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SLIMの月面着陸成功は、「月面産業革命」の起爆剤になる!

アルテミス計画による有人月面探査は、2026年に予定されている(イメージ画像)
アルテミス計画による有人月面探査は、2026年に予定されている(イメージ画像)

NASAが中心となってスタートしたアルテミス計画ですが、実際は巨大な国際連携プロジェクト。2020年10月にこの計画を推進するために、アメリカ、日本、カナダ、イタリア、ルクセンブルク、UAE、イギリス、オーストラリアの8カ国でスタートしました。そこから各国の賛同を得て、2024年1月時点では31カ国が参加。世界が月面探査の重要性に気がつき、研究開発の熱が徐々に広がっていることが実感できますよね。

初期にアルテミス計画に賛同した国々でもアメリカのCLPSのような月面開発に特化した民間サービスの活用を推し進めようと、資金の流れができています。カナダでは月探査活動を進める企業や大学への支援として5年間で約140億円、オーストラリアでは月面探査とその先の火星探査を踏まえた開発予算として5年間で約130億円の予算が組まれました。その流れに、日本も負けていられません。

2023年11月に日本政府による衝撃の発表がありました。JAXAに10年間で1兆円規模の「宇宙戦略基金」を設立し、民間企業や大学をサポートして国内の宇宙ビジネスの活性化を目指す、というものです。CLPSのように月面に特化しているものではないことから、宇宙ビジネス全般の底上げを狙うものだと考えられます。政府が主導となってここまで巨大な予算が、宇宙という1つの分野に、そして国内の民間や大学に提供されることに業界内外で大きな驚きがありました。アメリカ、カナダ、オーストラリアの数字と比較しても、この金額は破格です。

この先に期待されている動きは、今後の月面探査は政府や国主導のものではなくなるということ。期待が集まっているのは民間企業の力です。そこから展開される「月面産業革命」こそが今後の月面探査・宇宙探査の未来を担うキーポイントです。

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佐々木亮

ささき・りょう
理学博士。独立行政法人理化学研究所、NASAの研究員として研究に携わり、その経験と知見を生かし、ポッドキャスト「佐々木亮の宇宙ばなし」を毎日配信している。旬の宇宙トピックスを親しみやすく解説する内容で注目を集め、Apple Podcast日本ランキング3位を達成。第3回Japan Podcast Awardsも受賞する。現在はデータサイエンティスト、中央大学講師として活動している。
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