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バーテンダーも占い師も友人の悩み相談も、「空間」が重要。『昼間のスターゲイザー』から広がる「技術」の話【鏡リュウジ×千田歌秋対談・後編】

占星術研究家・鏡リュウジさんと、臨床心理士・東畑開人さんの対談本『昼間のスターゲイザー 占いと心理学の対話』。3刷の重版も決まり、占いと心理学それぞれの枠を超えて引き続き話題を集めている一冊です。
この発売を記念し、6月7日に東京・神保町の書店「書泉グランデ」で、鏡リュウジさん、東京・麻布十番にある占いカフェ&バー「燦伍さんご」のオーナー占い師兼バーテンダーである千田歌秋さんのお二人によるトークイベントが開催されました。3刷を記念して、その模様を2回に分けて公開します。
前編に続き、後編で盛り上がったのは、占いの「技術」の話。『昼間のスターゲイザー』でも話題に上がったタロットのシャッフルについても、千田さんが現場の占い師ならではの視点で語っています。

撮影/藤澤由加
構成/小沼理
(写真左から)鏡リュウジさん、千田歌秋さん
(写真左から)鏡リュウジさん、千田歌秋さん

「象徴」を勉強し、占いの現場で使うこと

  このイベントの打ち合わせの時、千田さんが「象徴」の勉強法のところが面白いとおっしゃっていました。 
すべての占いは象徴からできあがっているか、象徴をベースに解釈を展開していきます。この勉強法を、『昼間のスターゲイザー』では「存在の大いなる連鎖」型と「連想の雲」型に分けて整理しました。

千田 鏡さんは「存在の大いなる連鎖」型の例として、『クリスチャン・アストロロジー』を挙げていました。火星は鉱物では鉄と対応し、色は赤である、性格はこうである、というような対応表を作り、シンボルを言語化していきます。

  一方、「連想の雲」はマインドマップみたいなもの。「金星」「カイロン」など象徴を中心において、そこから連想するものを周囲に書くことで、星雲みたいに無限に広がっていく。整理されていなくて、なんでつながっているかわからないところもあるんだけど、とにかくワーっと広がっていくんです。

千田 占い師は最初、「存在の大いなる連鎖」で勉強しているんだけど、それが「連想の雲」になっていく瞬間があるんですよね。

  占いをしていると、無限にある象徴の意味の中から、文脈に合ったものがカチッと結晶化する瞬間があります。それは占いが「当たる」感覚にも近いかもしれない。 
これは勉強の結果得られる感覚です。面白いことに、占いを勉強している同士だとこのリアリティが共有できるんですよね。間主観性というか、勝手な思い込みじゃないと思う。

千田 対応表を完全に暗記したからといって、実際の占いでそれをそのままセオリー通りに使えることは少ないです。むしろそこからこぼれ落ちた、「連想の雲」的な発想が重要になってくる。 
ある象徴について、対応するのはこの言葉、この言葉……と決めていくのは、標本を作っていくようなものです。とはいえ象徴は標本にすると死んでしまうので、勉強する時の象徴は生きていないんですよね。意味を収束させた状態で記憶をするしかないけど、それだけではあまり意味がない。 
むしろ自分が象徴についてよくわかっていない部分があるほうが、ああかもしれない、こうかもしれないと考えるんですよね。そうして、連想の雲がうごめきはじめる。このほうが現場でも意味が広がっていきやすいし、「これだな」と結晶化しやすいです。 
曖昧なままにしておくことの意義というか、象徴を記号化せずそのままにしておく多義性の価値は、現場で占いを続けていればいるほどわかってきます。

  それに象徴って、矛盾したこともけっこう書いてあるんですよね。 
月という象徴にしても、対応する人物像を見てみると「女王様、貴婦人」のあとに「主婦」「正常心を失っている人」「放浪者」「釣り人」とある。占星術を実践している人は当たり前だと思ってしまっているけど、女王様と主婦と放浪者が同じなんて、無茶苦茶じゃないですか。もちろんそこには「月」的なコアがちゃんとあるんだけど、それでも象徴の多義性はこんなにあるという。

バーテンダーと占い師の共通点

  僕は個人鑑定をしていないので、千田さんには対面で人を占うことについて聞いてみたかったんです。例えばバーで客さんと話すことと占うこと、違いや似ているところはどこですか?

千田 自分は占いバーでバーテンダーとしても働いていて、対面でカウンター越しにコミュニケーションを取って、人の悩みを聞くことがあります。 
そこで「転職しようかな」みたいな話を聞くのは、占い師もバーテンダーも一緒なんですよね。悩みを相談された時、普通のバーのバーテンダーは慰めたり、お客さんの心地よくなる言葉を言ったり、アドバイスを求められたら自分にできる範囲で考えを伝えたりします。「あなたにはキャリアがあるから転職もきっとうまくいきますよ」とか、「今はその業界は不景気だと聞くからやめたほうがいいんじゃないですか?」とか。なるべく合理的な判断で答えていますが、とはいえお酒が入っていることもあるので、非合理的なことや思いつきで言ってしまうこともあります。 
占いは、この悩み相談をタロットカードを広げながらやっているようなものです。例えばカードを一枚引いて、「月のカードが出ました。これは今転職してもうまく決まらなそうです」と言うのであれば、参照先が一つ増えただけでやっていることは同じです。これまでイメージや直感で言っていたことが、カードの結果に立脚しながらアドバイスをしている状態に変わった。これは私にとっては非常にやりやすいことでした。

  なるほど。あと、バーのカウンターの存在って大きいんじゃないですか?

千田 カウンター越しだとちょっと斜めに向かい合うことが多くなりますし、バーテンダーはカウンター内を動いています。狭い個室に2人きりで、正面切って話すと緊張してしまいますが、斜めや動きながらだとなぜか相談しやすくなることもあるので、カウンターは重要ですね。

  正面じゃなくて、ちょっとズレているほうがいいんですね。これは日常的に友人の悩み相談に乗る時なんかにも使えるテクニックかもしれない。目線が合わないほうがいいんですか?

千田 私は意図的に10センチくらいずらしています。バーカウンターでは自然とそうなりますが、占いで対面に座った時も数センチずらすようにしています。それが一番話しやすいんじゃないかな。

  横に座るのはどうでしょう。占いでも、横に座ってやるケースがあります。  

千田 以前、占い雑誌の企画で横に座っていただいたことがあったんですけど、カードを見せやすくて良かったですね。カウンターやテーブルを挟まず隣に座ることに緊張する人はいるかもしれませんが、親密度は高まります。

  たしかに。ただ親密になりすぎちゃうのも危ないので、時と場合によりそうですね。

千田 間に何もない状態は親密になるけど、それだけ無防備になりますよね。逆に言えば、カウンター越しのメリットもそこです。親密になりすぎないので、同じことを言われても言葉の刃物が届きにくくなります。

  精神分析でも、古典的なフロイト派は、クライエントはカウチに寝そべって、分析家はその後ろから話しかけるスタイルなんですって。それはクライエントの連想を邪魔しないためですが、権威性が高くなる可能性はありますね。 
こういう技術の話は面白いですね。『昼間のスターゲイザー』でも盛り上がりました。今の英国占星術協会の会長の、ウェンディ・ステイシーさんという方がいます。彼女には占星術師が開業するためのガイドブックのような著書があるのですが、いわゆる「宅占」、自宅やオフィスで占う時の空間の作り方について書かれていたところ面白かったんです。
例えばトイレの場所。占いの途中でトイレに行きたくなる人もいるでしょう。その時、占う部屋とトイレの間の動線に、占い師の生活空間があるのはダメなんだと。

千田 それだと、占われるほうが冷めちゃいますね。 

  冷めちゃうし、占い師もプライバシーを見られてしまうから。だからトイレやベッドルームの配置を考えましょうと書かれていて、これも重要な技術だなと感じました。

千田 空間を作るという技術のお話ですね。

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千田歌秋

東京・麻布十番にある占いカフェ&バー「燦伍」のオーナー占い師兼バーテンダー。対面鑑定のほか、原稿執筆、講座、メディア出演など幅広く活動。著書に『はじめてでも、いちばん深く占える タロット READING BOOK』(Gakken)、監修に『タロットの鍵』、『新解釈 ユニバーサルタロット』(ガイアブックス)など多数。
X:@senda_khaki

鏡リュウジ

占星術研究家・翻訳家。京都文教大学客員教授。著書に『占いはなぜ当たるのですか』(説話社)、『タロットの秘密』(講談社現代新書)、『タロットの美術史』(創元社)、『占星術の文化誌』、『鏡リュウジの占星術の教科書 I ~Ⅵ』(ともに原書房)、訳書に『魂のコード』(朝日新聞出版)、監訳に『世界史と西洋占星術』(柏書房)、『タロットと占術カードの世界』(原書房)など。占星術研究の第一人者として幅広く活動中。

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