2021.8.16
小人が見える女子大生
「彼女の荷物をまとめて送ってあげたいから、手伝ってくれませんか」
そのすぐ後のことだ。元彼氏からの依頼で、俺とサークル仲間数人は、ユキがいなくなった後の部屋にお邪魔した。
うちらが荷物を整理していると、元彼氏は「これですよ」と、例の足跡がついたまな板を見せてきた。
「この足跡。洗っても落ちないんですよ。ユキが怖がるから、業者に出して削ってもらったりもしたんです。戻ってきたばかりの板を、僕も確認しました」
でもやっぱり足跡はついたままだった、というんだ。
「部屋が水浸しになった時もです。僕がタオルで拭いていると、同じような濡れた足跡が、壁のあちこちについていて……」
どんどん続く告白に、皆の作業の手が止まった。不穏な空気を察したのか、元彼氏は苦笑いしながら「いや、僕だって小人なんて知りませんよ。見たのはどれも足跡だけですから」と言い訳してくる。
「ただちょっと……。皆にも見てほしいんです」
そう言われた俺たちは、窓ガラスや鏡、ステンレスの流し台などを確認していった。
確かに部屋のあちこちに、似たような汚れが幾つも幾つも残っていた。
それらは全て、小さな足の裏の形をしていた。
8月6日 あの家に住んでいた頃のこと
8月9日 川の上流から流れてくるもの
8月13日 「チヨちゃんが来たんだね」
8月16日 小人が見える女子大生
8月20日 夏休みに流れた噂
8月23日 振り向いてくれない美人教師
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7月4日 設置されては撤去されるブランコの秘密
7月6日 クラスメイトの机に置かれた手紙
7月9日 誰も来ないはずの男子トイレで目にしたもの
7月13日 息子に見えている母の顔
7月15日 内線電話から聞こえてくる声
7月19日 祖母に禁じられた遊び
7月22日 僕にだけ聞こえてくる音
7月27日 この子は大人になる前に死ぬから
7月30日 隙間から入り込もうとするもの