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大渕希郷「動物ふしぎ観察記」

新型コロナの流行は生態系からの警告! ヒト由来の風邪で死亡したボノボが教えてくれること

世界初の「どうぶつ科学コミュニケーター」として、講演活動やフィールドワーク、執筆活動など幅広く活動中の大渕希郷さん(通称・ぶっちー)。
動物まみれのめまぐるしくも愉快な日常とは……!?  
生き物の知られざる生態についても、自筆のイラストとともに分かりやすく解説します。
動物の専門家によるお仕事&科学エッセイです。

前回は、動物由来の感染症についてお話しました。
今回も、引き続き感染症にまつわる話題です。ヒトから動物へ病気がうつった事例を紹介します。

人生最多のワクチンを打ってコンゴ民主共和国へ

前回は、私のように動物と関わる仕事をしている人は、感染症を防ぐために、予防接種を受ける機会が多いというお話をしました。

私がこれまで最もたくさんワクチンを打ったのは、2016年に生態調査のため、アフリカのコンゴ民主共和国へ訪れた時です。

黄熱病の生ワクチン接種の証明書。(画像提供/大渕希郷)
黄熱病の生ワクチン接種の証明書。(画像提供/大渕希郷)

入国するには、駐日コンゴ民主共和国大使館等でビザを取得しておかねばならないのですが、ビザ取得にはあらかじめ黄熱病の予防接種を受け、黄熱病予防接種証明書(イエローカード)を取得しておかねばなりません。かつ、入国の際にもこのイエローカードが必要となります。
なお、その他は任意ですが、安全のためA型肝炎や破傷風ほか複数種の予防接種も受けましたし、マラリア予防薬も処方してもらい持参していきました。
薬漬けですね……。

争いを性行動で回避する、ボノボ

コンゴ民主共和国を訪れた目的は、ボノボの感染症実態調査のサポートです。

ボノボとは、かつてピグミーチンパンジーと呼ばれた、類人猿の一種
その別名どおり、チンパンジーともっとも近縁な動物です。ですから、現在、この地球上でチンパンジーと並んでもっともヒトに近い動物と言えます。

ちなみに、かつて研究者等の間では、チンパンジーを「ナミチン」、ボノボを「ピグチン」と呼んでいました。それぞれ「並みのチンパンジー」「ピグミーチンパンジー」の略らしいです。学生時代に教授たちからそれを初めて聞いたときは、思わず聞き直してしまいました(笑)。

メス同士は「ホカホカ」という性器(正確には性皮)をこすりあわせる行動をし、オスとメスの場合は「交尾」になる。(イラスト/大渕希郷)
メス同士は「ホカホカ」という性器(正確には性皮)をこすりあわせる行動をし、オスとメスの場合は「交尾」になる。(イラスト/大渕希郷)

アニメ・小説「新世界より」ファンはご存知かと思いますが、ボノボは、ケンカが起こりそうなとき、性行動で回避する習性があります。
個体間の緊張が高まると、セックスや性器こすりあわせなどを行います。それは、大人の異性同士、同性同士、子ども同士、さまざまな関係で行われるのです。これにより、大きな争いに発展しないようになっていると言われています。

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大渕希郷

おおぶち・まさと●どうぶつ科学コミュニケーター
1982年神戸市生まれ。京都大学大学院博士課程動物学専攻、単位取得退学。その後、上野動物園・飼育展示スタッフ、日本科学未来館:科学コミュニケーター、京都大学野生動物研究センター・特定助教(日本モンキーセンター・学芸員 兼任)を経て、2018年1月に独立。生物にまつわる社会問題を科学分野と市民をつなげて解決に導く「どうぶつ科学コミュニケーター」として活動中。
夢は、今までにない科学的な動物園を造ること。特技はトカゲ釣り。
著書に『新ポケット版 学研の図鑑絶滅危機動物』『新ポケット版 学研の図鑑 爬虫類・両生類』(いずれも学研教育出版)、『絶滅危惧種 救出裁判ファイル』『動物進化ミステリーファイル』(いずれも実業之日本社)、『どうぶつ恋愛図鑑』『へんななまえのいきもの事典』(いずれも東京書店)など。最近は、「こども環境地球儀ハトホル」(渡辺教材教具)など教材開発にも関わる。愛称はぶっちー。
公式ホームページ: http://m-ohbuchi.com/

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