2021.8.31
真夜中の高原で体験した出来事
翌朝、僕たちは屋上に寝転がっている状態で目覚めました。
もちろん友人たちに、昨夜のことをあれこれと訊ねました。
しかし全員、口を揃えて「なにも覚えていない」と言うのです。星を見ているうち、なんとなく眠ってしまっただけだ、と言い張るのです。
そんな訳ありません。あれは絶対、夢ではありません。
あの夜の出来事を、僕がいくら言い張っても、友人たちは笑い飛ばすだけです。でも彼らは忘れているだけなのです。なんらかの理由で、記憶が消えているだけなのです。
僕は、そう確信しています。
なぜなら、あれから三か月経った今、僕もまたあの夜の記憶をどんどん失いつつあるからです。あれほど鮮明だったイメージが、どんなに思い出そうとしても、おぼろげにしか浮かばなくなっています。今ここに記したあれこれも、必死に残したメモを参考にして書いているだけなのです。
あと数日経てば、自分がこの体験談を語ったことすら忘れてしまうかもしれません。
だからどうか、お願いです。せめて、あなただけは、僕の話を覚えていてください。
8月6日 あの家に住んでいた頃のこと
8月9日 川の上流から流れてくるもの
8月13日 「チヨちゃんが来たんだね」
8月16日 小人が見える女子大生
8月20日 夏休みに流れた噂
8月23日 振り向いてくれない美人教師
1日5分の恐怖体験、いかがでしたか?
『日めくり怪談』は毎日読んでもひと夏楽しめる、全62話を掲載。
詳細はこちらから。
7月4日 設置されては撤去されるブランコの秘密
7月6日 クラスメイトの机に置かれた手紙
7月9日 誰も来ないはずの男子トイレで目にしたもの
7月13日 息子に見えている母の顔
7月15日 内線電話から聞こえてくる声
7月19日 祖母に禁じられた遊び
7月22日 僕にだけ聞こえてくる音
7月27日 この子は大人になる前に死ぬから
7月30日 隙間から入り込もうとするもの