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あの家に住んでいた頃のこと
めくるたび、どんどん怖くなる。
『一行怪談』で知られる吉田悠軌さんの書き下ろし怪談集『日めくり怪談』から選りすぐりのお話をご紹介します。
1日5分の恐怖体験をお楽しみください。

あの家に住んでいた頃のこと

 あの家に住んでいた少年時代、よくこんな夢を見ていた。

 夏の日射しが照りつける中、とぼとぼとあてもなく歩いている。周りの風景は近所の見知った路上だが、昼日中なのに誰の姿も見当たらない。
 そこでふと、足が止まる。すぐ脇にあるのは、毎日のように通り過ぎている電柱。それがどうにも気になってしまう。首をうつむかせてみると、電柱の下の方に二体の人形がぶらさがっている。
 誰もが知っている、有名な女子向けのお人形シリーズだ。その代表格である女の子と男の子が、一体ずつ捨てられている。
 いや、ただ捨てられているだけではない。二体とも首に細い紐がまかれ、それが電柱の一番下のボルトに結ばれているのだ。まるで首つりのように、ぶらんと空中に垂れ下がり、ゆらゆらと揺れる二体の人形。
 それらが同時にゆっくり回転し、こちらに顔を向けてくる。そうして目と目が合ったと思った瞬間。
 二体の顔が、まるで自分をにらむように、きっと険しくなった。
 とたんに怖ろしくなり、その場から逃げ出す。わが家を目指し、無人の道路を息せききって走る。ようやく自宅の玄関にたどりつき、ドアノブに手をかける。
 ああよかった、ちゃんと帰れた。安心しかけたところで、脇の表札が目に入り、体がすくむ。そこには、自分たちと別の苗字が記されていたから。
 
 ある日を境に、そんな夢を何度も何度も見るようになってしまった。
 ただの夢だと思いつつも、さすがに回数が重なれば不気味になってくる。そこでとりあえず、三歳下の妹にだけ、こっそりと打ち明けてみた。
 すると驚いたことに、妹もまた、同じ時期から同じ夢を見るようになったのだという。聞けば聞くほど、細部にいたるまでまったく自分のそれと似通っている。
 こんな偶然がありうるのだろうか?

(イメージ画像/写真AC)
(イメージ画像/写真AC)
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吉田悠軌

よしだ・ゆうき●1980年東京都出身。怪談、オカルト研究家。怪談サークル「とうもろこしの会」会長。オカルトスポット探訪マガジン『怪処』編集長。怪談現場、怪奇スポットへの探訪をライフワークとし、執筆活動やメディア出演を行う。『怪談現場 東京23区』『怪談現場 東海道中』『一行怪談』『一行怪談漢字ドリル 小学1~4年生』『禁足地巡礼』『日めくり怪談』『一生忘れない怖い話の語り方 すぐ話せる「実話怪談」入門』など著書多数。
Twitterアカウント:@yoshidakaityou

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