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新型コロナの流行は生態系からの警告! ヒト由来の風邪で死亡したボノボが教えてくれること

人間、動物、生態系の健康はひとつ

人間がカエルツボカビに接触しても、健康に害はありません。ボノボにとっておそらく致死的であろう風邪も、人間にとってはただの風邪です。
だからといって、放っておいてよいのでしょうか?
カエルやボノボ、他の生き物たちが地球からいなくなっても問題ないのでしょうか?

決してそんなことはありません。
近年、「ワンヘルス」という概念が広がりつつありますが、「人」「動物」「生態系」の健康はひとつです。
カエルが絶滅すれば、生態系のバランスがくずれます。そしてそれは、人間にとってもすみにくい地球になり得ることを意味します。
新型コロナウイルスはじめヒトの新しい感染症がどんどん現れているのは、生態系バランスがくずれたからだとも言えるのです。

かつて、私の上司だった宇宙飛行士の毛利衛氏は、「地球はひとつしかない。地球外に住むことよりも、このひとつしかない地球でサステナブルに暮らすことを科学コミュニケーションしないと」と言いました。
その通りだと思います。地球はさまざまな生き物が織りなす生態系というシステムに支えられています
新型コロナウイルスによって、ワンヘルスの重要性を直感的に感じられるいまこそ、このシステム維持を真剣に考え直すときではないでしょうか。

●主な参考文献
江口絵里(2008年)「ボノボ ―地球上で、一番ヒトに近いサル―」そうえん社

岩槻邦男・馬渡峻輔 監修、杉山純多 編集(2005年)「バイオディバーシティ・シリーズ4 菌類・細菌・ウイルスの多様性と系統」裳華房

Kim S. Grützmacher, et.al. Human Respiratory Syncytial Virus and Streptococcus pneumoniae Infection in Wild Bonobos. EcoHealth 15, 462–466, 2018.

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新刊紹介

大渕希郷

おおぶち・まさと●どうぶつ科学コミュニケーター
1982年神戸市生まれ。京都大学大学院博士課程動物学専攻、単位取得退学。その後、上野動物園・飼育展示スタッフ、日本科学未来館:科学コミュニケーター、京都大学野生動物研究センター・特定助教(日本モンキーセンター・学芸員 兼任)を経て、2018年1月に独立。生物にまつわる社会問題を科学分野と市民をつなげて解決に導く「どうぶつ科学コミュニケーター」として活動中。
夢は、今までにない科学的な動物園を造ること。特技はトカゲ釣り。
著書に『新ポケット版 学研の図鑑絶滅危機動物』『新ポケット版 学研の図鑑 爬虫類・両生類』(いずれも学研教育出版)、『絶滅危惧種 救出裁判ファイル』『動物進化ミステリーファイル』(いずれも実業之日本社)、『どうぶつ恋愛図鑑』『へんななまえのいきもの事典』(いずれも東京書店)など。最近は、「こども環境地球儀ハトホル」(渡辺教材教具)など教材開発にも関わる。愛称はぶっちー。
公式ホームページ: http://m-ohbuchi.com/

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