よみタイ

キャリア40年の国際ジャーナリストが伝授。英語力アップにおすすめのメディアとその活用法【大野和基インタビュー 後編】

4月24日発売の国際ジャーナリスト・大野和基さんの『懐に入る英語』。アメリカ留学からジャーナリストの道に入って40年以上。ポール・クルーグマン、カタリン・カリコらノーベル賞受賞者から、ジム・ロジャーズ、ユヴァル・ノア・ハラリまで、「世界の超一流知識人」と英語で取材をし、信頼を得ている大野氏だからこそまとめることができた英語上達本となっています。
刊行記念の前後編ロングインタビュー。後編では国際ジャーナリストとしての視点や読者におすすめの英語が上達する情報収集法などについてお伝えします。

(取材・構成/「よみタイ」編集部 撮影/藤澤由加)

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「反トランプ」の視点だけでは見えないものもある

――現在の国際情勢について、国際ジャーナリストとしての話もうかがいたいと思います。現地での生活も長く経験され、アメリカのことは諸外国の中で一番身近でよく知る大野さんですが、現在のトランプ政権下のアメリカやイラク情勢についての見立てを教えてください。

「『アメリカは世界の警察にはなりたくない。けれども、一番強い国でありたい』ですね。世界の警察になりたくないことはオバマ時代から言っていましたが、これが今のアメリカの立場で、トランプはこれは正しいと思っているはずです。私はトランプは戦争が大嫌いと思ってましたから、今回のイラクへの攻撃はびっくりしました。事実、1期目では戦争は起きていないですから。逆にオバマ政権下でも、バイデン政権下でも、戦争は起こっていたのに。

もちろん、アメリカ国内でもトランプの言動に対して反対する人はたくさんいます。ただ今度の中間選挙で共和党が負けたとしても、その2年後の大統領選挙で民主党の候補が必ず選ばれるかというと、簡単にそうはならないと思います。なぜかというと、今、民主党の中でリーダーとなる人、カリスマ性のある人がいないんです。

良し悪しは抜きにして、リーダーに一番必要なのはカリスマ性なんです。やっぱりトランプにはカリスマ性があるんですよ。テレビの司会者や経営者、そして大統領として様々な経験をする中で、考え方に変容はあったと思うけれど、元々その素質はあったと思います。よくトランプはアホだと言う人もいますが、アホではあんな金持ちには絶対になれないです。ある大学で、過去の大統領のいろんな言動などから知能指数を測った研究者がいましたが、トランプが一番高いという結果が出ていました。あとはビル・クリントンですね。彼は、パッと発言する瞬間に、もう書き言葉になっていましたね」

――では、トランプを中心とした現在の国際情勢を、欧米メディアではどういう見方が多いのでしょう?

「どちらの意見もありますが、圧倒的にトランプを非難するほうが多いです。私が懇意にしているポール・クルーグマンみたいにトランプ嫌いな人は徹底的に非難していますね。『朝令暮改が多すぎる。今日言うことと明日やることが違う』みたいな感じとか、『そもそも戦争を始めたのは間違い』とか。

ただ、そういう意見が圧倒的に多いけれども、一歩引いた視点でみると、学者の中には、タイミングとして、もしイランを攻めるとしたら今しかなかった、いう意見もあります。 イラン側のこれまでの歴史を見ていくと、核兵器を絶対作るので放っておくことはできなかった、というような意見です。過去に、世界を騙し続けて核兵器を作った北朝鮮の前例もありますからね。私自身は、どちらの論が正しいということは言えないけども、常に対応する意見も知っておく必要はあると思っています。

しかも現在のネットメディアやSNSは、AIによるアルゴリズムで情報が出てきますから、自分の意見に近い情報しか流れてこないですからね。それが世界の正しい情報と思いがちです。その恐れがあることを知り、両方の論調は必ず見た方がいい。そのためには、たとえば『ガーディアン』など、いろんなメディアを見ることが必要です。両論がちゃんと出てきますから。

メディアなどのいろんな論調を見る中で、こっちから見たらこう見えるし、あっちからみたらこう見えるっていうものを理解した上で、大切になるのは自分の軸を作ること。このことが今は絶対に必要なんですよ。どんなに正解がわからない世界であっても、自分の軸を持たないと振り回されてしまうだけですから。自分の軸がないと情報は入ってこないし、整理もできないです」

「自分の軸を持つために必要なことは、経験と読書のバランス」と語る大野和基さん
「自分の軸を持つために必要なことは、経験と読書のバランス」と語る大野和基さん

――その「自分の軸」を持つためにはどうすれば?

「2つのことが必要ですね。ひとつは、経験と読書の両方のバランス。片方だけではダメなんです。本だけだと自分の軸はできないけども、経験と両方合わさることによって硬い軸ができます。

たとえば、変なYouTubeに騙されやすい人って、本だけ、あるいは経験だけだから。経験の怖いところは、一般化してしまうところ。かつてテレビの取材でパリに行った時に、ディレクターがホテルでパスポートとビデオ機材を全部盗まれたことがありました。 日本と違うことを忘れて、ロビーにさっと荷物を置いて目を離してしまって。そんな経験をした彼は、ものすごくパリに嫌な印象を持ちました。でも、それで『パリは怖い、嫌な町だ』と一般化したらダメですし、怖いですよね。

一般化したかったら本をたくさん読むしかないわけです。本を読んで自分の経験と照らし合わすことで、 太い自分の軸ができる。そうすれば、どんな変な YouTubeを観ても、『あ、これ嘘じゃん。自分がたまたま面白い経験をしたことを動画にしてるだけだな』とか理解できるようになります。

もうひとつはやっぱり英語力。もし朝日新聞など日本の新聞からの情報だけを待っていたら、まず時間的にも遅れますし、そもそも日本メディアの国際報道はものすごい弱いですから。アメリカ国内のことを知りたいと思っても、日本の新聞のどこを読んでもそんなに詳細には書いていません。そもそも読者があまり読まないですからね」

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新刊紹介

大野和基

おおの・かずもと/国際ジャーナリスト。

1955年生まれ、兵庫県西宮市出身。大阪府立北野高校卒。
東京外国語大英米学科卒業後、1979年に渡米。コーネル大学で化学、ニューヨーク医科大学で基礎医学を学んだ後、ジャーナリストの道に進む。
​以来、国際情勢の裏側や医療問題に関するリポートを発表するとともに、世界的な要人・渦中の人物への単独インタビューを次々とものにしてきた。芸能ゴシップから国際政治経済モノまで、すべてを等距離に置くことをモットーとする。
3カ月で10万部のベストセラー『コロナ後の世界』(ジャレド・ダイアモンドほか、文春新書)、『民主主義の危機』(イアン・ブレマーほか、朝日新書)などの訳書、『つながりすぎた世界の先に』(マルクス・ガブリエル)、『お金の流れで読む 日本と世界の未来』(ジム・ロジャーズ、ともにPHP新書)、『オードリー・タンが語るデジタル民主主義』 (NHK出版新書)などインタビュー・編著多数。
著書に『私の半分はどこから来たのか』(朝日新聞出版)、『日本人だけが知らない世界基準の「質問力」』 (祥伝社)などがある。
公式HP■https://www.kaz-ohno.com/

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