2026.9.6
これが本当に自然に生まれたものなのか!? 洞窟を貫いて川が流れる 世界三大天然橋のひとつ「帝釈峡の雄橋」【山の名&珍プレイス 第10回 前編】
本連載では、アウトドア雑誌や山登りの指南本、TV番組や各種イベント出演でもおなじみの山岳ライター・高橋庄太郎が、豊富な山経験をもとに、自分の足でわざわざ見に行く価値がある、こだわりの山の名スポット・珍スポットを紹介していきます。
自然の中にあるもので、もっとも硬いのが「岩」。それでも数万年単位の時間とともに風化し、少しずつ見た目を変えていきますが、その変化のほとんどは、たんに割れて小さくなっていったり、表面が削れて丸みを帯びた石となっていったりするばかりで、とくに珍しいものではありません。しかし、ときには「どうしてこうなった?」という驚くべき姿に変身していくスポットもないわけではないのです! ここで前編・後編に分けてご紹介するのは「天然橋」といわれる自然にできた岩の橋。しかも、その下を水が流れているというとても珍しい場所なのです。
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インスタ映えすると大人気! ただし人工的な存在の「濃溝の滝・亀岩の洞窟」
千葉県の君津市にある「濃溝の滝・亀岩の洞窟」というスポットをご存じだろうか? 巨大な岩壁に大きな洞窟があるのだが、その洞窟は完全に貫通している。正確には、洞窟というよりも隧道(トンネル)だ。
これがたんなるトンネルであれば珍しくもないのだが、亀岩の洞窟はその中を川が流れていて、ちょうど真下が小さな滝。しかも光が水面に反射するとタイミングによってはハート形に見えるため、“写真映えする”ということで大人気なのである。インスタグラムなどのSNSで見たことがある人もいらっしゃるかもしれない。ちなみに、ハート形の光を撮るのに適した時期は、光がちょうどよい角度で入る3月か9月の朝らしい。

しかし、この濃溝の滝・亀岩の洞窟は自然にできたものではない。今から350年くらい前の江戸時代、笹川の曲流部を短縮することで周辺の土地を水田化するために手掘りで作られた人工的なトンネルなのだ。河川を短縮化しているために河床の段差が短距離で大きくなり、それによって滝もできているというわけ。ある意味、巨大で短い導水管のようなものである。

濃溝の滝・亀岩の洞窟は人家に近い里山の自然公園内にある。駐車場からすぐにアプローチでき、ここを山中のスポットとは紹介するのは少々無理があるのが正直なところだ。しかし、歴史的・文化的に重要でおもしろい場所であることは間違いなく、一度は見物する価値があるユニークな場所である。


“世界三大天然橋”のひとつ。その称号に負けない「雄橋」
その点、濃溝の滝・亀岩の洞窟よりももっと山深さを感じるのが、広島県北部に位置する帝釈峡の「雄橋」だ。ここもまた、“洞窟の中を川が流れている”のが大きなポイントである。

こちらは濃溝の滝・亀岩の洞窟以上に貴重な場所だ。なにしろ“完全に自然にできた洞窟”なのである。しかも洞窟の上には木が生えていてアーチ状になっており、要するに「橋」のようになっているのだ。このように自然にできた岩の橋のことを「天然橋」という。天然橋自体は世界のみならず日本各地に点在しているが、このように天然橋の下を川が流れている姿は非常にレアなケースといってよいだろう。

この雄橋はなんでも“世界三大天然橋”のひとつだという。ほかの二カ所は、チェコ共和国の「プレビッシュトアーチ」とアメリカの「ナチュラル・ブリッジ」だ。だが、それら二か国では自国の天然橋をわざわざ“世界三大天然橋”という位置づけにはしていないようなので、これはおそらくなにかと「三大」が好きな日本独自の区分なのだろう。
世界三大天然橋が自称なのか他称なのかはさておき、雄橋の存在感はたしかに強烈だ。その大きさは河床からの高さ40m、幅18m、奥行き24mもあり、日本最大規模である。地元では古くから神様や鬼がかけた橋だといわれていたという。なお、これよりも下流に小規模ながら同様に天然橋の「雌橋」もあるのだが、周囲の崩落が激しく、現在は徒歩での見物は難しい。

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