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僕にだけ聞こえてくる音
めくるたび、どんどん怖くなる。
『一行怪談』で知られる吉田悠軌さんの書き下ろし怪談集『日めくり怪談』から選りすぐりのお話をご紹介します。
1日5分の恐怖体験をお楽しみください。

僕にだけ聞こえてくる音

 バアン!
 
 自分の部屋で寝転がっていると、またあの音がした。
 僕の耳元に響く、なにか大きなものがはじけ飛ぶような音。
「ああ、もう……」
 うんざりしながら漫画を脇に置いて、瞼をぎゅっと閉じる。この音が鳴った後は、きまってアレが見えてしまうから。 
 
 この現象が最初に起きたのは、一か月前の夜。その時、なにも知らなかった僕は、アレをしっかり見てしまった。
 半狂乱になって部屋を飛び出し、母親と姉を叩き起こした。泣きじゃくりながら自分の聞いた音と見たものを必死に説明していった。
 それなのに、全然とりあってくれなかった。
「それはね、気のせいだよ、寝ぼけたんだよ」と、うっすら笑いながらごまかすだけ。
 もちろんそれ一度きりなら悪い夢を見たんだと考える。
 でもそれから毎日、毎日、一日一度は「バアン!」という破裂音が僕のすぐそばで鳴るのだ。それに続いて、アレが出てくるのだ。でもいくらそのことを母や姉に主張しても、向こうは「気のせい、気のせい」の一点張り。
 二人とも冷たい訳ではない。どちらかといえば、かなり優しい方だろう。でも同時に、変なことを言う僕を扱いづらそうにしている感じもあって、それがなんだかとても嫌だ。
 
 すっかりあきらめた僕は、四日目からもう家族に報告することをやめた。そして音が鳴るたび目を閉じるようにした。
 今夜だってそうだ。きつくつむった瞼の向こうに、アレの息づかいを感じる。しばらく我慢しているうちに気配は消える。そこで目を開ければ、いつもの部屋が広がっているだけ。
 そのはずだったのに。
 アレはまだ、消えていなかった。僕のすぐ前で、僕の瞳を覗き込んでいた。
 僕の目と、アレの逆さまになった目が合う。
 頭が下になった男は、ぴたりと空中に固まっている。そして次の瞬間。
 
 バアン!
 

(イメージ画像/写真AC)
(イメージ画像/写真AC)
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吉田悠軌

よしだ・ゆうき●1980年東京都出身。怪談、オカルト研究家。怪談サークル「とうもろこしの会」会長。オカルトスポット探訪マガジン『怪処』編集長。怪談現場、怪奇スポットへの探訪をライフワークとし、執筆活動やメディア出演を行う。『怪談現場 東京23区』『怪談現場 東海道中』『一行怪談』『一行怪談漢字ドリル 小学1~4年生』『禁足地巡礼』『日めくり怪談』『一生忘れない怖い話の語り方 すぐ話せる「実話怪談」入門』など著書多数。
Twitterアカウント:@yoshidakaityou

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