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意識は、進化の中で「創発」された──筑波大学助教・鈴木大地氏インタビュー

意識は進化の中で「創発」された

今、僕が言ったことを別の形で表現すると、意識は、進化の流れの中で「創発」された、ということになります。

創発というのは、ある物事の全体に、部分にはない性質が現れることです。意識について言うと、脳を構成している部分である原子や分子に意識が宿っているわけではないですよね。僕たちの脳を構成している原子や分子は、意識がないモノを構成している原子や分子と、なんら変わりがないはずです。

ところが、それが特定のし方で集まって脳になると、そこに意識という、原子や分子にないものが宿る。それが意識の創発性です。

このように述べると、「創発」という概念が、なにか魔法のように感じられるかもしれません。実際、そういう観点から批判する人もいます。しかし、創発は魔法ではありません。そこにはちゃんと理屈があり、説明が可能なはずです。

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意識の創発性を、進化で説明する

意識など、謎めいたものの創発を説明するときにしばしば付随するのが、「還元主義」への批判です。還元主義とは、複雑な全体を単純な部分に分解して考察する方法のことで、「創発」とは対立するように語られることがよくあります。

というのも、「全体」と「部分」というシンプルなモデルを考えたときに、「全体は部分によって説明できる」とするのが還元主義であり、一方で「全体に、部分にはない性質が生まれる」のが創発だからです。

しかし僕は、こういった議論は、物理的な還元と、説明における還元を混同していると考えています。

意識が宿る生物の脳は、細胞や分子・原子といった、より細かい部分によって構成されています。その意味で、意識に対して「物理的に」還元主義を当てはめられるのは間違いありません。

しかし、だからといって、「説明において」還元主義の道しか選べないわけではない。物理的に還元が可能な意識を説明するために、創発を持ち出してはいけない理由はないんです。意識は創発されたものです。

そして、意識の創発性を説明するために非常に効果的なのが、「進化」という観点から研究することです。意識は神秘的に思えるかもしれませんが、それは創発の結果であり、創発は説明が可能なんです。

鈴木大地(すずき・だいち)プロフィール
筑波大学生命環境系助教、北海道大学人間知・脳・AI 研究教育センター(CHAIN)客員研究員。博士(理学)。日本学術振興会特別研究員(PD)などを経て、現職。共著に『意識と目的の科学哲学』(慶應義塾大学出版会)、訳書に、シモーナ・ギンズバーグ&エヴァ・ヤブロンカ『動物意識の誕生(上・下)─生体システム理論と学習理論から解き明かす心の進化』(勁草書房)、トッド・E・ファインバーグ&ジョン・M・マラット『意識の進化的起源─カンブリア爆発で心は生まれた』(同)、同『意識の神秘を暴く─脳と心の生命史』(同)など。

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新刊紹介

佐藤喬

作家・フリーの編集者。著書に『エスケープ』(辰巳出版)、『1982』(宝島社)、『逃げ』(小学館)など。構成作は『動物たちは何をしゃべっているのか?』(山極壽一/鈴木俊貴、集英社)、『AIに意識は生まれるか』(金井良太、イースト・プレス)ほか。

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