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味噌、塩、手軽な食材あれこれ【群ようこ『今日も愛でたい』 第5回】

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 友だちの一人が料理好きなのだけれど、還暦を過ぎてからは、
「料理を作るのが疲れる」
 というようになった。というのも一度に十品くらい作るのだから当然なのだ。
「作る品数を少なくすれば」
 といったら、まず食材をどっと買ってしまう癖があり、それを消費するために、たくさん作るしかなく、
「どうしてあんなに買っちゃうのかしら」
 と首を傾げていた。冷蔵庫の冷凍室だけでは足りず、冷凍庫を新しく購入したのも原因のひとつだろう。
 しかしそういう人が身近にいて、作り方を聞けるので、私にとっては料理のいい先生でもある。多めに作ったほうがおいしいものもあるけれど、私は常備菜は作らず、一回で食べきれる量しか作らないので、一回に消費できる量をどのような分量で作るかというのも問題なのだ。

 先日、彼女の家に、友だち二人と集まって、彼女と友だちの一人がおすすめしていた韓国の番組、「三食ごはん」の配信を大画面テレビで観た。私は韓国ドラマや俳優に疎いので知らなかったのだが、韓国でとても人気のあった番組らしい。全部が配信されているわけではなく、ごく一部しか観られないらしいのだが、私が観たのは彼らがある村の木造の平屋を借りて畑を作り、村の田植えを手伝う内容だった。韓国で人気があり、賞も受賞している俳優二人が中心となり、そこに若い男性ゲスト二人が参加する形になっていた。自給自足で暮らし、自分たちで調達できないものは、番組からお金を借りて買う。しかしその分は労働に換算され、体で返さなければならない。生活をする平屋も古くて、エアコンなどは設置されておらず、寝るときは扇風機を回して、煎餅布団で雑魚寝なのだ。
 自給自足中は素のままなので、人気のある俳優といっても普通のおじさんたちになるのだが、料理がとても上手なのだと、友だちが絶賛していたのがよくわかった。
「日本だと御飯を炊くときに、赤子泣いても蓋とるな、なんだけど、韓国だと平気で蓋を開けて確認していて、その違いが面白い」
 友だちが以前、そういったのを聞いていて、その通りに米を炊いている大鍋の蓋を何度も開けていた。

 番組を見終わり、さて帰ろうかと思ったら、友だちがしゃぶしゃぶを食べていけという。あまりに豪華な提案にびっくりしたのだが、彼女は店にあるような、銅の立派なしゃぶしゃぶ鍋をカセットコンロの上にささっとのせて、用意をはじめた。招かれた私たちは、あら~、どうしましょうといいながら、食器を出したり、たれの用意をしたりした。
 小松菜と豚と牛のしゃぶしゃぶをいただいて大満足だったのだが、不思議なことに肉からはほとんどアクが出ていなかった。彼女はそこでしか買わないと決めている精肉店がある。肉を買うのならそこでと、私も勧められていたものの、買ったことはなかったけれど、ずいぶん質が違うものだと納得した。
「しめに麺を食べよう」
 そういって彼女はそうめんをではじめた。黒いつぶつぶが混ざっている塩が入った小丼が配られ、そこにそうめんと、しゃぶしゃぶのスープを入れるので待機しているようにといわれた。
「はあい」
 一同で返事をして待っていると、大皿に一口ずつ取りやすいようにまとめられた茹でそうめんと、密閉容器山盛りの刻みネギが出てきた。スープを少し入れて塩を溶かし、そうめんを入れ、スープを追加してその上に刻みネギをのせて食べてみると、これがめちゃくちゃおいしい。そうめんを水に浸して出さないのも、ポイントのようだった。
「肉を茹でたあとでもいいし、そうじゃなければ、鶏ガラスープの素にこの塩を入れて同じようにすれば、簡単でいいわよ」
 そう教えてもらったので、すぐにその「ろく助塩 コショー」を買った。私は辛いものが苦手なのだが、コショーの割合がちょうどよく、豚肉や鶏肉を茹でた汁で、真似をして同じものを作り、薬味をネギにしたりミョウガにしたりしておいしく食べている。

 手間がかからず、それを加えるだけでおいしく食べられるものがあると、とても助かる。これからもこれらの食材を使い続けるのは間違いないのだが、おいしいといいつつ食べ過ぎると、さすがに体脂肪率とBMIが気になってくる。今は何とかすべて標準の数値内で収まっているものの、これから先はどうなるかわからない。
「そんな数字は私にはない!」
 といいきる料理好きの友だちが、料理の腕とともにうらやましくて仕方がないのである。

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次回は10月14日(水)公開予定です。

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群ようこ

むれ・ようこ●1954年東京都生まれ。日本大学藝術学部卒業。広告会社などを経て、78年「本の雑誌社」入社。84年にエッセイ『午前零時の玄米パン』で作家としてデビューし、同年に専業作家となる。小説に『無印結婚物語』などの<無印>シリーズ、『今日もお疲れさま パンとスープとネコ日和』などの<パンとスープとネコ日和>シリーズの他、『かもめ食堂』『捨てたい人捨てたくない人』、エッセイに『還暦着物日記』『スマホになじんでおりません』『老いてお茶を習う』『六十路通過道中』『ちゃぶ台ぐるぐる』『かえる生活』、評伝に『贅沢貧乏のマリア』』など著書多数。

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