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息子に見えている母の顔
めくるたび、どんどん怖くなる。
『一行怪談』で知られる吉田悠軌さんの書き下ろし怪談集『日めくり怪談』から選りすぐりのお話をご紹介します。
1日5分の恐怖体験をお楽しみください。

息子に見えている母の顔

「ママの顔、お尻みたい」
 
 三歳になった息子が、突然そんなことを言い出した。
 ちょっと待て。私の顔、そんなにプックリふくれてるか?
 正直、ショックですよ。お酒は飲まないし、それなりに甘いものも控えてるし。まあ軽口をたたけるようになったのは成長でもあるから、それはそれで喜ばしい……のかな。
「お尻、お尻、変だよ、お尻みたい」
 息子の指摘は日に日にエスカレートしていく。まったくもう、変なアニメの影響だろうか。一日一回は、文句じみた口調でこちらの顔をけなしてくる。

「そういうこと、人に言っちゃダメでしょ」
 さすがにこの辺りで釘を刺しておかねば。保育園で友だちや保育士さんにまで、こんなセリフを吐かれたらたまったものではない。
「なんなの、お尻って。ママのどこがどうお尻なの?」
 真面目な顔で問いただすと、息子も一瞬は黙りこんだ。しかし、こちらの顔をじいっと見つめた後、とんでもないことを言い出したのだ。

「……お尻の穴」
 は?
「だってお尻の穴みたいだもん」
 いくらなんでもまあ……。ぷくぷくほっぺがお肉みたい、というならまだ可愛げがあるよ。だけど、よりによって穴の方かよ。勝手に勘違いしてた私がバカみたいだよ。
「あ、そう。そんなにクシャクシャなんですか」
「たまにね」
 息子はぷいっと隣室に走っていった。

(イメージ画像/写真AC)
(イメージ画像/写真AC)
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吉田悠軌

よしだ・ゆうき●1980年東京都出身。怪談、オカルト研究家。怪談サークル「とうもろこしの会」会長。オカルトスポット探訪マガジン『怪処』編集長。怪談現場、怪奇スポットへの探訪をライフワークとし、執筆活動やメディア出演を行う。『怪談現場 東京23区』『怪談現場 東海道中』『一行怪談』『一行怪談漢字ドリル 小学1~4年生』『禁足地巡礼』『日めくり怪談』『一生忘れない怖い話の語り方 すぐ話せる「実話怪談」入門』など著書多数。
Twitterアカウント:@yoshidakaityou

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