたが、少し前までは発達特性、特にASD当事者は人の気持ちや空気が読めないとか、共感性に欠けるといったネガティブな表現が使われることが多かった。実際にはそもそもの世界の感じ方(脳の情報処理の方法)がマジョリティとは異なるだけで、人の持つ感情が全く理解不可能といったサイコパス的な文脈とは全く異なると思うのだが、ファン心理や流行り・国民的〇〇を支持できる「マジョリティの心理が理解しようにも理解できない」というのは、脳の特性によってコミュニケーション面で困難を抱えがちな発達特性当事者への指摘ととてもオーバーラップするし、実際に心理的リアクタンスについて検索しようとすると、「心理的リアクタンス 発達障害」というまんまのサジェストまで現れる。

発達特性がある人々は、昨今最も大きく可視化されたマイノリティだろう。もし「推せない」「流行り社会しんどい」の苦しさに発達特性が関連するなら、この課題をマイノリティ論として昇華させるために、少々掘り下げが必要だろう。もしかしたらこのしんどさ、特性のある当事者が抱える「何重苦」かのひとつという可能性も?

発達特性当事者にはネガティブな印象ではなく、強いシンパシーと羨望を感じてきた

ということでまず前提として、僕は自身の発達特性について実はうっすらとは感じてきているが限りなくグレーゾーンではあると思っているタイプ(もちろん診断はない)であり、かつ特性がある当事者にネガティブな印象ではなく、逆に強いシンパシーを感じてきたタイプでもある。

グレーゾーンと感じている理由は、幼少期は間違いなく多動傾向だったものの、強いADHD(注意欠如・多動症)特性がある同級生に比較すればコントロールが困難なほどではなかったし、むしろ彼らの過剰なアクティブさや無謀なほどたくましい冒険魂に羨望を感じる側だった。そこそこ無茶な冒険はするタイプだったが、背後に「どこまでは冒険する・どこで引く」という打算のある小市民側であったと思う。

一方、他者との共感性の低さやそもそもの感じ方の違いについて指摘されることのあるASD特性については、世の中の常識とされることやルールを自身が納得しない限り受け容れられない・理解できないといった共感性・協調性の低さを感じさせる性格が強い半面で、幼いころから「他者の被っている理不尽に対して過剰に自分事として憤ってしまう」という極端な性格が、そのまま現在の職業につながっているから、むしろ部分的に過剰な共感力があるタイプ。

ただしこの「過剰な共感」について、ASD者は他者が「どうしてそのような感情を抱くのか」を直感的に理解する認知的共感力が低いとされる半面で、相手の感情そのものに共感しやすい情動的共感が強いというアンバランスさが指摘されることも多いから、その点ではグレーというより確定寄りの自認。

とはいえ、やはりASD者について指摘されることのある「空気を読まずに正論・持論が言える」といった部分については、自身より強く特性がある当事者に対して、やっぱり羨望の感情があった。

「空気を読まずに正論・持論が言える」ASD当事者に対して、羨望の感情があった(写真はイメージです)。(写真/PIXTA)
「空気を読まずに正論・持論が言える」ASD当事者に対して、羨望の感情があった(写真はイメージです)。(写真/PIXTA)

もちろん当事者はその特性の強さゆえに社会の中で「障害化」しており苦しんでもいるわけだが、半端なポジショニング(グレーゾーン)の自分は、彼らの突き抜け感には羨望を感じてきたということ。だが、そんな自認をベースに、実際に「流行りに乗れない」心理と発達特性を対比してみると、どうなるだろうか?

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新刊紹介

鈴木大介

すずき・だいすけ/文筆業・ルポライター
1973年千葉県生まれ。主な著書に若い女性や子どもの貧困問題をテーマにした『最貧困女子』(幻冬舎)、『ギャングース(漫画原作・映画化)』(講談社)、『老人喰い』(ちくま新書・TBS系列にてドラマ化)や、自身の抱える障害をテーマにした「脳が壊れた」(新潮社)、互いに障害を抱える夫婦間のパートナーシップを描いた『されど愛しきお妻様』(講談社・漫画化)などがある。
2020年、「『脳コワ』さん支援ガイド」(医学書院・シリーズケアをひらく)にて日本医学ジャーナリスト協会賞大賞受賞。近刊に『ネット右翼になった父』(講談社現代新書・新書大賞2024・5位)『貧困と脳 「働かない」のではなく「働けない」』(幻冬舎新書)など。

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