2026.8.2
もしも海から歩いたら、何日かかる? ここが我が国のど真ん中!? 「日本で海岸線から一番遠い地点」【山の名&珍プレイス 第9回】
本連載では、アウトドア雑誌や山登りの指南本、TV番組や各種イベント出演でもおなじみの山岳ライター・高橋庄太郎が、豊富な山経験をもとに、自分の足でわざわざ見に行く価値がある、こだわりの山の名スポット・珍スポットを紹介していきます。
夏のレジャーといえば、その舞台はやはり山や海といった大自然でしょう。近年は地球温暖化の影響で、暑い海よりも涼しい山のほうが人気ですが、日本は世界でも有数の山岳国だけあって、国土の約2/3は森林地帯。ひとくちに山といっても広すぎます。そのなかで、“日本でいちばん山深い場所”はいったいどこになるのでしょう? 定義にもよるとはいえ、 その答えのひとつは、「日本でもっとも海から遠い場所」かもしれません。
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30年前に見つけられた“ここが日本でいちばん”というスポット
そこはやはり山深いところだった。うっすらと水が流れる沢を緩やかに登っていき、稜線手前で右手のほうを見ると、大きくて白い標識がぽつんと立っている。
なるほど、ここか! だけど、こんな場所、たしかに調査しないとわからないだろうな……。
日本の国土面積は約37.8万㎢。北方領土を除く南北の距離は約2,842kmで、東西の距離は約3,139kmだ。そして、日本でいちばん大きな島である本州の面積は約22.8㎢で、海岸線の総距離は約227.9kmにもなる。だが、“その場所”と“その距離”はわずか30年前まで知られていなかった。
“その場所”とは、「日本でいちばん海岸線から遠い地点」のこと。つまり、海からもっとも離れている山の中の1スポットだ。日本地図を見ていると、その場所は本州の中央部、長野県や群馬、山梨県のあたりではないかと思える。だが、その場所は実際どこにあり、どれだけ海から離れているのだろうか……。
先に述べたように、その場所と海からの距離が判明したのは、今からちょうど30年前の1996年。国土交通省の特別機関である「国土地理院」が運営する『地図と測量の科学館』で開催された“なんでも相談コーナー 夏休み相談会”で参加者から投げかけられた「海からもっとも遠い地点はどこですか?」という質問へ回答すべく、国土地理院によって詳細な調査が行われたことがキッカケだ。
綿密な調査と計算による結果は、「北緯36度10分35.87秒、東経138度34分51.35秒」。住所で言えば、「長野県佐久市田口字榊山209-1」。群馬県との県境に近い、標高約1,200mの山の中だった。必ずしも「海からもっとも遠い場所」が「日本でいちばん山深い場所」とはならないかもしれないが、国土地理院お墨付きのひとつの目安として考えてもいい。
なお、その質問は夏休み中の子どもからではなく、国土地理院が置かれている茨城県つくば市にある大学、筑波大学の学生によるものだったというから、ちょっとおもしろい。

行けば見つかる! 地形図には記載されていない登山道
ただし、国土地理院発行の地形図には、そこに向かう登山道は記載されていない。データが古いからかもしれないが、実際にはそれなりの登山道が整備されており、YAMAPなどの登山地図アプリでは明確に登山道として紹介されている。次に更新されるときには、地形図にも正式な登山道として記載されているかもしれない。


では、国土地理院が認定した「日本で海岸線から一番遠い地点」へ行ってみよう! 入口は信濃川水系の雨川ダムの東側にあり、道路の標識に従って進めば、登山口まで迷うことはない。



入口からゲートをくぐりぬけて林道を進み、沢を渡ると本格的な登山道となる。「日本で海岸線から一番遠い地点」までは、往復2時間程度。片道2.1㎢、標高差は230mほどで、体力的な難易度は高くない。ただ、登山者が多い山域ではなく、登山道の整備が行き届いているとは言い難いので、気を抜いて歩いていると道迷いを起こしかねない。だが、GPSと連動した登山地図アプリを使って歩けば、大きな間違いは起こさないはずだ。



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