2026.8.27
特殊詐欺の被害総額60億円! 犯罪集団「ルフィグループ」の実態に迫る
無法地帯の収容所で凶悪化
本書の後半は、外国人抑留者専用の収容所ビクータンが舞台になる。収容者がレストラン、コンビニ、カジノまで開き、収容所内から犯罪の指示を出せるほど無法状態のビクータンで渡邉らが顔を合わせたのが、今村磨人だ。
実は、今村は同郷の渡邊らと顔見知りではあったが、違うグループで犯罪を重ねており、2019年末頃、ビクータンに収監されたタイミングでJPドラゴンに加入したとされる。そのため当初はビクータン内でも敵対関係にあり、一触即発の状態だった。
しかし、エアコンや扇風機、シャワーやトイレまで付いた「VIPルーム」で生活しながらフードデリバリーサービスで和牛ばかり注文し、覚醒剤を常用するという今村の異様な羽振りの良さに注目した渡邊、藤田、小島は、巧妙に今村に近づいていく。
そして、今村の収益源が日本での強盗だとわかると、4人はチームとなって強盗を企てる。この時に立ち上げられたグループチャットが「キヨピース🏴お前も仲間になれっ!」。遠隔強盗に慣れた今村を中心としたルフィグループの結成だ。……とはいえ、決して一枚岩ではなかった。渡邉ら3人は今村をおだてながら、ある計画を進めていた――。
2022年10月、東京都稲城市で発生した強盗致傷事件から始まったルフィグループの犯行は、徐々に凶悪化していく。そして、2023年1月19日、東京都狛江市で起こした強盗致死事件で死者を出して一線を越えた。
本書によると、この事件を機に警察庁長官が「首魁(首謀者)を解明、検挙することが重要」とコメントし、部署の垣根を超えた50人態勢の「総合捜査本部」が設置される。そのおよそ1カ月後、渡邉ら4人が日本に移送され、逮捕された。
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彼らは「モンスター」ではない
不謹慎かもしれないが、本書の感想を一言で表すなら「面白い!」。もちろん、笑えるという話ではなく、トクリュウの知られざるリアル、現実離れした展開から目が離せず、ページをめくる手が止まらないという意味だ。
例えば、渡邉らの下で働くかけ子の生活も興味深い。渡邉らは新人受け入れ資料、案件説明資料など分厚い詐欺マニュアルを用意し、フィリピンに渡ってきた新人のかけ子を教育した。新人は「箱」と呼ばれるチームに配属され、箱長のもとで“成果”を求められる。給料は完全出来高制で、なかには月収500万円を得る者もいたとされる。
かけ子は自由のない奴隷のような生活を強いられるという先入観があったが、キャバクラで豪遊したり、かけ子同士で恋愛関係にいたるなど(熊井ひとみはかけ子のひとりと恋仲になり、逮捕前に妊娠、獄中出産している)ある程度の自由はあったようだ。
渡邉らのマネジメント手法はシステマティックで、企業と変わらないように見える。ただし、犯罪集団らしい冷酷非道な暴力性も際立つ。拷問部隊の存在や強盗事件に入ってからの言動は「人間はここまで残酷になれるのか」と肝が冷える。
その一方で、凶悪犯たちがころっと騙されたり、新しい犯罪に手を出しては失敗するなど、時折見せる行き当たりばったりの間が抜けたエピソードを知ると、決して彼らはモンスターなどではなく自分と同じ地平で生きる人間なのだと感じた。
Netflix配信で話題になったドラマ『地面師たち』は、原作となった同名小説の参考文献として、ノンフィクション『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』(森功著/講談社)がある。『檻の中のルフィ 闇バイトを生んだ者たち』もいずれドラマ化されてもおかしくない。むしろ、してほしい。それだけのインパクトがあった。
ルフィグループは特殊詐欺と強盗という犯罪で一般市民を食い物にしたが、いま、ビジネスの世界では法の網目をかいくぐるグレーな手法で無防備な企業に群がるハイエナたちが跋扈している。次回はM&A(企業の合併・買収)業界のダークサイドを描いたノンフィクション『社喰い』(片田江康男著/ダイヤモンド社)を紹介しよう。
次回は9/24(木)公開予定です。
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