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大渕希郷「動物ふしぎ観察記」

カエルに「しっぽ」がない理由は? 尾と生存戦略の意外な関係性

世界初の「どうぶつ科学コミュニケーター」として、講演活動やフィールドワーク、執筆活動など幅広く活動中の大渕希郷さん(通称・ぶっちー)。
動物まみれのめまぐるしくも愉快な日常とは……!?  
生き物の知られざる生態についても、自筆のイラストとともに分かりやすく解説します。
動物の専門家によるお仕事&科学エッセイです。

前回は、ヒト由来の感染症問題について解説しました。
今回は、動物の「しっぽ」に着目します。

陸へ進出して多様化した尾の役割

今回は脊椎動物の「しっぽ(尾)」についてお話します。

尾とは、もともとは水中で暮らしていた脊椎動物たちが推進力を得るための部位でした。魚を想像してもらえばわかるように、口のある方を前にして進めるように、反対側に尾ができたのです。

脊椎動物は、その祖先から始まり、魚類、両生類、爬虫類、そしてそこから鳥類や哺乳類へと進化の道筋をたどり、陸へと進出していきます。
その過程で、尾の役割も、様々な生活型をもつ動物ごとに多様化していきました。
尾が果たしている様々な役割のうち、いくつか代表的なものを紹介します。

爬虫類の尾は、脚を後ろに動かすために必要な筋肉とつながっている。(イラスト/大渕希郷)
爬虫類の尾は、脚を後ろに動かすために必要な筋肉とつながっている。(イラスト/大渕希郷)

●後ろ脚を動かす
ヤモリやトカゲなどの爬虫類は四肢を左右に広げて、がに股のように、前後に動かします。このとき、脚を後ろに動かすための筋肉を付着させる場所として尾が必要なのです。そのため、哺乳類と違って、胴体との区切りが不明瞭なほど根元の太い尾が爬虫類にはあります。

●栄養をためる
トカゲ類の尾は、エネルギーを蓄える役割をもっていて、栄養がある状態の時ほど尾が太くなります。

●体の支え
イタチやマングース、カンガルーなどは、立ち上がる際に、後ろ脚と尾を三脚にして体を支えています。

●第五の手
クモザルの尾は「第五の手」と呼ばれます。手だけでなく尾でも枝を捕まえて木登りができるからです。クモザルの尾の先は毛が薄く、指紋のような皮ふのひだ(尾紋)があります。

●保温
リスやキツネなどの、ふわふわの大きな尾は、寒さから身を守る役割もあります。

(上記に列挙した事例は、各動物がその使い方しかしないと言う意味ではありません。おなじ動物種でも尾の使われ方は一つではない事がほとんどです。)

他にも、イヌやネコなどは尾で感情表現をしますし、ウシはハエやアブなどを追い払うのに用います。尾で体全体のバランスをとっている動物もたくさんいます。

このように、水中で泳ぐための部位だった尾は、陸に進化してからも、それぞれの動物の生存戦略において重要な役割を担っているわけです。もちろん、クジラやラッコのように水中や水辺で暮らすことで、再び泳ぎに尾を使うようになったものもいます。
ですから、現在でもほとんどの脊椎動物には尾があります。

しかし、少数派ながら、尾がなくなった脊椎動物もいます。
その一つが、カエルです。

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大渕希郷

おおぶち・まさと●どうぶつ科学コミュニケーター
1982年神戸市生まれ。京都大学大学院博士課程動物学専攻、単位取得退学。その後、上野動物園・飼育展示スタッフ、日本科学未来館:科学コミュニケーター、京都大学野生動物研究センター・特定助教(日本モンキーセンター・学芸員 兼任)を経て、2018年1月に独立。生物にまつわる社会問題を科学分野と市民をつなげて解決に導く「どうぶつ科学コミュニケーター」として活動中。
夢は、今までにない科学的な動物園を造ること。特技はトカゲ釣り。
著書に『新ポケット版 学研の図鑑絶滅危機動物』『新ポケット版 学研の図鑑 爬虫類・両生類』(いずれも学研教育出版)、『絶滅危惧種 救出裁判ファイル』『動物進化ミステリーファイル』(いずれも実業之日本社)、『どうぶつ恋愛図鑑』『へんななまえのいきもの事典』(いずれも東京書店)など。最近は、「こども環境地球儀ハトホル」(渡辺教材教具)など教材開発にも関わる。愛称はぶっちー。
公式ホームページ: http://m-ohbuchi.com/

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