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国際宇宙ステーションで宇宙飛行士は何をしている? 「作業員」としても優秀な彼らの仕事を紹介!

国際宇宙ステーションでの研究で最も注目したい実験の一つが、iPS細胞を使って人工的に臓器を作るというものです。これこそまさに宇宙ならではの実験で、炎や水だけでなく、こういう専門的なことまで宇宙飛行士はできないといけないのかとびっくりさせられます。

詳しい内容を紹介します。様々な組織や臓器の細胞を作り出す能力をもつiPS細胞の研究は、今最も期待されるトピックで、ノーベル生理学・医学賞も受賞しました。そのiPS細胞を用いて、人間の体のさまざまな臓器を作り出そうと、地上でも実験は行われてきました。しかし、地球上では重力の影響を受けるため、細胞は平面的に広がっていく様子が強く現れます。しかし実際は、人間の体は母親の子宮の中で立体的に作られていきます(もちろん重力の影響は受けます)。このように立体的に作り上げられる様子を再現できる環境こそが、宇宙という無重力空間なのです。

実際にこの実験をリードする研究者も、母親の羊水の中と無重力環境との類似性から着想し、この実験を提案したと語っています。宇宙飛行士が地上で宇宙滞在の訓練をするときには巨大なプールの水の中で行います。理由は、水中はある程度無重力と似た環境になるためです。この点からも、人間の身体が作られる母親の子宮の中と近い状況を再現できる宇宙で実験することは、無重力の利点を最大限生かすものだと思えますね。

ここまでは国際宇宙ステーションの中での研究を紹介してきましたが、外側でもさまざまな実験が行われています。実は僕はその実験に携わる中心メンバーの1人として、理研やNASAで研究を行っていました。

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新刊紹介

佐々木亮

ささき・りょう
理学博士。独立行政法人理化学研究所、NASAの研究員として研究に携わり、その経験と知見を生かし、ポッドキャスト「佐々木亮の宇宙ばなし」を毎日配信している。旬の宇宙トピックスを親しみやすく解説する内容で注目を集め、Apple Podcast日本ランキング3位を達成。第3回Japan Podcast Awardsも受賞する。現在はデータサイエンティスト、中央大学講師として活動している。
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