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これが本当に自然に生まれたものなのか!? 洞窟を貫いて川が流れる 世界三大天然橋のひとつ「帝釈峡の雄橋」【山の名&珍プレイス 第10回 前編】

登山といえば、目的地はやはり山頂? いや、山頂以外にも目指すべきおもしろい場所はたくさんあるのです! それは、怪奇現象が起きる不思議な場所だったり、ユニークな逸話がある名所だったり、見たこともない大木や不思議な形をした巨岩だったり……。
本連載では、アウトドア雑誌や山登りの指南本、TV番組や各種イベント出演でもおなじみの山岳ライター・高橋庄太郎が、豊富な山経験をもとに、自分の足でわざわざ見に行く価値がある、こだわりの山の名スポット・珍スポットを紹介していきます。

自然の中にあるもので、もっとも硬いのが「岩」。それでも数万年単位の時間とともに風化し、少しずつ見た目を変えていきますが、その変化のほとんどは、たんに割れて小さくなっていったり、表面が削れて丸みを帯びた石となっていったりするばかりで、とくに珍しいものではありません。しかし、ときには「どうしてこうなった?」という驚くべき姿に変身していくスポットもないわけではないのです! ここで前編・後編に分けてご紹介するのは「天然橋」といわれる自然にできた岩の橋。しかも、その下を水が流れているというとても珍しい場所なのです。

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インスタ映えすると大人気! ただし人工的な存在の「濃溝の滝・亀岩の洞窟」

 千葉県の君津市にある「濃溝の滝・亀岩の洞窟」というスポットをご存じだろうか? 巨大な岩壁に大きな洞窟があるのだが、その洞窟は完全に貫通している。正確には、洞窟というよりも隧道ずいどう(トンネル)だ。

 これがたんなるトンネルであれば珍しくもないのだが、亀岩の洞窟はその中を川が流れていて、ちょうど真下が小さな滝。しかも光が水面に反射するとタイミングによってはハート形に見えるため、“写真映えする”ということで大人気なのである。インスタグラムなどのSNSで見たことがある人もいらっしゃるかもしれない。ちなみに、ハート形の光を撮るのに適した時期は、光がちょうどよい角度で入る3月か9月の朝らしい。

「濃溝の滝・亀岩の洞窟」。この写真を撮影したのは12月で、天気が悪いこともあって水面に反射した光は見られなかった
「濃溝の滝・亀岩の洞窟」。この写真を撮影したのは12月で、天気が悪いこともあって水面に反射した光は見られなかった

 しかし、この濃溝の滝・亀岩の洞窟は自然にできたものではない。今から350年くらい前の江戸時代、笹川の曲流部を短縮することで周辺の土地を水田化するために手掘りで作られた人工的なトンネルなのだ。河川を短縮化しているために河床の段差が短距離で大きくなり、それによって滝もできているというわけ。ある意味、巨大で短い導水管のようなものである。

少し引いた写真。亀岩の洞窟を貫くかのように流れているのは、小櫃川(おびつがわ)の支流である笹川である
少し引いた写真。亀岩の洞窟を貫くかのように流れているのは、小櫃川(おびつがわ)の支流である笹川である

 濃溝の滝・亀岩の洞窟は人家に近い里山の自然公園内にある。駐車場からすぐにアプローチでき、ここを山中のスポットとは紹介するのは少々無理があるのが正直なところだ。しかし、歴史的・文化的に重要でおもしろい場所であることは間違いなく、一度は見物する価値があるユニークな場所である。

ハートというキャッチーな形状によって、“恋人の聖地”となった濃溝の滝と亀岩の洞窟には、ハート形の絵馬がかけられている
ハートというキャッチーな形状によって、“恋人の聖地”となった濃溝の滝と亀岩の洞窟には、ハート形の絵馬がかけられている
現地のボードには「私達結婚します」「婚約の報告に来ました」といった言葉が、カップルの写真とともに飾られている
現地のボードには「私達結婚します」「婚約の報告に来ました」といった言葉が、カップルの写真とともに飾られている

“世界三大天然橋”のひとつ。その称号に負けない「雄橋」

 その点、濃溝の滝・亀岩の洞窟よりももっと山深さを感じるのが、広島県北部に位置する帝釈峡の「雄橋」だ。ここもまた、“洞窟の中を川が流れている”のが大きなポイントである。

下側から見た「雄橋」。完全に岩を貫いて川が流れている
下側から見た「雄橋」。完全に岩を貫いて川が流れている

 こちらは濃溝の滝・亀岩の洞窟以上に貴重な場所だ。なにしろ“完全に自然にできた洞窟”なのである。しかも洞窟の上には木が生えていてアーチ状になっており、要するに「橋」のようになっているのだ。このように自然にできた岩の橋のことを「天然橋」という。天然橋自体は世界のみならず日本各地に点在しているが、このように天然橋の下を川が流れている姿は非常にレアなケースといってよいだろう。

上流側からの雄橋。右側の低い場所を帝釈川が流れ、左側の一段高い茶色い部分は現在も通行できる道路だ
上流側からの雄橋。右側の低い場所を帝釈川が流れ、左側の一段高い茶色い部分は現在も通行できる道路だ

 この雄橋はなんでも“世界三大天然橋”のひとつだという。ほかの二カ所は、チェコ共和国の「プレビッシュトアーチ」とアメリカの「ナチュラル・ブリッジ」だ。だが、それら二か国では自国の天然橋をわざわざ“世界三大天然橋”という位置づけにはしていないようなので、これはおそらくなにかと「三大」が好きな日本独自の区分なのだろう。

 世界三大天然橋が自称なのか他称なのかはさておき、雄橋の存在感はたしかに強烈だ。その大きさは河床からの高さ40m、幅18m、奥行き24mもあり、日本最大規模である。地元では古くから神様や鬼がかけた橋だといわれていたという。なお、これよりも下流に小規模ながら同様に天然橋の「雌橋」もあるのだが、周囲の崩落が激しく、現在は徒歩での見物は難しい。

真下から見上げた雄橋。この天然橋の上も以前は生活道として利用されていたが、現在はヤブと化している
真下から見上げた雄橋。この天然橋の上も以前は生活道として利用されていたが、現在はヤブと化している

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高橋庄太郎

たかはし・しょうたろう
山岳/アウトドアライター。1970年宮城県仙台市生まれ。高校の山岳部で山歩きを始め、出版社勤務後の2年間の無職時代には国内外のアウトドア旅へ。その後フリーランスのライターとなり、ウェブメディアや雑誌を中心に執筆活動を続けている。近年はイベントやテレビへの出演も多く、アウトドアギアのプロデュースも手掛けている。著書に『テント泊登山の基本テクニック』(山と渓谷社)、『トレッキング実践学』(ADDIX)、共著に『“無人地帯”の遊び方』(グラフィック社)など多数。

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