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田邊博崇  世界的クリエイティブエージェンシーCEOとして描く未来【実録・メンズノンノモデル 第7回 後編】

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これからは、「自分が相手からどう見られたいか」という観点でファッションの重要性が高まっていく

 田邊はまた、AIを使ったクリエーションやオンラインでのコミュニケーションが市民権を得ている現代社会において、「リアル」の価値が今後は高まっていくと確信している。それは例えば、ファッションの今後にも当てはまるのか。田邊に聞いてみた。

田邊のおおらかな笑顔に、場の雰囲気が和み、周囲も楽しい気持ちに包まれる
田邊のおおらかな笑顔に、場の雰囲気が和み、周囲も楽しい気持ちに包まれる

田邊  今日(のインタビュー)みたいに、相手の目を見ながら話をし、自分の言葉に相手が頷いてくれることの喜びは何にも代え難いと思っています。そして現在、多くの人がその事にすでに気がついているはずです。例えば、一緒にごはんを食べることが意義深いものになったり、対面での会議がとても価値あるものになってくるとか。そういう風になってきたときに、ファッションが重要になってくると思うんです。体を鍛えたり、などというのも付随してくる要素だと思うんですけれど、「自分が相手からどう見られたいか」という観点で、ファッションの重要性がこれからもっと高まっていくんじゃないかと。地球環境にやさしい素材を選んでいるか、といった人としての思想なども含めて、どんな服をどう選んでどう着ているかがより問われる時代になってくるのではないでしょうか。こういったコンセプティングは僕たちが得意とするところ。例えばそういった点で、僕らのような、ファッションとは一線を画した分野でクリエイティブ活動をしている側からも、積極的にアイデアを出すことでファッション分野にも貢献できる部分があるかもしれません。企業やブランドだけではなく、異なるクリエイティブ分野でのコラボレーションもどんどんチャレンジしていけるといいなと思います。

 デジタル技術によって、世の中がどれだけ便利になろうと、結局のところクリエイティブにおいて最も重要なのは「人」。それこそが田邊の信念だ。かつてメンズノンノモデル時代に学んだ、1つのページを作るための地道なプロセスが、今でも彼の芯になっているのだろう。

田邊  僕は常々、「その商品が本当に良いものだったら売れるはず」と思っています。つまり、売るためにものを作るのではなく、世の中を良くするために作っているものが結果として売れる、という思考回路です。その点で言うと、誰もがAIを使ってある程度のものが作れちゃう今の風潮は、少し心配。人が抱えている悩みや嗜好性を深く掘ろうとしなくなってしまうのではないかと。人の心を動かすようなグッとくるアイデアは、人の気持ちに寄り添うだけでは足りなくて、完全にシンクロするくらい考え抜いたときに生まれると思うんです。おこがましく聞こえてしまうかもしれませんが、若い人たちが、本当の意味で、クリエイティビティを持って仕事ができる環境をこれからは作っていきたいと思っています。AIに使われるのではなく、使いこなせるように。AIは1を10にすることは秒でできますが、0から1を生み出すことはできないですから。人間にしかできないことは、これからも必ずあると思います。

 今をときめく世界的なクリエイティブエージェンシーのトップとして、よりよい環境を作るために生き生きと仕事をしている田邊。彼と話をしていて、改めて印象的だったのが、そのはちきれんばかりの笑顔だ。嘘偽りのない笑顔にこそ、彼のバイタリティや仕事観が宿っているように思えてならない。

田邊  笑いながら生まれてきたんじゃないかと自分でも思うくらいで、学生時代にバイトしていたマクドナルドでも「スマイル」には定評がありました(笑)。メンズノンノでも、笑っている写真に対してファンレターで反応をいただくことが多かったように思います。「座右の銘は笑う門には福来る」と言っているくらい、笑顔はやっぱり、仕事でもいい連鎖を生んでくれるんですよね。笑いって、パワーじゃないですか。そこはいくつになっても大切にしていたいです。

PROFILE
1976年生まれ、神奈川県出身。法政大学第二高等学校から法政大学経済学部に進学し、1996年に第11回メンズノンノモデルに選出。その後、約4年にわたって学業と並行しながら誌面に登場。大学卒業後、2000年に博報堂へ入社。18年間アカウントプラナーとして活躍したのち、世界でも有数のクリエイティブカンパニーSIXに加わり、自動車、通信、プロスポーツチームなど多岐にわたる企業のブランディングや商品開発、プロデュースに携わる。2023年には、アクセンチュア傘下、アメリカ・ニューヨーク発の世界的なクリエイティブエージェンシーDroga5 TokyoのCOO/Presidentに就任。現在はCEOとして、Droga5が追求するブランドパーパス(存在意義)を起点としたクリエイティブ事業を統括する。

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次回、連載第8回は7/3(金)公開予定です

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徳原海

大阪府出身。メンズノンノ編集部でのアルバイト勤務を経て2006年からフリーランスの編集者として活動。メンズノンノ、UOMOなどの雑誌をはじめ、現在は様々なファッションブランドやスポーツブランドの広告ビジュアル制作なども手がける。著書に「パラアスリート谷真海 切り拓くチカラ」(集英社)、写真と文で綴った欧州フットボール紀行「the Other Side」(ブートレグ出版)など。

Instagram :@kai.tokuhara

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