2026.6.5
田邊博崇 国内広告代理店で経験を積み、世界へ! 【実録・メンズノンノモデル 第7回 前編】
記事が続きます
20代前半で目の当たりにした、プロフェッショナリズムのぶつかり合い
晴れてメンズノンノモデルとなった田邊だったが、決して浮き足立つことはなかった。モデルになった当初から、自分が誌面において何を求められているのかを理解し、活躍できる場を自ら探し、作り出していった。
田邊 僕が「売れるタイプのモデル」ではないことは、最初からわかっていました。当時、ユアンくんやリヒトくんをはじめとする、事務所に所属していた同世代のモデルたちはみんな、桁違いに雰囲気があった。だから、そんな彼らと一緒にファッションのメインページを飾ることを目指すより、自分だからこそできることを探したんです。例えばヘアスタイルカタログだったり、デートコースを紹介する取材ページだったり。こういったページは、メンズノンノ専属モデルだからこそチャレンジできる仕事だと思っていましたので、「そういうのをやらせてください」と自分から言っていました。その中でも、北条司先生の漫画連載では、画の元にするシーンを実際にモデルを使ってロケ撮影をしていたのですが、そのモデルとして何度か起用していただいたのがすごく嬉しくて、思い出に残っていますね。掲載時には自分の顔に画が重なっているので自分だとはわからないですが(笑)。

もちろんファッションページにもたびたび登場し、とりわけ企業とのタイアップページでは重宝された。そうして学業と両立しながら、最終的に4年にわたって所属したメンズノンノでは、多くの学びを得たと言う。
田邊 この先どういう風に自分が生き、世の中に役に立っていけるのか。それをおぼろげに考え始めた時期でもあったので、これまで想像したこともない、なりたいからと言って必ずしもなれる訳ではないモデルという仕事を運良くやらせていただいた中で、さまざまなことを学ばせてもらいました。とくに撮影は大きな気づきの場でした。1つのページを作るために、たくさんの方々が「何が面白いのか」を本気で考える。「この構図だと服のここが映らないからもっとこうしよう」、「こちらから光を当てると、影ができて見栄えが良くないから、光を当てる方向を変えよう」……と真剣に話し込み、当時はフイルムカメラで、今のデジタルカメラみたいにシャッターをばんばん切れないし、実際に撮影したものをすぐにその場で見ることはできないから、何度も構図や角度、光の具合などを検証しながら渾身のチェック用ポラロイドを一枚切る。カメラマンにスタイリスト、ヘアメイク、編集者、それぞれのプロフェッショナリズムがぶつかり合いながら、1カット1カット思いが詰まった写真が出来上がって誌面になる。その過程にものすごく興味を惹かれました。
また、一方で、読者の視線や声からはメディアの存在意義を実感した。
田邊 誌面の中の僕の姿を見て「とても元気が出た」とか「悩みが吹っ飛んだ」というファンレターを時々いただいて、そんな自分では想像もしていなかった読者の反応に本当に驚いたのと同時に、「メディアを媒介して、人の心を何らかの形で動かす。これはもしかしたら世の中を良くするための何かであるに違いない」と感じたんです。まさに、僕がメディアの仕事に興味をもつきっかけのひとつでした。
そして何より刺激を受けたのは、クリエイター1人1人が持つプロフェッショナリズムと、時に意見がぶつかりながらも1つの目標に向かってチームワークで仕事を全うしようとする責任感と連帯感。今の仕事に通じるヒントを、田邊は知らず知らずのうちに撮影現場でインプットしていたのだ。
田邊 自分のためというよりもチームのため。あと「これをやるぞ」と決めたら必ず最後まで責任をもってやりきること、そしてそのためには失敗を恐れないこと。メンタリティ自体は両親が授けてくれたものだと思っていますが、メンズノンノでの経験では、さきほどお話したような、たった一枚の写真を撮るために突き詰めていくプロセスに学びがたくさんありました。それは、クリエイションの質を高めるためのプロフェッショナリズムと言いますか、失敗してはまた強くなっていく、という、ドラゴンボールで例えるなら“スーパーサイヤ人”的に増強していく感じを、僕はメンズノンノの現場で学ばせていただいたと思いますね。
このようにしてメンズノンノモデル時代に培われた田邊の感性は、社会人になって大きく花開くことになる。
(6月6日 (土) 午前9時公開の後編に続く)

PROFILE
1976年生まれ、神奈川県出身。法政大学第二高等学校から法政大学経済学部に進学し、1996年に第11回メンズノンノモデルに選出。その後、約4年にわたって学業と並行しながら誌面に登場。大学卒業後、2000年に博報堂へ入社。18年間アカウントプラナーとして活躍したのち、世界でも有数のクリエイティブカンパニーSIXに加わり、自動車、通信、プロスポーツチームなど多岐にわたる企業のブランディングや商品開発、プロデュースに携わる。2023年には、アクセンチュア傘下、アメリカ・ニューヨーク発の世界的クリエイティブエージェンシーDroga5 TokyoのCOO/Presidentに就任。現在はCEOとして、Droga5が追求するブランドパーパス(存在意義)を起点としたクリエイティブ事業を統括する。
記事が続きます
後編(6月6日午前9時公開)に続きます
![[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント](https://yomitai.jp/wp-content/themes/yomitai/common/images/content-social-title.png?v2)
















