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小人が見える女子大生

小人が見える女子大生

「彼女の荷物をまとめて送ってあげたいから、手伝ってくれませんか」
 そのすぐ後のことだ。元彼氏からの依頼で、俺とサークル仲間数人は、ユキがいなくなった後の部屋にお邪魔した。
 うちらが荷物を整理していると、元彼氏は「これですよ」と、例の足跡がついたまな板を見せてきた。
「この足跡。洗っても落ちないんですよ。ユキが怖がるから、業者に出して削ってもらったりもしたんです。戻ってきたばかりの板を、僕も確認しました」
 でもやっぱり足跡はついたままだった、というんだ。
「部屋が水浸しになった時もです。僕がタオルで拭いていると、同じような濡れた足跡が、壁のあちこちについていて……」
 どんどん続く告白に、皆の作業の手が止まった。不穏な空気を察したのか、元彼氏は苦笑いしながら「いや、僕だって小人なんて知りませんよ。見たのはどれも足跡だけですから」と言い訳してくる。

「ただちょっと……。皆にも見てほしいんです」
 そう言われた俺たちは、窓ガラスや鏡、ステンレスの流し台などを確認していった。
 確かに部屋のあちこちに、似たような汚れが幾つも幾つも残っていた。
 それらは全て、小さな足の裏の形をしていた。

8月の『日めくり怪談』特集一覧
8月2日 空を飛ぶ夢を見るようになったら
8月6日 あの家に住んでいた頃のこと
8月9日 川の上流から流れてくるもの
8月13日 「チヨちゃんが来たんだね」
8月16日 小人が見える女子大生
8月20日 夏休みに流れた噂
8月23日 振り向いてくれない美人教師

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7月の『日めくり怪談』特集一覧
7月2日 夜道を歩く女性の二人組が向かう先
7月4日 設置されては撤去されるブランコの秘密
7月6日 クラスメイトの机に置かれた手紙
7月9日 誰も来ないはずの男子トイレで目にしたもの
7月13日 息子に見えている母の顔
7月15日 内線電話から聞こえてくる声
7月19日 祖母に禁じられた遊び
7月22日 僕にだけ聞こえてくる音
7月27日 この子は大人になる前に死ぬから
7月30日 隙間から入り込もうとするもの
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新刊紹介

吉田悠軌

よしだ・ゆうき
1980年東京都出身。怪談、オカルト研究家。怪談サークル「とうもろこしの会」会長。オカルトスポット探訪マガジン『怪処』編集長。実話怪談の取材および収集調査をライフワークとし、執筆活動やメディア出演を行う。
『怪談現場 東京23区』『怪談現場 東海道中』『一行怪談』『禁足地巡礼』『日めくり怪談』『一生忘れない怖い話の語り方 すぐ話せる「実話怪談」入門』『現代怪談考』『新宿怪談』『中央線怪談』など著書多数。

Xアカウント @yoshidakaityou

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