2026.5.3
山形県と新潟県に挟まれた山頂なのに、なぜか福島県。日本百名山・飯豊山の不思議な「県境」【山の名&珍プレイス 第6回】
本連載では、アウトドア雑誌や山登りの指南本、TV番組や各種イベント出演でもおなじみの山岳ライター・高橋庄太郎が、豊富な山経験をもとに、自分の足でわざわざ見に行く価値がある、こだわりの山の名スポット・珍スポットを紹介していきます。
日本は47の都道府県で構成されており、そのなかで北海道と沖縄県以外は必ずどこかでお隣の都府県と陸地で接しています。その多くは山脈や川といった自然の要素を中心に区切りをつけて、“県境”ができているわけですが、ごく少数、例外的で不思議すぎる県境もないことはありません。今回紹介するのは、東北でもとくに奥深い場所にある“百名山”のひとつです。
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よく見なければ気付かない……。「三国」がからむ県の区切り
山中に多い地名のひとつが、「三国」という言葉だ。つまり、“三国山”や“三国峠”といったもので、大半は3つの「国」が接している“国境”に付けられている。ただ、「国」といっても、これは日本で律令制が使われていた古い時代のことで、「武蔵国(東京、埼玉、神奈川)」や「三河国(愛知県)」といった意味での国境だ。だから、国境は“こっきょう”ではなく、“くにざかい”と読んだほうが理解しやすい。
東北を代表する名山である「飯豊山」の山域にも「三国岳」がある。これは昔の越後国(≒新潟県)、羽前国(≒山形県)、そして岩代国(福島県の一部)という3国の国境だったことから生じた地名だ。しかし現在の地図を見ると、新潟県と福島県の県境にはなっているものの、山形県との県境にはなっていない。じつは「二国岳」でしかないのだ。
それはなぜなのか? じつは現在の三国岳付近の国境というか県境をよく見ると、山形県と新潟県の隙間に福島県が食い込むように延びることで、山形県と新潟県が接さず断絶していることがわかる。しかも福島県の“領土”は、そこから北西に長々と延びているのだ。


地図の上での福島県の“領土”は、山形県と新潟県の間へ食い込んでいるのがわかる。狭いところでは1mにもならず、要するに登山道の幅しかない。この不思議な福島県の領土は、地理マニアには「へその緒」や「盲腸」などといわれている。たしかにその通りだ。
この福島県の“食い込み”が始まるのは三国岳のところだが、反対に言えば、三国岳以南の福島県は大きく広がり、ごく一般的な形状に収まる。現在は喜多方市の範囲だ。

新潟から山形まで、ひと飛び! 「登山道+α」の幅の福島県“領土”
では、この細長い福島県の領土は実際どんな感じなのか? 以下の写真を見てほしい。県境が引かれているあたりの箇所へ青い線を引いてみた。正確ではないので、あくまでもイメージとして見ていただきたいが、それでも福島県は稜線に沿って延びる登山道とその左右程度だけで、山形県と新潟県が両脇に押し分けられているのが理解できる。


三国岳から福島県の領土を進んでいき、飯豊山山頂が近付くと本山小屋が建っている。この小屋の入口のすぐ前に新潟県と福島県の県境が走り、そこからさらに数m前に移動すれば、今度は福島県と山形県の県境が通っている。助走でもして大きくジャンプすれば、福島県を踏まずに新潟県から山形県へと移動できてしまうのだ。
なお、飯豊山を含む飯豊連峰は広大な山脈で、そのなかで標高2105mの飯豊山は最高峰ではない。だが、本山小屋という名称が象徴するように、飯豊山は飯豊連峰の“主峰”として通称「飯豊本山」といわれ、山小屋の名称も「本山小屋」だ。本山といわれるだけあって、周囲の山々よりもひときわ風格があり、山頂の一角には「飯豊山神社奥宮」も建てられている。

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