よみタイ

遅れて春がやってくる山中湖のほとりで、野点(のだて)をやりたいのだ!

東京でガスバーナーを試してみようと思ったら、どこでも不可能だった……

などと思いを募らせていたら、どうしても試運転してみたくなってきました。
山中湖で本番の野点をやるとき慌てぬよう、バーナーの使い方にも慣れておきたいし。
そう考えた僕は一式をバッグに詰めこみ、東京の我が家から一番近いアウトドアゾーンである多摩川の河川敷に向かいました。

ところが目星をつけていた地点には、「バーベキュー禁止」の大きな看板が……。
そう、基本的に河原での火の使用はNGなのです。
今年の2月には多摩川河川敷で4回も火事が発生し、大きなニュースになりました。
確かに、人の管理が隅々まで行き届かない河川敷、しかもこんなに人口が多い都市部で誰もが思い思いに火を使ったら危険です。

な、なるほど……。了解しました……。
な、なるほど……。了解しました……。

でも多摩川は、東京23区西部民にとって重要なバーベキューポイントでもあります。
河原の要所要所に“バーベキューエリア”が設定されていて、その区域内でのみ楽しめるようになっているのです。
ただしそこではいつも、家族連れやパリピ風若者グループがわいわいと盛り上がっています。
ソロキャンプ用の小さなガスバーナーを携えたおっさんが一人で踏み入り、コーヒーを淹れてしんみり飲んでいたら、不審に思われるに違いありません。
まわりの目なんて気にしない豪胆な男に憧れますが、僕にはとても無理です。

ではどうするかと考えた僕は、近くのきぬた公園へと向かいました。
でも、内心とっくに予想はしていたのです。

公園は火気どころかあれもこれも禁止、禁止、禁止。
公園は火気どころかあれもこれも禁止、禁止、禁止。

都営公園は河川敷よりさらに厳しく、火気を禁じています。
しかも砧公園は簡易テントや折りたたみチェアの使用、メインエリアでは犬の散歩まで禁止の小うるさい公園なのです。

すごすごと家に引き返した僕は、猫の額ほどの自宅の庭で試してみようかとも思いました。
でも、お隣さんから丸見えのうえ洗濯物がはためく庭を眺めていると、やる気がみるみるしぼんでいきました。
やっぱり、近々山中湖へ行ったときに初使用することにします。
ちなみに富士五湖の湖畔はどこも、環境に痕跡を残す直火こそ禁止ですが、器具さえ揃っていればいたるところで火を使った野外料理を楽しむことができます。

僕のまっさらなバーナーは、近日中に文字通り火を噴く予定。
その折にはまた、このコラムでご報告することといたしましょう。

*連載初回「東京で生まれ東京に骨を埋めると思っていた僕が、デュアルライフを選んだ理由」はこちらから
*本連載は隔週更新です。次回は4/14(水)公開予定。どうぞお楽しみに!

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『オフィシャル・サブカル・ハンドブック』『日本懐かしスニーカー大全』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

ツイッター@satoseijiro

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