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「流行りに乗れない」と進学・就職も詰んでいた日本社会? 「推し無き者」がしんどすぎた自身の進学と就職を振り返る

『貧困と脳 「働かない」のではなく「働けない」』(幻冬舎新書)『ネット右翼になった父』(講談社現代新書)など、実体験ベースに問題提起を続け支持を集める文筆家の鈴木大介さんによる新連載! 生まれてこのかた「推し」の対象がいたことがないという鈴木さん。「推し活」ブームのいま、あえて「推せない者のしんどさ」を言語化します。

前回「敷かれたレールに「乗らない」のではなく「乗れない」……推せない者が現代日本を生きていくうえで生じる不利益と苦しみ」では、「推せない者」当事者である鈴木さんが半生を振り返り、敷かれたレールに「乗れない」ことへの絶望感と劣等感に至るまでの過程をたどりました。
今回はその後編です。

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前回より続く

理屈や理由が腑に落ちなければ「そのように決まっていることだから」「そうするのが当たり前だから」「みんながそうしているから」といったあらゆることに従うことができない。失敗すると言われているようなことでも、まず自分のやりたいようにやってみて失敗するまでやってみなければ納得できない。

世間や世代の流行り事・国民的〇〇にことごとくついていけず、現代の推し活ブームなどに圧を感じることの背景には様々な心理や性格があるだろうが、僕の場合は上記のような「心理的リアクタンスが強い」とされるような性格がその根底にあることが分かった。

けれどそれは単に「世代の中で孤独」では到底済まない、生きていくうえでリアルな実害を伴うものだった。その性格であった結果、僕は10代後半・20代前半で、詰んだ。

具体的には、進学・就職のタイミングでのことだ。

メディア就職に有利な大学・学部の「時事問題」が絶望的にわからない

こんな性格では、大人が勧める進学就職といったレールには乗れない!「乗ろうものなら行く末は野垂れ死にか」という不安から、学校そっちのけで手当たり次第多種多様なバイトを経験し、勢い余って国際協力系のボランティア活動などにも首を突っ込む中で、自分に何ならできそうなのか、何ならやりたくて何なら続けられそうなのかを見極めようとした10代半ば。

結果としてたどり着いたのは、「モノを書く仕事で食べていきたい(国際協力などで現場活動する人々の国内後方支援的な出版物・表現物を作りたい)」という熱量ばかり高いわりにぼんやりして、同じようなことを望みそうな人が山ほど居そうな着地点だった。

だが、進学である。

デジタルメディアの存在しない当時、書く仕事を目指す順当なルートといえば、新聞・書籍・雑誌等を発行する会社(新聞社・出版社)に就職するのに有利な学部のある大学に進学すること。ここでまず第一の大きな詰みが到来した。

通っていたのは中高一貫の進学校だったが、そもそも「進学するのが当たり前だから進学する」というムードからは当然全く離脱していて、高校2年になれば当たり前に周囲が受験の準備に入っていくムーブからも置いて行かれてしまうのだ。

そして、遅ればせながら「書く仕事につながる学部」という選択肢にたどり着くも、そこで僕の前をドカンと阻んだのがメディア就職に有利と定めた目標大の学部にあった「時事問題」についての小論文課題だった。

これはもう僕にとって絶望的だった。

メディア就職に有利な「書く仕事につながる学部」の受験科目には、ほぼもれなく「流行に乗れない勢」にはちんぷんかんぷんな時事問題についての小論文課題が……。(写真/PIXTA)
メディア就職に有利な「書く仕事につながる学部」の受験科目には、ほぼもれなく「流行に乗れない勢」にはちんぷんかんぷんな時事問題についての小論文課題が……。(写真/PIXTA)

自身の関心の持てること、良いと思えるものだけに集約して生きてきた。そんな僕の中に当時蓄積されていた情報といえば、海外のメタルシーン、国内アーケードゲーム、劇場版アニメーション、野営キャンプのノウハウ、ベトナム戦争の歴史(反戦活動史)、カンボジア内戦や現在も続くパレスチナ・イスラエル問題などと、「広く浅く」の超対極状態! 国内政治や芸能スポーツ、文化芸術、あらゆる「専門誌ではなく新聞に載っていそうなこと」についてとなると、もう完全な「?」状態なのだ……。

どこからどう手を着ければいいのかわからない。

国内政治わからない。文学賞受賞者やスポーツ選手等々、時代を代表する著名人一切わからない。球団もF1もサッカーも紅白出場歌手も大相撲で誰が勝ったのかも、何もかもわからず、興味がないゆえに脈絡のない暗記問題・暗号のように憶えようとしても憶えられない(現代なら大谷翔平がどこの誰だかわからない・憶えられないレベル)。

こうなると、それこそ「僕のようでない同世代」の時事問題レベル(というか常識レベル)に追い付くためには、小学1年生レベルからやり直さねばならないという、それはもう、圧倒的な絶望感なのだ。

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新刊紹介

鈴木大介

すずき・だいすけ/文筆業・ルポライター
1973年千葉県生まれ。主な著書に若い女性や子どもの貧困問題をテーマにした『最貧困女子』(幻冬舎)、『ギャングース(漫画原作・映画化)』(講談社)、『老人喰い』(ちくま新書・TBS系列にてドラマ化)や、自身の抱える障害をテーマにした「脳が壊れた」(新潮社)、互いに障害を抱える夫婦間のパートナーシップを描いた『されど愛しきお妻様』(講談社・漫画化)などがある。
2020年、「『脳コワ』さん支援ガイド」(医学書院・シリーズケアをひらく)にて日本医学ジャーナリスト協会賞大賞受賞。近刊に『ネット右翼になった父』(講談社現代新書・新書大賞2024・5位)『貧困と脳 「働かない」のではなく「働けない」』(幻冬舎新書)など。

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